2023年の国際収支は黒字回復、BPO産業や旅行収入の伸びが影響(フィリピン)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月4日 0時0分
フィリピン中央銀行(BSP)は3月15日、2023年の国際収支が37億ドルの黒字となり、前年の73億ドルの赤字から好転したと発表した。経常収支は112億ドルの赤字だったものの、赤字幅は前年比で38.6%縮小した。その内訳をみると、貿易収支は658億ドルの赤字だが、前年(697億ドルの赤字)からはやや改善した。サービス収支はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業の回復や、在外フィリピン人労働者(OFW)による本国送金額の増加、海外からの旅行者数の増加などにより、前年比20.3%増の191億ドルの黒字となった。
BSPは同日、2024年以降の国際収支について7億ドルの黒字を見込んでいると発表した。国際収支の黒字化には、サービス収支の黒字が引き続き貿易収支の赤字を相殺することが前提となる。BSPは2024年についても、観光収入やOFW送金のほか、BPOビジネスも見通しは明るいとみている(政府通信社3月15日付)。また、国内総輸出の6割を占めるエレクトロニクス輸出が2023年と同等の伸びになると予想、経常収支の赤字が縮小し、2024年の国際収支が黒字になると予想した(「マニラ・スタンダード」3月15日付)。
2025年は公共インフラ投資の強い伸びから、財の輸入が増加すると予測されており、一転して国際収支は5億ドルの赤字を見込んでいる。ビジネスプロセスマネジメント(IT-BPM)の業界団体のフィリピンITビジネスプロセス協会(IBPAP)の「フィリピン・IT-BPM産業・ロードマップ2028」(注1)によると、BPOを含むIT-BPM産業は長期的な成長が見込まれており、国際収支黒字化への貢献が期待される。一方、2025年は多くの主要経済国、特に米国と英国で2024年後半に実施される選挙結果を反映した政治体制の移行期に当たるため、非居住者外国法人の投資による財の流入がより控えめになると予想されている。また、BSPは、観光業とBPOの両部門での好業績が持続しても、サービス収支の黒字は貿易収支の赤字を部分的に相殺する程度にとどまる(注2)と推定している。
(注1)IT-BPMとは、ITを活用した業務委託サービス全般を指し、さまざまなサービス分野を包含する。その範囲はコールセンター、医療情報管理、バックオフィス業務からソフトウエアサービス、ゲーム開発、アニメーション制作まで多岐に及ぶ。
(注2)今回発表された2025年の予測値では、貿易収支の赤字は744億ドル、サービス収支の黒字は276億ドルで、赤字額が黒字額の約2.7倍となっている。
(西岡絵里奈、アセンシオ・アシュレイモイラ)
(フィリピン)
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