社会問題が元ネタ? スーパー戦隊で「2度と使われなかった」モチーフ3選
マグミクス / 2024年3月26日 7時10分
■製作陣は、いつの時代も時代の空気を読み取り番組に取り入れてきた
『秘密戦隊ゴレンジャー』の放送開始から約50年が経ったこれまで、スーパー戦隊では車、恐竜、忍者など子供が好きなモチーフが繰り返し扱われてきました。その半面、1作きりで2度と使われなかったモチーフもあります。
使用されなかった理由には、モチーフの映像化やキャラクター化が難しかったこともあるようです。今回は、その後に採用されなかったモチーフのスーパー戦隊を3つ振り返りましょう。
スーパー戦隊第3作の1979年『バトルフィーバーJ』では、モチーフとしてダンスが採用されました。前年の1978年7月にジョン・トラボルタさん主演の『サタデー・ナイト・フィーバー』が日本でも公開され大ヒットし、空前の「ディスコブーム」が起きます。そのうえ「フィーバー」という言葉がひとり歩きして流行語になり、1978年の水谷豊さん主演ドラマ『熱中時代』の主題歌『僕の先生はフィーバー』もヒットしました。
『東映スーパー戦隊大全 バトルフィーバーJ・デンジマン・サンバルカンの世界』(双葉社)に掲載された吉川進プロデューサーのインタビューによると、当時の東映社長も口癖のように使っていたそうです。
そこから「バトル+フィーバー」=「戦い+ダンス」ということで、「最高の舞踊は最強の技斗として踊りを戦いに活かすヒーロー」が誕生しました。
『バトルフィーバーJ』は「世界各国のダンスのリズムを基礎とした戦闘術を持った5人の戦士」という設定です。バトルジャパンは空手とカンフーを融合させたカンフーダンス、ミスアメリカはディスコダンス、バトルコサックはコサックダンス、バトルフランスはフランスという名なのにフラメンコを基調としたスパニッシュダンス、バトルケニアは南国のダンスを基調としたトロピカルダンスでした。
という風に設定書には書かれていますが、変身した直後にダンスの名残りはあるものの、実際の戦いにはあまりダンスが活かされていませんでした。東映プロデューサー平山亨さんの著書『泣き虫プロデューサーの遺言状~TVヒーローと歩んだ50年~』(講談社)によると、当時の東映社長が第1話の試写を見て「踊りってのは何ごとだ。そんな軟弱なもの」と怒りだし、平山さんはやむなくダンスの部分をカットしたそうです。結果的に、普通の戦隊バトルに落ち着きました。
■親探しの物語が1年間を通して描かれた『超新星フラッシュマン』
1986年の第10作は星やプリズムがモチーフの『超新星フラッシュマン』ですが、隠れたモチーフは「中国残留孤児」でした。1981年から中国残留孤児の訪日調査が開始されて、社会問題になっていたのです。第二次世界大戦末期の混乱のなか、親とはぐれて多くの日本人の子供が現地に置き去りになって中国の養父母に育てられていました。
「スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 1986 超新星フラッシュマン」(講談社)によると、東映の鈴木武幸プロデューサーが残留孤児問題からヒントを得て、「肉親への想いを壮大な宇宙レベルにまで広げられないか」と考えて生まれたのが『フラッシュマン』だといいます。
そして同作はエイリアンハンターに誘拐された地球人の赤ん坊たちがフラッシュ星人に救われて成長し、20年後に地球に帰って親探しをしながら、フラッシュマンとして改造実験帝国メスと戦うという物語になるのでした。視聴者の子供たちは、「中国残留孤児」がモデルであるとは思いもしなかったでしょう。
また、2000年の第24作『未来戦隊タイムレンジャー』のモチーフは時間でした。5人のメンバーのうち4人が未来からやってきた時間保護局の捜査官で、レッドは現代の普通の青年という異色の設定となっています。時間保護局は、歴史が変わってしまうタイムパラドックスを阻止するために監視する組織です。
のび太の未来を変えるためにやってきた『ドラえもん』に馴染んだ子供たちにしてみれば、「なぜ未来を変えたらダメなの?」と思った人もいたでしょう。また、戦隊も敵も未来からやってきているだけで、戦隊自体に時間を止めたり、時間を逆戻ししたりできる能力があるワケではありません。ただアナログ時計の3時、6時の形になって攻撃する「ベクターエンド」という攻撃はありました。
『スーパー戦隊 Official Mook 20世紀 2000 未来戦隊タイムレンジャー』(講談社)の番組プロデューサー日笠淳さんの談話によると、「各方面でパターン崩しみたいなことをやっています」とのことです。子供にはちょっと難解ですが、同作の先の読めない展開は大人にも好評でした。
(LUIS FIELD)
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