理解不能!? イマドキ日本人のニッチな性癖~NTR(寝取られ)とは何か?

TABLO / 2014年1月23日 11時3分

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 世の中には様々な性癖の持ち主がいる。 エロ系のメディアはそうしたターゲットのあらゆる嗜好に対応し、金をむしり取るべく、これまた様々なジャンル・シチュエーション・エロ描写を商品(作品)化し続けており、気付けば日本は世界に並ぶ者のいない変態メディアの一大生産場と呼ばれるまでになった。

 さてさて、こんな導入から何を語るのかと言えば、今日は数あるシチュエーションの中でも "NTR" と呼ばれるジャンルについて暑苦しく長々と書き散らしてみたい。

 今回取り上げるNTRとは "寝取られ" の略で、特定の相手のいる女性が、他の男性に寝取られる物語を指す。 そんな夢も希望もなくなるようなシチュエーションのどこに主眼を置けば興奮できるのかというと、これが実は人それぞれであり、人によって女目線だったり、寝取る側の男目線だったり、寝取られる側の男目線だったり、それら全てをひっくるめたドラマ自体に興奮するという人間もいる。

 しかし共通しているのは罪悪感や背徳感といった感情で、その証拠に "女性が彼女のいる男性を寝取る" というシチュエーションにはあまり人気がない。これは複数の女性にキャイキャイ言われるのは男の夢であり、ストレートな願望であるから、"悪い事してる感" が湧かないからだろう。したがって "女性が寝取る系" の作品はNTRではなく、単に "痴女物" として描かれ、またカテゴライズされる場合が多いのだ。

 NTRとは、ある意味で「男にとっての後味の悪さがなければならない」と言える。

 こんな厄介なネジレたシチュエーションは、日本人やフランス人などの "生粋の変態を生みやすい文化" を持った民族特有のものの可能性がある。というのも、NTR作品の舞台が仮にアメリカだった場合を考えてみればいい。アメリカ人男性の主人公が、ヒロインをライバルに寝取られた際に、いったいどういうリアクションを返すだろうか?

「オレは彼女を愛している。しかし彼女がお前を選んだというのなら、オレはその意志を尊重しよう。OK、彼女に今後はよき友人であろうと伝えてくれ。」

 恐らくこんな感じであっさりと解決してしまうのではなかろうか?

 シチュエーションとしては確かに寝取られているのだからNTRなのだが、「ボクの大好きなA子ちゃんのオマムコにあんな男のチムポがぁぁ!」と、ひたすらウジウジと七転八倒し続けるマゾヒスティックな展開にはならなければNTRファンは喜ばない。「アナタの意志を尊重します的」なサッパリした後腐れない終わり方では全く興奮できないのだ。

 NTRというジャンルは、「精神的にマゾヒズムを味わう」という前提があると考えればわかりやすいだろう。また不用意にこんな事を言うと無駄に敵を作りそうだが、NTRというジャンルには大きな問題点が存在している。それが何かというと、作家や編集者やNTRファンを名乗る人間すべてがNTRの定義を正しく理解出来ているわけではなく、勘違いしてやがる連中があまりに多いのだ。

 今はNTRはエロの1ジャンルであると認知されているため、作家・編集者・編集部などが「NTRって儲かるんじゃね?」と金の臭いを嗅ぎ付け、NTR縛りのエロコミック・アニメ・ゲームを発売するケースが増えてきた。 しかし作り手が正しくNTRを理解していないと、「NTR!」 を謳っておきながら掲載作品の中に "正しいNTRがひとつもない" なんて悲惨な事になり兼ねず、事実そういった 「お前NTRディスってんの?」 と言いたくなるような作品がアチコチに存在している。

 ではNTRの定義とは何か? 何を以ってNTRと呼ぶのか?

 実はNTRの定義自体は実に簡単で、単に女が亭主や恋人や恋心を抱いている男以外に寝取られればそれでいいのだ。 しかし問題なのは、寝取るor寝取られるという展開を "どこまで描写できるか?" なのである。

 ただ 「A君の彼女のB子さんが、A君のライバルのC君とセクースしちゃいましたー」 だけでは全く興奮できない。そこだけピンポイントで描いても、「単に女がビッチでしたー」 で終わってしまうからだ。

 またこれが一番ダメダメな勘違いなのだが、レイプとNTRはまるで別物だという点だけは何としても理解して頂きたい。「ヒロインが他の男とヤレばいいんだろ?www」 と、深く考えずに流行りに乗りたい一心で適当な仕事をするクズ作家や編集者は、ヒロインがレイプされるってだけの話をNTRと謳ってしまう。 アホか。

 お前な、NTRってのは心理描写が最大の肝なんだよ! 力ずくで犯しただけで女を寝取った事になるのか? なあ? そんなもん 「犬に噛まれたとでも思って......」 と慰められる的な展開になって終わりじゃねえか!

