ド派手なOPが魅力な『マッハバロン』 後世に与えた影響の数々とは 放送開始50年
マグミクス / 2024年10月7日 6時35分
■ロボットアニメ草創期に立ち向かった特撮ロボ作品
本日10月7日は、1974年にTV特撮番組『スーパーロボット マッハバロン』が放送開始した日です。今年2024年で半世紀の時が経ちました。現在でも人気と知名度の高い作品の魅力について振り返ってみましょう。
本作は、前作にあたる『スーパーロボット レッドバロン』に続けて制作され、「特撮ロボット戦記 バロンシリーズ第2弾」と銘打っていました。後に制作された『小さなスーパーマン ガンバロン』を含め、「バロンシリーズ3部作」と呼ばれています。
そのストーリーは、世界征服をたくらむ「ロボット帝国」の首領「ララーシュタイン」からの侵略に立ち向かうため、父親の残したスーパーロボット「マッハバロン」で主人公の「嵐田陽(あらしだ よう)」が戦うというオーソドックスなものでした。
前作とのストーリー的な関連性はありません。しかし、本作の主役ロボであるマッハバロンのデザインが、前作の主役ロボ「レッドバロン」を踏襲した部分も多いことから、続編として当時の子供には認識されています。
このマッハバロンの、当時の巨大ロボとして最高峰ともいえる造形に心奪われた子供も多くいました。もちろん筆者もそのひとりです。当時は『マジンガーZ』から始まった巨大ロボ人気を、『ゲッターロボ』や『グレートマジンガー』が受け継いだころで、ここから本格的な巨大ロボアニメブームが始まりました。
そういった時期ゆえに『マッハバロン』は少々異端で、オイルショック期にもかかわらず特撮作品で巨大ロボを扱うというのは、逆に当時の子供には新鮮に映ったのでしょう。それゆえに子供心に響いた作品として、筆者の記憶に強く残っています。
個人的に特筆したいのが、マッハバロンの発進シーンでしょうか。毎回観ているにも関わらずゾクゾクする発進シーンでした。特撮技術とBGMのハーモニーが素晴らしく、英語によるシークエンスも実写ならではのリアルさを感じるものです。
物語に関しては評価が分かれるかもしれません。なぜなら比較的ビターな展開が多く、その部分に関して人によって感じ方が違うからです。最終回も敵幹部を全滅させるものの、敵組織はララーシュタインと共に健在で、味方側はヒロインが死亡するという展開でした。
当時のTVアニメ作品ではこういった完全決着しない作品は少なくなかったのですが、実写作品では珍しい展開だったといえるかもしれません。それゆえに本作がより印象的に思えたのでしょう。
エンディング曲である「眠れマッハバロン」の歌詞に、「お前が静かに眠れる世の中が平和で一番すばらしい時」という一節があります。これを引用して最終回に対しての考察を行うファンも多く、当時の子供として懐かしく思うよりも、今の大人としての目線で語る人の方が多いかもしれません。
本作が今なお熱く語られることがあるのは、こういった子供時代に気付けなかった点が多く含まれているからなのでしょうか。
■マッハバロンが後世に残した影響の数々
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エンディング曲が先になってしまいましたが、本作でもっとも話題になることがあるのはオープニング曲「マッハバロン」です。
そのロック調のメロディはインパクト絶大で、作品を知らずに聞いた人が興味をもって『マッハバロン』という作品を知るきっかけとなることもありました。近年では動画サイトの普及から、そこから知る人も増えたそうです。21世紀の現在にも通じる特撮ソング屈指の名曲といえるかもしれません。
近年にも影響を与えたもののひとつに、マッハバロン最大の必殺技である「マッハコレダー」があります。両目から発射する中性子と1億ボルトの超高圧電流を合成した光線でした。名前でお気付きの方も多くいると思いますが、「○○コレダー」という必殺技の元ネタといえるかもしれません。
筆者がわかる範囲ですと、「バスターコレダー」(『トップをねらえ!』のガンバスター)、「紅丸コレダー」(「KOFシリーズ」の二階堂紅丸)、「アビゲイルコレダー」(『BASTARD!!』のアビゲイル)などが挙げられるでしょうか。
前述したように、マッハバロンの巨大ロボとしての魅力は当時から高いものでした。造形物は決まったメーカーだけというわけでなく、各社から販売されています。当時は人気だった合金製のオモチャも高い評判を得ましたが、もっともポピュラーなものといえばプラモデルだったかもしれません。
とくに「アオシマ」こと「青島文化教材社」から発売された「合体マシン」は大ヒット商品になり、以降にもさまざまな作品がシリーズにラインナップされました。この合体マシン第1号がマッハバロンだったのです。
このシリーズは比較的安価だったことが、合金製オモチャに勝る点でした。さらに接着剤不要で関節も稼働するといった部分が、他社製品を大きくリードしていたといえるかもしれません。その売り上げも好調で、翌年1975年には関西模型小売商組合連合会から、もっとも売れた商品に贈られる「プロフィット賞」を受賞しています。
こうして収益的には黒字だったそうですが、TV局側の都合で26話にて最終回を迎えました。一説によると、それ以降の展開も予定されていたそうです。最終回で決着がつかなかったのは、その余波だったのかもしれません。
もっとも、高い人気があり当時から評判が良かったことで、長年にわたって特撮ファンには印象的な作品として記憶されることになります。完全な余談ですが、一度アニメによるリメイクの話もありました。筆者も企画書を見たことがあります。
昨今ではアニメや特撮でもリメイク作品をよく目にします。ひょっとしたら『マッハバロン』もいずれそうなるかもしれません。もっとも、個人的には見てみたいような、怖いような複雑な気分です。
(加々美利治)
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