雪国で必要不可避な「生活四駆」なぜ最近聞かなくなった? 「本格四駆」と何が違う? 最近の“4WD”事情とは?
くるまのニュース / 2024年1月21日 14時10分
雪道を走行するときは「四駆」が安全だとされています。雪国の生活に不可欠な四駆ですが、かつて「生活四駆」という言葉が使われていたものの、現在ではあまり聞かれません。最近の四駆事情はどうなっているのでしょうか。
■「生活四駆」「本格四駆」って一体ナニ?
最近、「生活四駆(せいかつよんく)」という言葉をあまり聞かなくなった印象があります。
ここでいう「生活」とは、日常生活の中で使用するという意味であり、「四駆」とはもちろん四輪駆動車(全輪駆動車)のことです。
雪国では四駆が必然という観点で、自動車業界では1980年代くらいから生活四駆という表現が使われるようになりました。
そんな雪国の中でも、降雪記録の“隠れ日本一”と呼ばれることがあるのが、山形県西川町の志津地区です。
西川町は山形県のほぼ中央に位置し、町内には月山(がっさん)があります。月山は、湯殿山(ゆどのさん)、羽黒山(はぐろさん)を含めて、出羽三山(でわさんざん)と呼ばれる東北の山間部で、降雪量がかなり多い地域として全国的に知られています。
同町役場によると、例年4~6メートル級の積雪量を記録することは珍しくなく、なかでも1973年(昭和48年)3月1日に積雪量8メートルという大記録が残っているといいます。
毎年、降雪量の記録では、青森県の酸ヶ湯(すかゆ)が日本一とされることが多くありますが、これは、国土交通省の観測地点がある中で集計した記録であり、山形県単独の調べでは西川町志津地区の降雪量がさらに多い場合もあるとのことです。
そのため、西川町は“降雪量隠れ日本一の町”としてメディアで紹介されることがあります。
そんな西川町に、スバル「レガシィ アウトバック」で訪れたのは2023年12月後半。その2日前に寒波が来た影響で志津地区にはかなりの降雪があったのですが、その後に気温が若干上がったことで路面の一部はアルファルトが見える状態でした。
それでも、志津地区の周辺は、いかにも雪深い場所という雰囲気を感じます。
そんな豪雪の西川町では、四輪駆動車とスタッドレスタイヤの必要性を認識しているといいます。
除雪直後の路面は、急ブレーキや急ハンドルといった“急”が付くクルマの操作は危険であること、また西川町は橋が多いため風雪で橋の路面温度が低くなって滑りやすいことなどについて、町民や観光客に改めて理解を深めてもらいたいとしています。
まさに、西川町では通勤や買い物に生活四駆が必要不可避な存在だと言えるでしょう。
では、生活四駆以外の四駆とは何でしょうか。
それは一般的に、本格的なオフローダーを指すのですが、この領域の市場環境は過去数十年間で大きく変化してきました。
1990年代頃まではトヨタ「ランドクルーザー」やスズキ「ジムニー」など、ラダーフレームを持つ四駆が本格的な四駆として君臨していました。一方、生活四駆といえば、1970年代に乗用車としては世界初となる量販型四駆を搭載した「レオーネ」から続くスバルの存在が目立った時代です。
当時、グローバル市場で事業規模が小さいメーカーであったスバルとしては、他社に先駆けて生活四駆に着目し、雪国での需要を積極的に取りにいったと言えるでしょう。
こうした事業戦略は日本のみならず、北米や欧州でも同様でした。アメリカでは2000年代半ば頃まで、スバルは西海岸のオレゴン州、中西部のコロラド州、そして東海岸ではニューヨーク州の山間部などの生活四駆というブランドイメージが定着していました。
それが2000年代以降になると、日本だけではなく海外でもユーザーが生活四駆という意識をあまり強く持たなくなった印象があります。
背景にあるのが、SUV市場の拡大です。
1990年代後半に北米市場で急激な伸びを見せ、そうしたトレンドがその後、欧州や日本、そして当時はまだ経済新興国だった中国や東南アジアで一気に広がっていきました。
多くのSUVモデルでは、ベースモデルがFF(前輪駆動)またはFR(後輪駆動)で、各グレードに四駆が設定されています。そんなSUVに対して生活四駆という呼び方は似合わなくなったと言えるのではないでしょうか。
生活四駆というと、スバルのセダンやハッチバックのイメージです。たとえスバルでも「フォレスター」や「アウトバック」に対して生活四駆という表現はマッチしないように思います。
実際、スバルを含めて自動車メーカー各社は近年、生活四駆という表記を商品カタログやホームページに掲載することはあまりないと思います。
一方で、ランドクルーザーやジムニーなど、ラダーフレーム系四駆についても本格四駆という表現は少なくなってきました。
日常使いやオンロード走行を主体としたレジャー、そして悪路走行を含めたアウトドアなど、四駆の機構、機能、そして性能には差はあるにせよ、多くのSUVが生活四駆のイメージを超えたオールラウンドプレイヤーになったといえるのではないでしょうか。
それにともない、生活四駆という表現が世の中から徐々に消えていったのだと思われます。
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