 "寝る" だけじゃダメなんだよ! 寝た後に "取る" んだよ! だから "寝取られ" って呼ぶんだろクズ! ちょっと考えりゃわかる事だろボケが! 今すぐLANケーブルで首吊って詫びろ!

(筆者の精神状態が不穏なため少々お待ちください)

......ええ、NTRとはヒロインが主人公以外の男とセクースするだけでは成立しないのである。これを勘違いしたアホな作り手は、その内容では単なるレイプや陵辱だというのに、流行っているからとか目新しく感じるからと「NTRでっす♪」と騙ってしまう。また、それに触れた客も作り手の勘違いをそっくり受け継いでしまい、「恋人のいる女がボロボロに犯されるのがNTRである」 と間違った解釈で納得してしまうのだ。

 そんなNTRビギナーの皆様のために、今回は特別に懇切丁寧にNTRが成立するまでの流れをレクチャーして差し上げる。

[登場人物] A子=ヒロイン(♀)  B夫=主人公(♂)  C男=寝取り男(♂)

1.A子とB夫の仲睦まじい姿

 これが全ての起点になる。 平和にイチャイチャしている場面から始まらないとNTRだと認識できないから、ある意味で最も重要な要素かもしれない。

2.C男が登場して伏線を張る

 「A子がB夫とくっ付くなんて許せねえ!」 的な横恋慕から始まったり、単に 「B夫に絶望を味あわせてやる!」 的な私怨から話が展開していく場合もある。

3.C男がA子にアクションをかける

 エロマンガやアニメの場合はページ数や尺の制限があるので、どこまで凝った造りに出来るかは差が出てしまうのだが、基本はB夫の恋人(または妻) であるA子が騙されて、または何の気なしにC男にのこのこ着いて行ってしまう的なストーリーが定番である。 またB夫の弱みを握ったC男が、B夫を盾にして A子に言う事を聞かせる的な展開もアリだ。 ここで最も重要なのは、この時点ではA子の心はB夫に向けられているという点である。

4.A子とC男がセクース

 作品の展開次第で状況は変わるが、この時点でNTRが成立している場合と、まだNTRが未成立の場合がある。 前者の場合は、何だかんだ話が進む中で、A子が納得ずくでB夫からC男に乗り換え、その結果としてセクースに至るケース。 これならばA子の気持ちがC男に傾いた時点でNTRが成立している。 しかしC 男がA子を無理矢理レイプしただけでは、まだA子の気持ちはB夫に向けられている訳だから、NTRは成立していないと看做さねばならない。 ここが素人さんが最もミスを犯しやすいポイントである。

5.A子が堕ちる

 4の時点でNTRが成立していない場合は、改めてA子がC男に堕とされる場面を描かねばならない。 理由は何でもいいのだが、最もベタなのは 「肉欲の虜にされて......」 系の展開である。「C男さんの方が大きくて気持ちいひのぉほぉ~!プシャー」 である。 ちなみにプシャーというのは潮吹きの音だと思う。 それはともかく、NTRファンのツボを突く展開にするならば、最初は嫌々C男に従っていたA子が、B夫の知らぬ間に何度もC男に抱かれ、その内にB夫に対する感情が薄れ、あれだけ嫌だと思っていたC男に対して特別な感情を抱いてしまう的な描写が望ましい。

6.A子とB夫の別れ(またはB夫が真実を知る)

 このオチがなければNTRとして尻切れトンボというものだ。 それまでの流れがいかに素晴らしくとも、これが欠けるようではクリープのないコーヒー、いや、発射シーンのないAVのようなものである。 NTRをプロレスに例えるなら、3カウント入ったという試合終了の合図がなければならない。 ではその合図が何かというならば、"A子をC男に寝取られた事をB夫が知る" もしくは "確実にそうなるであろう事を予感させる" ことに他ならない。 ここでB夫が味わうであろう絶望が、NTRファンにとっては最大のご馳走なのである。

 このように、1→2→3→4→5→6(もしくは1~4→6) といった手順を踏まなければ、絶対にNTR作品とは看做せないのだ。

 A子がC男に犯され、それを知ったB夫がA子を慰め、「2人で傷を分け合って生きて行こう」的なハッピーエンドで終わる話はNTRではない。それでは全く寝取った事にならない。寝取ってないならばNTRではない。 実に簡単な話だ。

 NTR作品として成立させるためには、以下のような描写が絶対に必要なのである。

A子 「私はもうC男さんの物なの......」

B夫 「うわー!チクショー!」

C男 「ハッハッハ!」

 もの凄く簡単に表すと、この3つが描けてないとNTR作品とは看做せず、逆に言うとこの3つさえあれば立派なNTRなのだ。 こうした登場人物の心の揺れ動きや、感情のぶつけ合いこそが、NTR作品のヌキどころなのである。

