窓開けは手動でクルクル! 昔のドライブは不便だった!? 懐かしの昭和のドライブ風景とは
くるまのニュース / 2021年9月23日 14時10分
1964年の東京オリンピック以降にマイカーが普及し始めましたが、当時は今と違って、ドライブでは不便なことがいろいろありました。昭和のドライブはどのようなところが大変だったのでしょうか。
■昭和のドライブはクルマに乗る前に点検が必須!
新型コロナ禍以降、密にならずに移動できる手段としてクルマの利用が増えています。
そんななか、自家用車はもちろん、レンタカーやカーシェアを利用する人もおり、最近では月額使用料を払ってクルマに乗る「サブスクリプション」といったサービスも登場。
これまでの所有から、シェアやサブスクといった新たなクルマの利用形態が広まりつつあります。
そもそも日本でマイカーが普及し始めたのは、ちょうど前回の東京オリンピック(1964年)のあとからでした。
当時は多くの人がクルマの維持に慣れていなかったので、メンテナンスなどは失敗しながら学んでいったものです。
そこで、かつてのクルマのメンテナンス方法や運転テクニックなど、いまでは廃れたものについてまとめてみました。
●走行前のクルマの点検
現代でも走行前のクルマの点検は必要ですが、かつてはとくにドライブなど長距離を走る前にはとくにエンジン回りの点検は重要でした。
現在ではエンジンオイルが燃えて減っていくケースは稀ですが、昔はそうではありません。
エンジン部品の精度や材質といった製造時の問題や、耐久性も今ほど高くなく、シリンダーヘッドのバルブ部分からエンジンの燃焼室にオイルが入ってしまう「オイル下がり」や、ピストンリングがオイルをかき落とせずに、やはり燃焼室で燃えてしまう「オイル上がり」が起こることが度々あったのです。
遠出前にはエンジンオイルの量を点検し、減っている場合には補充するのでした。
また、現代のクルマは膨張したエンジン冷却水を一時的にリザーブタンクに蓄えており、そのため量が減りにくく点検も目視で済みます。
しかし昔のクルマは、リザーブタンクが備え付けられておらず、エンジンをかけたときに冷却水が膨張し、そのときに漏れた分を排出されたらそれでちょうどよい量になる、としていたのです。
しかしドライバーが定期点検を怠けていると、思っていた以上に冷却水量が減っていることがありました。そこで遠出の前に冷却水量を点検し、減っていれば補充が必要でした。
このときに水を補充してしまうと冷却水中のさび止め剤の濃度が低下して効果を失い、エンジンやラジエーターを含む冷却水路を錆びさせてしまって深刻なオーバーヒートを起こすこともありました。
エアフィルターの点検も欠かせません。未舗装の道路が多かったために、エアフィルターにはごみやほこりがたまりがちでした。
遠出の際には高速道路を使ったり山に行ったりすることがあることから、エンジンパワーが求められます。
エンジンがたくさんの空気を吸い込む必要がありますので、ドライバーは出かける前にエアフィルターを清掃したものでした。
そのため、エアフィルターは誰でも簡単に取り外せるように、フタは手締めが可能な蝶ねじで止められていたのでした。
本格的なドライバーになると、スパークプラグの点検や清掃もしていました。
車載工具にはスパークプラグを外すプラグレンチも備えられており、ドライバーが日常的に点検する項目だったのです。
スパークプラグの寿命は現代の長寿命型と異なり、せいぜい2万kmから3万km。定期的にスパークプラグを取り外して減り具合を点検したり、ワイヤーブラシで磨いたものでした。
■ETCがない時代、料金所では大忙し!
