シュールな“バカゲー”『クッキングファイター好』 ガチの料理バトルにパロディネタ
マグミクス / 2020年5月21日 16時10分
■ガチンコ料理バトル×パロディネタ
読者の方々は、プレイしてから何年も経つのに未だに忘れられない、そんなゲームはありますか? エンディングで気持ちが高まり号泣した。ラスボスが強すぎて何回リトライしたか分からない。大好きなキャラクターが途中で退場してしまい、リアルに寝込んだ……。シチュエーションは違えども、色濃い思い出の詰まったゲーム作品は、今後もそうそう忘れることはないと思います。
今回ご紹介する『炎の料理人 クッキングファイター好(ハオ)』(以下『クッキングファイター好』)も、筆者が忘れることのできないゲームタイトルの一本。「感動した!」と言うより「何だこれ?」とつぶやくのにふさわしい、”愛すべきバカゲー”として、心に強く焼きついています。
『クッキングファイター好』は1998年5月21日に発売されたプレイステーション用ソフト。タイトル名にクッキングと入っていますが、本作は実生活の料理をサポートするわけではありません。ひとりの青年が料理バトルを繰り広げ、陰謀企む悪の料理人と戦う”料理アクションゲーム”です。
本作の主人公を務める「ハオ」(CV:檜山修之)は、実の母親を手にかけた父親「味魔王」(CV:藤本譲)の行方を探すため、個性豊かな料理人と料理の腕前を競い合いながら各地を行脚します。登場するメニューも様々で、香ばしげな蟹料理に熱々の麺料理、見るからに身体に効きそうな薬膳料理など、中華を軸として登場キャラクターたちが各々の得意料理を自信満々に振る舞います。
また料理アクションと銘打つ通り、調理パートはアクション要素が強め。まずはフィールドを走り回り、ニワトリやウマなどの生きた食材と対峙し、ボタンを連打してダメージを与える。次に気絶させた食材を調理し、制限時間内にできるだけ多くのメニューを完成させる。最後に完成メニューの合計スコアにより勝敗が決定されます。キッチンに立って調理に取り掛かるのではなく、食材はあくまでも現地調達。生を奪われんと必死に抵抗する食材に加え、対戦相手の料理人から妨害を受けてもなお調理を諦めない。そんなハオの姿からは、料理に対する尋常ではない熱意を確かに感じました。
筆者が本作を知ったのは某ゲーム番組。上述したアクションパートも印象的でしたが、それ以上に珍妙なイベントパートに興味をそそられました。序盤の会話から「お玉は人を殴る道具じゃない」と名言を残すハオに対し、なぜか小指を立てながら会話を進める「ザコ(公式名称)」。データ保存の度に聞こえてくるハオの「セェェェブ中!」ボイスを含め、食指が伸びる動機としては十分なまでに奇怪でした。
そしてイベントパートの随所でキラリと光っていたのが、開発者の趣味が全開に現れたパロディネタ。主人公のハオは『機動武闘伝Gガンダム』(以下『Gガンダム』)の主人公「ドモン・カッシュ」と雰囲気が似ており、料理バトルの最中に右手を掲げ、全身に金色のオーラをまといます。敵として登場する味魔王も「東方不敗」を彷彿とさせる容姿で、ハオと殴り合うシーンはまさに『Gガンダム』の師弟対決そのもの。こうした『Gガンダム』と、同じく料理モノから『ミスター味っ子』、『北斗の拳』に『ジョジョの奇妙な冒険』など、数々のマンガ・アニメ作品の要素がふんだんに盛り込まれていたのです。
本作はストーリーモードにおけるイベントパートの比重が大きく、料理アクションもシステム面の問題で荒削りだったかもしれません。しかし裏を返せば、少年マンガ風味を帯びつつもシュールさを隠せない作画に実力ある声優陣の熱演が加わり、豊富なパロディネタが結果として『クッキングファイター好』を類に見ない作品へ昇華させたのではないでしょうか。万人ウケする名作とはいかなくとも、遊んだユーザーの心にインパクトを与える”バカゲー”であり、『マール王国の人形姫』や『魔界戦記ディスガイア』を後に生み出した「日本一ソフトウェア」のブランドを語る上で外せない一本になったと筆者は記憶しています。
(龍田優貴)
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