バイデン米政権、共和党調査委の人工妊娠中絶の禁止支持案を批判(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年3月26日 15時0分
米国のバイデン政権は3月22日、共和党調査委員会が2025年度予算案の対案において、人工妊娠中絶においてレイプや近親相姦の例外を一切認めないとする案を提出したことを批判する声明を発表した。同委員会は3月20日、2025年度予算について独自の対案を発表している(2024年3月25日記事参照)。
声明では、具体的に次の4つの点に対して批判している。
1. 「受胎時生命法(Life at Conception Act)」の支持を通じ、各州の全ての女性の生殖の自由をなくし、体外受精治療を徹底的に制限することを支持していること。
2. 米国食品医薬品局(FDA)から承認されていて20年以上にわたり市販されている、安全で効果的な人工妊娠中絶薬ミフェプリストンの禁止を支持していること。
3. 退役軍人が、妊娠により健康や生命が危険にさらされている場合や、レイプや近親相姦で妊娠した場合に、中絶医療を受けられるようにするための政策を撤回することを支持していること。
4. 両党派で支持されている、低所得で保険に加入していない女性が避妊するための資金を削減していること。
同委員会は対案で、人工妊娠中絶に反対する理由として、「ロナルド・レーガン大統領がかつて言及したように、『中絶に賛成する人は皆、既に生まれている』。命の贈り物は貴重であり、守られるべきである。個々の命が持つ無限の可能性は、特に米国で与えられている自由の下、不当に裁かれるべきではない。(共和党)保守派は、生命、思いやり、機会を文化として創造することの重要さを信じる」と述べている。
他方、バイデン政権は、「共和党議員による極端で的外れなアジェンダから女性の生殖の自由を守るために闘い続ける」という思想のもと、1月22日からカマラ・ハリス副大統領が率いる「生殖の自由のための闘い」の全米ツアーを実施している(2024年1月25日記事参照)。また、3月18日に発表した女性の研究とイノベーションを推進するための大統領令では、女性の健康の研究のための新たな資金として120億ドルの変革的な投資を行うよう指示した。これには、性と生殖に関する健康を含む女性の基礎医療の改善などが目的の一部として含まれている。
一方、共和党の大統領候補者としての指名を確実にしているドナルド・トランプ前大統領は2月29日、米国メディアのフォックス・ニュースにおいて、妊娠15週間目以降の中絶禁止の話が日増しに出ているが、まだ何週目にするかに同意はしていないとし、両サイドにとって有効な判断をしたい、と発言していた。その後3月19日には、米国メディアWABCの番組で、「(何週間目にするかという)期間の決断が、米国を1つにできるかもしれない」とし、「現在のところ、15週間目は、強硬派も同意しているため合理的だと考えている」と述べた。一方で、「これは州レベルの課題であり、連邦レベルの課題ではない」とも述べている。
(吉田奈津絵)
(米国)
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