1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 芸能
  4. アニメ・コミック

ジブリへと続いた『母をたずねて三千里』 「母の日」に見たい高畑&宮崎コンビ作品

マグミクス / 2020年5月10日 12時10分

ジブリへと続いた『母をたずねて三千里』 「母の日」に見たい高畑&宮崎コンビ作品

■NHK『なつぞら』でおなじみのスタッフが集結

 5月の第2日曜日は「母の日」です。感謝の気持ちを添えて、お母さんにカーネーションを贈ったことのある人は多いのではないでしょうか。「母の日」にちなみ、母親をモチーフにしたアニメ作品を紹介したいと思います。

 けらえいこ原作の『あたしンち』(テレビ朝日系)、西原理恵子原作の『毎日かあさん』(テレビ東京系)などの生活感たっぷりな母親を描いた日常アニメも数多くありますが、1976年に「世界名作劇場版」シリーズとして放映された『母をたずねて三千里』(フジテレビ系)も忘れられない作品です。主人公の母親は第1話と終盤にしか姿を見せませんが、逆に主人公にとって大きな存在となっています。

 エドモンド・デ・アミーチスの小説『クオレ』を原作にした『母をたずねて三千里』は、高畑勲(監督)&宮崎駿(場面設定&レイアウト)というアニメ史に残る名コンビが手掛けた感動的なロードムービーです。キャラクターデザインおよび作画監督は『アルプスの少女ハイジ』(フジテレビ系)に続いて小田部羊一氏、作画監督補佐はNHK連続テレビ小説『なつぞら』の主人公のモデルとなった奥山玲子さんでした。東映動画(現・東映アニメーション)出身の凄腕クリエイターたちが才能をぞんぶんに発揮した作品です。

■『未来少年コナン』そっくりなキャラたち

 時代は19世紀。イタリアの港町ジェノバで暮らす少年マルコ(CV:松尾佳子)が主人公です。苦しい家計を支えるため、マルコの母アンナ(CV:二階堂有希子)は南米アルゼンチンまで出稼ぎに向かいます。ところが、アンナからの手紙が途絶えたため、マルコは母の安否を確かめに旅立ちます。ようやくアルゼンチンへ渡っても、すれ違いの連続で、マルコは何度も絶望感に襲われるのでした。

 TVアニメ版では、原作にはない人形劇団一座を率いるペッピーノ(CV:永井一郎)や次女のフィオリーナ(CV:信澤三恵子)らが登場し、物語を盛り上げました。腰を据えて働くことができないペッピーノ、地味な性格のフィオリーナは、宮崎駿監督の監督デビュー作『未来少年コナン』(NHK総合)のダイス船長とラナにそっくりです。

 最初は口数の少なかったフィオリーナですが、マルコとの交流を重ね、少しずつ明るくなり、父親であるペッピーノにも自分の意見をはっきりと伝えることができるようになります。早くに母と別れたつらい過去を持つフィオリーナが、マルコを温かく励ます場面は胸に迫るものがありました。

■スタジオジブリへと受け継がれた冒険談

『MARCO 母をたずねて三千里』DVD(バンダイビジュアル)

 街から街へと巡業して回るペッピーノ一座ですが、これは脚本家の深沢一夫氏がもともとは人形劇団の劇団員を務めていた体験から生まれたものです。深沢氏はアイヌ神話をベースにした人形劇『チキサニの上に太陽』のシナリオを執筆し、これを原作にして東映動画の名作アニメ『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)が生まれています。

 こうして振り返ってみると、『ホルスの大冒険』のヒルダを源流にし、『母をたずねて三千里』のフィオリーナ、『未来少年コナン』のラナ、さらには『天空の城ラピュタ』(1986年)のシータ……と宮崎監督好みなヒロイン像が受け継がれてきたことが感じられます。少年がいちばんの宝物(母親)を探す旅に出ることで成長を遂げる『母をたずねて三千里』は、スタジオジブリが得意とした冒険物語の原型のひとつに数えることができそうです。

 大人になったマルコが登場する劇場版『MARCO 母をたずねて三千里』(1999年)もDVD化されていますが、南米音楽を取り入れた主題歌「草原のマルコ」が流れるTVシリーズ(全52話)、もしくはTVシリーズの総集編『世界名作劇場 母をたずねて三千里』を個人的にはおススメします。

■高畑&宮崎コンビとは対照的な「母親」像

 高畑&宮崎コンビ作『母をたずねて三千里』では「母親」は絶対視される存在として描かれていますが、それとは対照的な「母親」像を描いたのが富野由悠季監督の『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)です。1979年にTV放映された『機動戦士ガンダム』の第13話「再会、母よ」では、敵対するジオン軍と日々戦うアムロ・レイに対し、久々に再会した母カマリアは「こんなふうに育てた覚えはない」「なんて情けない子だろう」と冷たい言葉を浴びせます。故郷だけでなく、肉親も失ったアムロの孤独感を印象づけたエピソードでした。

 松竹系で全国公開された劇場版『機動戦士ガンダム』(1981年)では、母カマリアの声を松竹の看板映画「男はつらいよ」シリーズでおなじみだった倍賞千恵子さんが演じています。アムロの人間的葛藤と成長を描く上で、カマリアの存在が重要視されていたことがうかがえます。実の母親との精神的なつながりが切れてしまったアムロは、ジオン軍の猛将ランバラルの内縁の妻・ハモンに気に入られます。富野監督は「母親」という存在を絶対視、聖女化することなく、ひとりの「女」として見ていたのではないでしょうか。

 ちなみに「母の日」に贈るカーネーションですが、色によって花言葉は大きく変わります。赤いカーネーションは「母への愛」ですが、黄色いカーネーションは「軽蔑」を意味しています。アニメ作品で描かれる「母親」像も、監督によってずいぶんと異なるようです。うっかり、間違った色のカーネーションを贈らないようにしたいものです。

(長野辰次)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください