人生大体ハードモードな「ガンダム」シリーズの主人公って最後まで悲惨なままなの?
マグミクス / 2024年10月10日 21時55分
■アムロの最期は悲惨といえるでしょうか?
『機動戦士ガンダム』シリーズの主人公は、最後は悲惨な運命をたどることが多いといわれていますが、本当にそうなのでしょうか。シリーズから5つの作品をピックアップして検証してみました。
●『機動戦士ガンダム』『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』アムロ・レイ
完全に死んだと断言するわけではありませんが、「アムロ・レイ」の最期の戦いの結末は、悲惨といえるでしょうか。小惑星基地「アクシズ」の落下を阻止し、宿命のライバルである「シャア・アズナブル」とともにサイコ・フレームの光のなかに消えたことは、人によっては悲惨とも言うでしょう。ネオ・ジオンに対しアクシズを譲渡した地球連邦政府高官の愚行に巻き込まれたとも考えられますし、本格的な地球連邦軍の参戦があれば、「ロンド・ベル」(アムロの所属した部隊)が無理をする必要もなかったとも思えます。
しかし、アムロが仮にアクシズ落としを生きながらえたとしても、その後の宇宙世紀の流れや顛末を考えると、ニュータイプが生きやすい世の中は到来しなかったといえます。宿命のライバルであるシャアと運命をともにしたのであれば、それは悲惨なのではなく、あるべくしてこうなった、ふさわしい終わりだったといえるのではないでしょうか。
●『機動戦士Zガンダム』カミーユ・ビダン
「あまりにも高いニュータイプ能力を持った人間はこうなる」見本のような終わりを迎えたのが、「カミーユ・ビダン」でした。
現代のSNSでは、毎日のように欲望や怒りを誘う投稿が行われています。人の意思を感じすぎるカミーユが戦場に出るのは、周囲から無制限に死の恐怖をともなうSNSの投稿を直接、心に投げつけられるようなものでしょう。「パプテマス・シロッコ」を倒した際に心を持っていかれてしまったのは、カミーユ自身が大切な人を次々に失うなど強烈なストレスを受けすぎたため、精神が弱っていた点も大きかったと考えられます。
『機動戦士ガンダムZZ』にて「ファ・ユイリィ」の献身的な看護で笑顔を取り戻せたのは、自他問わない死のストレスから解放されたのも大きかったのではないでしょうか。
●『機動戦士ガンダムZZ』ジュドー・アーシタ
非常に平和な終わり方を迎えたのが、「ジュドー・アーシタ」でした。ハマーンとの一騎討ちに勝利し第一次ネオ・ジオン戦争を終結に導いた立役者です。死んだと思っていた妹の「リィナ・アーシタ」とは無事に再会を果たし、良い関係になっていた「ルー・ルカ」とともに資源採掘艦「ジュピトリスII」へ乗り込み木星に向かって地球圏のゴタゴタからも離れてめでたしめでたし。
なお、ここから先は長谷川裕一先生のマンガ『機動戦士Vガンダム外伝』(KADOKAWA)での話になりますが、ジュドーのその後らしき人物として「グレイ・ストーク」という人物が登場しました。木星船団でリーダーをしている、「ZZ」を改造したと思しきモビルスーツ「ガンプ」を持つ老人で、年齢や経歴からしてジュドーではないのかといわれています。ゲーム『SDガンダムGジェネレーション』シリーズにストークが登場した際には、声優をジュドー役の矢尾一樹さんが務め、非常に良い匂わせになっているのも面白いポイントです。
■愛する人と添い遂げた主人公も
宇宙世紀の『ロミオとジュリエット』。「機動戦士ガンダム 第08MS小隊 Blu-rayメモリアルボックス」(バンダイビジュアル) (C)創通・サンライズ
●『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』シロー・アマダ
愛する人と無事に添い遂げた主人公も、もちろん存在しています。「シロー・アマダ」もそのひとりです。第11話「震える山(後編)」でシローは「アイナ・サハリン」とともに愛機「EZ-8」で、「ギニアス・サハリン」の駆るモビルアーマー「アプサラスIII」に特攻を仕掛け、相討ちに持ち込みます。しかしギニアスが最後に放ったメガ粒子砲でEZ-8の下半身は失われており、シローとアイナも行方不明となりました。
特別編『ラスト・リゾート』では、シローを探す「ミケル・ニノリッチ」と「キキ・ロジータ」の物語が描かれ、ラストに片足を失ったシローと妊娠したアイナが登場して両者の生存が確認されました。ふたりとも表だって生きていくのは難しい立場ではありますが、幸せなラストと断言してよいと思われます。
●『∀ガンダム』ロラン・セアック
『∀ガンダム』の「ロラン・セアック」のラストは、悲劇ではありませんが悲恋とはいえます。
「ギム・ギンガナム」の駆る「ターンX」との一騎討ちに臨んだロランは、「∀ガンダム」に大きなダメージを受けながらも、ターンXの破壊に成功しました。その後、ギンガナムに刀での決着を挑まれたロランは、∀とターンXが作り出す「繭」にギンガナムが取り込まれるなか、刀を棄てて脱出、無事に地球へと帰還を果たしました。
その後、物語冒頭から縁深かったヒロインのひとり「ソシエ・ハイム」に引き留められながらも、地球で隠棲する月の女王「ディアナ・ソレル」に同行することを決め、穏やかな日々を過ごしている描写で作品は締めくくられました。
(早川清一朗)
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