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大統領、20に及ぶ憲法と法律の改正案を国会に提出(メキシコ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年2月7日 15時30分

添付資料PDFファイル(320 KB)

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は2月5日、18の憲法改正案を含む20の改正案を国会に提出した。具体的な内容は添付資料のとおり。以前に国会で否決された国家警備隊の軍への配属、選挙制度改革(2022年5月9日記事参照)などを復活させたほか、正規労働者の年金制度改革や電力庁(CFE)の権限強化などが含まれる。電子たばこや遺伝子組み換え作物の禁止など、法律や政令で禁止した内容を憲法に盛り込む改正、AMLO政権下で進めてきた総合福祉政策に基づく補助金や奨学金などを憲法で保障する改正もあり、一度に行政府が提出した内容としては例を見ない広範囲な内容となっている。

大統領は、過去30年続いた新自由主義経済政策(ネオリベラリズム)で失われた国民の権利を取り戻す、人道主義、正義、誠実さ、民主主義の理想と原則に根差した改革(大統領府2月5日付記者会見録)と称している。一方で、野党や有識者からは、確定給付型年金などの理想を実現する財政的根拠に乏しく、独立自治規制機関の廃止や国営企業の権限強化、司法制度改革などにより、市場競争環境が悪化し、行政府への権限集中が起こることで、国としての競争力が低下すると指摘する声がある(主要各紙2月6日)。

また、高齢者一律年金、未就労・未就学の若者への補助金、農村に対する補助金など現政権の総合福祉政策の内容が憲法に盛り込まれた場合、2024年10月に発足する次期政権にとって、独自の歳出政策を選択する自由度が失われ、膨れ上がった所得分配政策の継続と重い財政負担を今後も余儀なくされることにつながる。実際、65歳以上の全高齢者に支給する高齢者一律年金だけで2024年の歳出全体の7.2%を占め(2023年9月14日記事参照)、2024年度は過去に例を見ないGDP比4.9%の大幅な赤字予算が組まれている(2023年9月14日記事参照)。次期政権が憲法で保障された福祉政策を継続しつつ財政収支の均衡を保つためには、税制改革などを通じた財源確保が不可欠となる。

否決されることを覚悟した選挙対策との声も

今回の一連の憲法改正案の中には、選挙制度改革など以前に国会に提出したものの、否決された内容が含まれている。現時点で与党連合(注1)は、国会上下両院で過半数こそ維持しているものの、憲法改正に必要となる3分の2の議席数には遠く及ばない。大統領が憲法改正案を国会に提出した狙いは、野党にあえて改正案を否決させることで、6月2日に実施される総選挙において、福祉政策や年金の拡充など「民衆のための改革」を邪魔した野党連合(注2)ではなく、改革を推し進める与党連合への投票を効果的に呼び掛ける大統領および与党の選挙戦略があるとみられている。大統領の真の狙いは、9月1日に始まる改選後の新国会において与党連合が3分の2以上の議席を占め、9月末までの残り1カ月の大統領の任期中に憲法改正を実現することだ、と指摘する識者は多い。

(注1)国家再生運動(MORENA)、労働党(PT)、緑の環境党(PVEM)で形成。

(注2)国民行動党(PAN)、制度的革命党(PRI)、民主革命党(PRD)で形成。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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