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声優・塩沢兼人さんの命日 『ガンダム』マ・クベ『クレしん』ぶりぶりざえもんなど

マグミクス / 2020年5月10日 8時10分

声優・塩沢兼人さんの命日 『ガンダム』マ・クベ『クレしん』ぶりぶりざえもんなど

■あまりにも突然の訃報

 5月10日は2000年に46歳で亡くなった声優・塩沢兼人(しおざわ・かねと)さんの命日です。 『宇宙戦士バルディオス』のマリン・レイガンや『銀河旋風ブライガー』の木戸丈太郎(ブラスター・キッド)など主役キャラを務める一方、『機動戦士ガンダム』のマ・クベや『北斗の拳』の南斗水鳥拳のレイ、『クレヨンしんちゃん』のぶりぶりざえもん(初代)など個性的な役を独特な色気ある声で演じ、強い印象を残しました。20年前、塩沢さんの死に大きな衝撃を受けたライターの早川清一朗さんが、追悼の思いを捧げます。

* * *

 Yahoo!ニュースに、「声優の塩沢兼人さん急死」を告げるニュースが出ていたのを見たとき、一瞬、心臓をつかまれたようなショックを受けたことを覚えています。

 まったく予想もできなかった突然の訃報にしばし呆然としてから、もう20年も経ってしまいました。時の流れの早さには驚かされるばかりです。

 塩沢さんの享年は46歳。初代『ガンダム』を子供の頃に見ていた世代は、今まさに同年代となっています。筆者もそのひとりです。まだこれから、いくらでもやれることもできることもある年齢です。ご本人を含め、当時のご友人や関係者の無念は、察するに余りあります。

 生前に所属していた青二プロダクションには、今なお塩沢さんのページが残されており、過去に演じた膨大な数の役が記されています。 塩沢さんの声を再使用したい場合の問い合わせ用に必要なものなのでしょうが、それ以上に、塩沢さんの存在が、今なお強く心のなかに刻み込まれている方が多いからなのではないかとも思えます。

 塩沢さんの死因は脳挫傷。5月9日午後4時ごろに自宅階段から転落し、当初は異常がなかったものの、午後10時ごろに容態が急変。翌5月10日の0時54分に亡くなりました。

 塩沢さんはこの事故以前にも酔って家の階段から落ち、骨折していたため階段に手すりを付けていたとラジオで語っていたことがあり、一応対策はしていたようです。しかしながらそのときパーソナリティを務めていた鈴木真仁さんは「酔っていたら意味がない」と語っており、残念ながらその通りとなってしまいました。

■個性豊かな役を幅広く演じた稀有な才能

マリン・レイガン役『宇宙戦士バルディオス』 Blu-ray BOX(バンダイビジュアル)

 さて、少年時代から役者を志していた塩沢さんは、日本大学芸術学部演劇科在籍中の1975年に、『タイムボカン』で声優デビューを果たしています。

 その後、『一発貫太くん』で初のレギュラーをつかむと、1979年には『機動戦士ガンダム』に出演しさまざまな役を担当しますが、なかでも悪役として演じたマ・クベが高評価を受けました。その後は独特な色気と深みある声質を生かし、『戦国魔神ゴーショーグン』のレオナルド・メディチ・ブンドルや『蒼き流星SPTレイズナー』のル・カインなど、多くの美形悪役を演じるようになりました。

 1980年には『宇宙戦士バルディオス』で初の主役となるマリン・レイガンを射止め、複雑な背景を持つキャラクターを時に熱血漢として、時に自身の出自や愛に苦悩する若者として見事に演じ切りました。

 しかし塩沢さんの演技の幅の広さは、主役や悪役といった範囲に収まるようなものではありません。『銀河旋風ブライガー』の木戸丈太郎役ではギャグができることを証明し、ギャグとシリアスを交えたタイプのキャラクターを数多く演じるようになります。

 なかでも『クレヨンしんちゃん』(以下、クレしん)のぶりぶりざえもんはハマり役となりました。塩沢さんの死後、『クレしん』二代目監督の原恵一氏は「ぶりぶりざえもんの声は塩沢さん以外に考えられないと思ったので封印した」と語っており、事実16年もの間、後任の声優が立てられることはありませんでした(現在は神谷浩史氏が担当)。なお、2000年5月19日に放送された『クレしん』の「大河時代劇スペシャル!春日部黄門」が塩沢さんの遺作となっています。

 他にも『銀河英雄伝説』のパウル・フォン・オーベルシュタインのような冷徹なキャラクターや、『ハイスクール!奇面組』の物星大のような中性的な役柄までを自在に演じた塩沢さんの存在感は圧倒的なものがあります。

『スーパーロボット大戦シリーズ』では20年以上前に収録した音声を今でも使用し、特に『超獣機神ダンクーガ』の司馬亮では他のキャラクターの声を新録し、塩沢さんの声と組み合わせて上手く掛け合いを作り出すほどのこだわりを見せてくれています。

 少し前のアニメを見直すと、塩沢さんの足跡は至るところに残されていることに気付きます。色気ある低く繊細な声で、演じるキャラクターごとに異なる姿を見せてくれた類まれなる俳優でした。ここに謹んで、哀悼の意を捧げたいと思います。

(早川清一朗)

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