●料金所ダッシュ
現代の高速道路と違い、当然ながら昔はETCなどありません。クルマの装備も手巻き式のマニュアルウィンドウやMT車が普通でした。
高速道路入り口で通行券を受け取ると、まず後ろのクルマの迷惑にならないように左手でシフトレバーを1速にして、すぐにクルマを発車させます。
手動で窓の開閉をするマニュアルウィンドウ
右手で通行券をサンバイザーなどにさして左手でハンドルを保ちながら、空いた右手でマニュアルウィンドウのクランク棒をくるくると回して窓を閉めます。
窓を閉め終える頃にはエンジンの回転数が4000回転を超えてくるので、左手で2速にシフトチェンジ、右手でハンドルを保持します。
隣のレーンのクルマの様子を見ながら、前に入るのか後ろにつくのかお互いのコンタクトで判断します。
隣のクルマの前に入る場合は、おおよそ5000回転を上限にシフト操作をして時速100kmまで速度を上げていくのでした。
これはタバコを吸わない人の場合で、喫煙者の場合にはタバコを口にくわえたり左手で持ったりしながらこれらのことを同時にこなすので、料金所を通過するときは本当に忙しい時間になったものです。
普段はおとなしい運転をする人でも、エンジンの回転数が上がりがちになったのが料金所でした。
なかには、勝手にほかのクルマをライバル視して前に行こうとする人もいたものです。
こんな忙しい風景も、1980年代初め頃から徐々にATやパワーウィンドウが普及し、徐々に見られなくなっていきました。
現在ではETCが普及したために、そもそも料金所で停車することすらなくなってしまったのです。
●坂道や渋滞
山や高原をドライブの目的地にすると、自然と登坂路を通るものです。
上り坂ではエンジンパワーや乗っている人数によっても、クルマごとに出せる速度が違ってきます。
ドライバーは時折バックミラーを見ながら、後ろに速いクルマや地元ナンバーのクルマがつくかどうか注意を払います。
後ろについたクルマの状況によっては、登坂車線に変更したり、見通しが良いところでクルマを左に寄せて、速いクルマや地元ナンバー車を先に行かせるのでした。
もちろん、スポーツドライビングでなくてもシフト操作に神経を集中させます。
当時はタコメーターが付いていないクルマが多数ありましたが、それでもエンジンのノッキングや振動を感じつつシフトダウンをおこないます。
「ヒール&トゥ」は一般的ではありませんでしたが、ダブルクラッチは身に付けている人はよくいたものでした。
まだ週休二日が普及する前でしたから、ドライブの多くは日帰り。そのため夕暮れ以降の高速道路は、必ずといってよいほど渋滞が発生します。
1960年代のクルマは発電機の性能は決して高くありません。停車時にはヘッドライトを消して電気の消費量を抑えるという対策をおこないました。
さらに1980年代頃のクルマになると発電機の性能は高くなっていたのですが、ドライバーの習慣はそのままで、ほとんどの人は停車中にライトを消したものです。
雨のなかでの渋滞となると、状況はさらに悪化します。停車時にはワイパーも止めて、少しでも電気の消費量を抑えます。
現在ほどカーエアコンは普及していなかったので、窓の内側が曇ったらウエスなどで曇りを拭き取ることを繰り返さなければならないのでした。
※ ※ ※
働くお父さんに週休二日制が広まるのは、まだまだ後のことです。そのためドライブというと、春や秋の連休の時期が選ばれましたが、困ったことに、そんな日に限って子供が好きなアニメ映画をテレビで放送したものです。
もちろん、当時はビデオデッキも普及していませんし、ビデオレンタル店もビデオソフトも存在していません。
クルマにテレビチューナーもなければ、スマートフォンもありません。
「アニメ映画が始まるまでには家に帰って!」とお願いしても、帰宅できるのはたいていアニメ映画が終わってからでした。
子供にとっては、祝日に家族でドライブに行くか、アニメーション映画を取るかは人生をかけた決断だったのです。
道路事情も人々を取り巻く状況も1980年代半ばまでは不便でしたが、以後、週休二日制が一般化したり、高速道路網が整備されたり、ビデオデッキやビデオレンタル店が増えて、いろいろと便利になっていきました。
いまから思えばストレスだらけでしたが、しかし、その分だけ人と人とのつながりが濃密だったともいえます。
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