エリア拡大で勢いづく「ウーバー」とは何者? タクシー配車アプリ強化の裏で起きる変化とは
くるまのニュース / 2020年7月15日 9時10分
ウーバーが提供するタクシー配車アプリのウーバータクシーが、東京で2020年7月3日にサービスを開始しました。サービス提供エリアは全国で徐々に拡大していて、東京は12か所目だといいます。ウーバータクシーの日本でのエリア拡大においては、クルマの新しい使い方に対する、さまざまな事情が見え隠れするといいますが、これからどのように変化していくのでしょうか。
■意外と知らない? ウーバーとはどういう会社なのか
スマートフォンアプリのウーバータクシーが、2020年7月3日に東京でサービスを開始します。
これまで、ウーバーのアプリを使ったタクシー配車サービスは、過去2年ほどの間に大阪、京都、名古屋、仙台、青森、福島、広島、高知など全国各地で徐々に拡大し、12か所目としてついに東京都内での実用化が始まりました。
このニュースが新聞やネット上で大きく取り上げられています。その背景には、クルマの新しい使い方に対する、さまざまな事情が見え隠れするといいますが、いったい何が起きているのでしょうか。
まずは、日本でのタクシー配車アプリ戦争です。
DeNAのタクシー配車サービス「MOV(モブ)」が2018年12月に都内で発表された際、同社の担当役員は「タクシー配車アプリ戦争が、2019年から2020年にかけて起こる。不退転の覚悟で勝負に挑む」と決意表明をしています。
その予想通り、ジャパンタクシー、MOV、中国のDiDi(ディディ)、さらに今回のウーバー都内展開など、日本ではタクシー配車アプリ競争が厳しさを増してきました。
タクシー配車アプリは、タクシー会社にとっては需要が明確化され、非効率な客待ち時間がなくなるなど、経営にとってプラス要因があるとされています。
一方、ユーザーにとっては、短時間での明快な予約作業から支払いまで一気通貫したサービスが受けられることが大きなメリットです。
とはいえ、単純にタクシー配車アプリだけの話なら、ウーバーの都内活動開始が大きなニュースになるとは思えません。
キーポイントとなるのは、日本でのライドシェアリング解禁についてです。
※ ※ ※
日本でウーバーといえば、タクシー配車アプリに比べて、自転車などで食事を自宅まで届けてくれるサービス、ウーバーイーツの方が知名度は高いと思います。
2016年に東京でサービスを開始し、現在は全国各地でサービスが拡大。コロナ禍での巣ごもり需要の拡大で、さらに注目が高まりました。
ウーバーイーツも、ウーバーの事業のひとつですが、そもそもウーバーとは何者なのでしょうか。
筆者(桃田健史)は以前、米カリフォルニア州サンフランシスコのウーバー本社を取材し、ウーバー誕生の経緯や、将来事業の方向性などを詳しく聞きました。
ウーバーが誕生したのは、いま(2020年)から11年前の2009年です。同じ頃、ウーバーのライバルである「Lyft(リフト)」も、ウーバーと同じサンフランシスコで活動を始めました。
なぜ、サンフランシスコなのでしょうか。理由は大きくふたつあると思います。
ひとつは、地理的な環境です。サンフランシスコ中心部はニューヨークのマンハッタンのように、沿岸部の入江のような狭い形状で、その周辺に人口が密集しています。
空港まではクルマで約30分ほどの距離。こうした都市形態にしては、ニューヨークと比べてタクシーの数が少ないといわれてきました。
そうしたなか、客待ちで使われていないハイヤーの配車をアプリでおこなったり、また個人所有のクルマをタクシーのように使うという「ライドシェアリング」の発想が生まれました。
もうひとつ、サンフランシスコでの誕生の理由は、シリコンバレーの存在です。
サンフランシスコからクルマで1時間ほどの距離にある、パロアルト、サニーベール、マウンテンビュー、サンノゼといった地域は、1970年代からインテルなど半導体ビジネスが盛んとなり、ゲーム関連やアップルも登場。さらにグーグル、フェイスブックなどが続き、シリコンバレーはIT系企業の集約地となりました。
サンフランシスコ中心部はシリコンバレーからもっとも近い大都市であり、IT関連事業者が数多く居住しています。そうした都市生活を好むITエンジニアらが集まりやすかった、という点があります。
また、ウーバー誕生の2009年は、アップルのiPhoneと、グーグルのAndroidスマートフォンの普及初期でした。
ウーバーのビジネスモデルは、移動するモノ(自動車、自転車、船舶、飛行機・ドローンなど)を使った各種サービスを、スマホアプリを介してユーザーに提供するというものです。そのひとつが、タクシー配車サービスであり、ウーバーイーツなのです。
■コロナ禍で従来の法規制にも変化が?
ウーバーの事業の中核は、ライドシェアリングです。世界60か国以上で月間9000万人以上のユーザーがいます。400万人に近い登録ドライバーが、基本的に自分が所有するクルマをタクシーのように使います。
ライドシェアリングが普及すると日本でも移動サービスに変化が起きる?(写真はイメージ)
また、ウーバーでは自動運転ライドシェアリングの研究開発をおこなっており、その事業にトヨタは2018年8月に5億ドル(約535億円)、さらに2019年4月にはトヨタとデンソーで6億6700万ドル(約714億円)を出資しています。
日本の場合、タクシーのような旅客サービスをおこなうには、緑ナンバーの事業登録車を、二種免許を持つドライバーが運転しなければなりません。白ナンバー乗用車を、普通免許で運転して乗車料金を取ることは、いわゆる白タク行為として禁止されています。
ただし、交通が不便な地域、または福祉利用を目的として、自家用有償旅客運送という許可を地方運輸局が許可した場合は例外として、ライドシェアリングが可能となります。
筆者は実際、福井県永平寺町での交通政策を通じてこうした領域の話に関わる立場にあり、ライドシェアリングの必要性について地域の関係者と議論を深めています。
そのうえで、東京など日本の大都市で、アメリカ、中国、インドのようにライドシェアリングを解禁するかどうかについて、まだまだ課題が多いと感じます。
しかし、コロナ禍で社会状況に変化も出てきました。タクシー客が減少する地域が目立ち、一方で、ウイルス感染予防の観点で、公共交通期間を利用していた人が自家用車による通勤や、短時間のレンタカー利用やカーシェアリングに切り替える動きもあります。
日本の都市部や、都市周辺部でのライドシェアリングの有効的な活用方法について、トヨタが絡む自動運転ライドシェアリングの実用化も含めて、改めて議論する時期なのかもしれません。
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