 では最後に実際の漫画やアニメ作品を例に出して解説しよう。 まず、ヒロインがライバルに犯される本宮ひろ志の 「俺の空」 という有名な作品があるが、あれはNTRではない。 あの作品はライバルに犯されそうになり、止めてもらおうと生理中だと言ったら 「じゃあ中出ししてもいいよな!」とどっぷり注ぎ込まれるという酷い展開だったが、ヒロインが最後まで毅然とした態度を崩さず、主人公に対する気持ちが揺るがなかったので、全然NTRが成立していないのだ。

 しかし安達哲がその昔マガジンで連載していた「キラキラ!」というマンガは立派なNTR作品である。 これは途中まで主人公とヒロインが付き合ってるんだが付き合ってないんだか、でもお互いに心惹かれてますよね~的な展開だったのに、いきなりヒロインの昔の男友達が現れ、主人公の男の知らぬところでその男友達と和姦(処女喪失) してしまう。その後ヒロインは主人公となんやかんやでヨリを戻してヨロシクやるわけだが、一時的とはいえ主人公から別の男に心が移っていたわけだから、見事にNTRが成立しているのである。 一応シナリオの中でヒロインと主人公は一時的に別れていた的な展開だったのだが、読者は完全な破局とは思っておらず、強いて言えばよくある「ラブストーリーを盛り上げるために一瞬離れるだけ」 だと感じていたはずだ。その中での他の男相手の処女喪失だったからショックが大きかった。これは安達哲が読者を相手に仕掛けた「かんなぎ」など比較にならないシュートである。

 また、アニメで言うとTV版マクロスのリン・ミンメイや、ガンダム0083のニナ・パープルトンはNTRキャラではない。 あいつらは単なる錯乱したビッチだ。この辺のさじ加減がわからないと、何がNTRで何がNTRではないのか判断する事は難しい。

 なぜミンメイがNTRではないのかというと、こいつは主人公の輝と中国人男とを天秤にかけ、最終的に中国人男を選び、輝の方は美沙を選ぶ。 したがって "輝とミンメイ" というカップルが成立していないのだ。 その後ミンメイは歌手として売れなくなって男と2人でドサ回りをするハメになり、その男とも破局し、「やっぱり輝が~」と擦り寄ってくるのだが、輝は美沙との関係を選んでミンメイを切り捨て、ビッチ・デカルチャーことミンメイは歌手としても落ちぶれたまま生涯独身で終わるという見事な自業自得の結末。これは「ビッチが自爆した」ってだけの話なのだから、間違ってもNTRとは呼べない。

 0083のニナ・パープリンの方は、現在の彼氏のコウと昔の男であるガトーが対峙した際に、なぜかコウを裏切ってガトーを庇う。しかしこれは「過去の話があった」という点と、明らかにガトーに死亡フラグが立っていたという点を考慮しなければならず、「昔の男が死にそうになって錯乱した」と解釈すべきと思われる。 よって残念ながら完全なるNTRとは看做せないのだ。その後パープリンはいけしゃあしゃあとコウの元に帰るという「ふざけんなクソアマ!」的な展開を見せ非難の嵐を浴びるわけだが、それはまた別のお話。ヒロインがクソビッチだというだけではNTRではないのである。

「じゃあどんな話ならNTRなんだよ!」と言われるかもしれないが、例えばVガンダムのカテジナさんはNTRかもしれない。主人公のウッソとカテジナが付き合っていたわけではないが、ウッソ少年にとってカテジナというのは憧れのお姉さんであり、序盤は "気高く美しい女性" という描写のされ方だった。しかしクロノクルにさらわれてからのカテジナは豹変したように "ナイスビッチ" に変貌し、明らかに目がイっちゃってる人になり、ウッソとクロノクルを殺し合わせて「勝った方にアタシをあげる!」と戦場で発狂するという落ちっぷりを見せてくれる (最大のオチはエピローグ部分なんだが)。全国放送のアニメだけあって具体的なセクース描写こそないものの、横から出て来た男に女性をかっさらわれる絶望感といった心理描写や、救いのなさという点で、実はこれ以上ないほどNTRを描いているのだ。

 このように、NTRというのはシンプルな定義付けが可能な割に、実は意外と面倒臭いジャンルなのである。肉体を犯す、傷付けるといった描写はレイプ・陵辱・リョナ等と呼ばれるべきであり、NTRとは心を持って行かれるまでの心理描写こそが最も重要なのだ。描写のしやすさでは前者の方が即物的で遥かに作りやすいだろう。後者は "落差" を演出しなければならないため、ある程度しっかりした脚本が書ける人間じゃないと高いクオリティを実現できないからだ。

 しかし、だからといってNTRではない作品をNTRと謳っていいという事にはならない。NTRを謳う以上は、今回オレが書いたような最低限の知識を身に付け、正しく描けと言いたい。

 話をまとめると、期待して金を出したのにクズを掴まされたオレの気持ちになってみろボケ! という事である。(←今回の長文の動機)

Written by 荒井禎雄

Photo by ℓαurα.Kαthαrinα

NDO(日本のダメなオトナたち)http://ch.nicovideo.jp/ndo

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