欧州で登場したルノー新型「カングー」 いま買うべきか 待つべきか!? 現行型やライバルと比較
くるまのニュース / 2021年5月31日 11時10分
フランスでは2021年4月1日より受注が開始されたルノー新型「カングー」。およそ14年ぶりとなるフルモデルチェンジで、より大きく、より先進運転支援システムも充実している。そんな新型カングーの日本でのリリースは未定だが、新型と現行型ではどんな違いがあるのだろうか。いま現行型カングーを買うべきなのか、それとも新型を待つべきなのだろうか。
■新型カングーは現行型よりも約90mm全幅が広くなった
2021年4月、ついに、ルノー「カングー」の新型モデルが発表された。
ただし、発表と受注開始はフランス本国であり、日本でのアナウンスはいまだない。そのため、いまディーラーに駆け込めば現行型のカングーを買うことができるし、もう少し待てば新型を買うこともできる。
つまり現在は、新旧のどちらも新車購入を検討することができるという、めったにないチャンスでもある。そこで、新型と現行型、さらにはライバルとの比較をおこなってみたい。
まずは、基本となる現行型カングーは、どのようなクルマなのかを確認しよう。
現行型のカングーは第2世代モデルとして、2009年9月に日本で発売された。1997年に商用モデルをベースに生まれた初代モデルから、「遊び心のあるデザイン」「広い室内空間」「人と荷物を満載して楽しめるルドスパス(遊びの空間)」という基本コンセプトを引き継ぎ、それから現在まで、なんと11年以上にわたって販売されている。
マイナーチェンジを重ね、現行モデルは最高出力115ps・最大トルク190Nmの1.2リッター直列4気筒ガソリンターボを搭載。現在、販売されるグレードは、6速EDC(DCT)の「ZEN EDC」(264万7000円。消費税込 以下同)と、6速MTの「ZEN 6MT」(254万6000円)のふたつのみ。
ボディサイズは全長4280mm×全幅1830mm×全高1810mm、ホイールベース2700mm。荷室容量は、シートをすべて起こした状態で660リッター、後席と助手席を倒せば最大2866リッターまで増やすことができる。2列シートの5名乗車、左右後席のスライドドアと観音開きのバックドアは、いまも続くカングーの個性だ。
これに対して、フランスで発表、受注開始となった新型モデルは、全長4486mm×全幅1919mm×全高1838mm、ホイールベースは2716mm。現行型よりも、全長で約200mm、全幅で90mmほども大きくなっている。
後席の両側スライドドアは踏襲されたが、バックドアは観音開きから一般的な跳ね上げ式となった。また、車体が大きくなったこともあり、荷室容量は通常で775リッター、後席と助手席を倒せば最大3500リッターと拡大している。
搭載されるエンジンは、1.3リッター直列4気筒ガソリンターボが2種、1.5リッター直列4気筒ディーゼルが3種。ガソリン2種の最高出力・最大トルクはそれぞれ、100ps・200Nm、130ps・240Nm。ディーゼル3種の最高出力・最大トルクはそれぞれ、75ps・230Nm、95ps・260Nm、115ps・270Nmとなる。トランスミッションは、いまのところすべて6速MTだという。
また最新モデルらしく、先進運転支援システム(ADAS)も充実しており、ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)をはじめ、ヒルディセントコントロール付きスピードリミッターなど、14ものドライバーアシスタントシステムを搭載する。
フランスでの価格は、2万4900ユーロ(日本円で約323万円)から2万7900ユーロ(約363万円)となる。新型カングーは、車体が大きくなったことにあわせて、最新の先進運転支援システムも搭載したことで、価格もアップしているようだ。
ちなみにルノー・ジャポンの広報担当者いわく「カングーは代替わりするときに、旧型もたくさん売れる」という。しかも、実際のところ2020年の日本市場での現行型カングーの販売は、好調だったというのだ。
ルノー現行型「カングー」
確かに、新型の内容を考えると現行型の人気が集まるのも納得だ。なんといっても新型は、日本でも価格のアップが予想される。それよりも、手ごろな価格も先代を狙う人も多いだろう。また、新型の車幅1919mmは「さすがに大きすぎる」と感じる人も現行型を選びそうだ。
もちろん、先進運転支援システムが充実する新型を欲しいという人もいるだろう。どちらにせよ、新型が登場する前後は、またカングーの人気が高まることだろう。
■新型カングーのライバルはなに?
次いで比較したいのが、ルノー以外のライバルたちだ。その筆頭となるのが、シトロエン「ベルランゴ」とプジョー「リフター」という兄弟車になるだろう。
シトロエン「ベルランゴ」の走り
この2台は、どちらも左右後席のスライドドアを持つ2列シートのミニバンであり、カングーの直接のライバル車となる。
ボディサイズは、ベルランゴが全長4405mm×全幅1850mm×全高1850mm、リフターが全長4405mm×全幅1850mm×全高1880mm。つまり、現行カングーよりも全長で125mm、全高も40mmから70mm大きいけれど、新型カングーよりはおよそ70mm幅が狭く、約80mm全長が短いことになる。
プジョー「リフター」の走り
搭載するのは、最高出力130ps・最大トルク300Nmの1.5リッター直列4気筒ディーゼルエンジン。これに8速ATを組み合わせる。
車両価格はベルランゴが317万円から、リフターが339万円からとなる。いまどきの新型車らしく、衝突被害軽減自動ブレーキなどの先進運転支援システムを搭載しているのも特徴だ。また、車室内の天井中央に前席から後席まで続く、フローティングアーチと呼ぶ棚があったり、荷室天井部に収納ボックスを備えるなど、カングー同様に凝った収納スペースが用意されているのも特徴だ。
ただし、サイズや価格帯、先進運転支援システムの内容などを考慮すると、ライバルとしては、現行型カングーというよりも新型カングーが妥当だろう。
また、シトロエンやプジョー以外からもカングーのライバルが登場する。それが久しぶりの日本市場復帰を宣言したオペルだ。
2021年に復帰するオペルのラインナップに、後席スライドドアのミニバン「コンボライフ」が存在しているのだ。そして、このコンボライフは、ベルランゴとリフターの兄弟車となる。じつは現在のオペルは、シトロエンとプジョーと同じ、PSAグループ(現ステランティス)の一員となっているのだ。
つまり、コンボライフの内容的にはベルランゴとリフターと同じで、顔つきがオペル風になるというわけだ。
2021年にも日本に上陸する予定のオペル「コンボライフ」
* * *
振り返ってみれば、カングーは現行型か新型か? というだけでなく、ベルランゴやリフター、それともコンボライフ? というライバル伯仲という状況になっていたのだ。
とはいえ、グループPSAのライバルたちは、みな300万円台であり、本来的には新型カングーが対戦相手となる。
逆に現行型カングーは、それらよりも100万円ほども安く、しかも小さい。衝突軽減自動ブレーキなどの先進運転支援システムはないけれど、お手頃価格で扱いやすい現行カングーを今狙うのは、十分にアリだと思う。
「モデル末期のカングーは人気が高い」というのも当然のことなのではないだろうか。
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