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東日本大震災から13年、三陸鉄道は今 人口減の中、乗客数は?「震災を気にかけながら鉄道の旅楽しんで」 #知り続ける

まいどなニュース / 2024年3月8日 8時0分

海が美しい白井海岸ー堀内駅間を走る三陸鉄道の列車(岩手県普代村)=三陸鉄道提供

 東日本大震災から11日で13年を迎える。地震と津波で大きな被害を受けた三陸鉄道の今はどうなのか。新型コロナウイルスの5類移行で観光客は増えたのか。過疎化への対策はどう考えているのか。今年開業40年を迎える三陸鉄道の石川義晃社長(62)に聞いた。

 三陸鉄道は岩手県北部を走る第三セクターの鉄道会社だ。2011年の東日本大震災発生時には、地震や津波の被害により、北リアス線71キロ、南リアス線36・6キロの全線で運転を見合わせた。全線運転再開は2014年のこと。その後2019年にはJR東日本から山田線の一部区間が移管され、現在は久慈(岩手県久慈市)-盛(大船渡市)のリアス線163キロを運営している。

観光客は増えたか

 震災から13年、新型コロナウイルスの5類移行から1年弱を迎える。2022年度の三陸鉄道の乗車人員は61万人だったという。2023年度の三陸鉄道の利用者は観光客の回復などもあって増えたのだろうか。

 石川社長「本年度の乗車人員は2022年度より若干増える見通しではあります。観光客は増えていますがコロナ前には戻っていません」

 山田線の移管によるリアス線全線開業やラグビーワールドカップの釜石市での試合開催に沸いた2019年度の乗車人員は90万8千人だった。しかし、コロナ禍以降の乗車人員はその3分の2程度の60万人程度にとどまっている。

こたつ列車、洋風こたつ列車は予約多く

 厳しい中、三陸鉄道は県外からの誘客を進めようと、社員や住民が東日本大震災の被災当時の記憶やその後を語る「震災学習列車」をはじめ、車内に置かれたこたつで飲食できる「こたつ列車」「洋風こたつ列車」などを走らせている。

 「震災学習列車は全国の小、中、高生や社会人の方に使っていただいています。2022年度、約1万2000人の利用がありました。本年度の利用者は1万人を超えてくるはずです。こたつ列車、洋風こたつ列車は予約が取れないくらいでありがたいです」

 さらに2023年には岩手県が舞台のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」の放送10年を迎えた。これを記念し、登場人物のイラスト入りラッピング列車が運行された。

 「『あまちゃん』ファンのみなさんがクラウドファンディングをしてくださいました。金額は当初の目標額を超えて800万円近く集まりました。出発式にはあまちゃんに主演したのんさんが来ていただきました」

開業40年で乗り放題切符

 今年、2024年は三陸鉄道の開業40年にあたる。40年を祝い、さまざまな企画が計画されている。

 「開業日の4月1日には記念列車を走らせます。4月13日には宮古市で記念式典を開きます。この日限定で乗り放題の切符を40年にちなみ400円で発売します」

 こうしたイベントで2024年度は一時的に乗客の増加が期待できるかもしれない。しかし、その後はどうするのだろう。

 「これまでの40年を振り返り、これからの三陸鉄道を続けていくためには、それなりの仕組みを考えていかなければいけないと思っています」

課題は人口減少

 大きな課題は人口減少だ。沿線の大船渡市の場合、震災前年の2010年には4万737人あった人口は2020年には3万4728人になった。久慈市などでも同様に減少している。

 「三陸鉄道の場合、一番のお客さまは高校生です。地域の高校生が10年で約4割減りました。高校生の数は15年先まではもう人数が決まっているわけです。人口減少はこれからも進んでいきます」

収益性よりは…

 打開策はあるのだろうか。石川社長は「黒字」「赤字」といったことにとらわれない視点が重要だという。

 「収益性というよりは、ウェルビーイング(住民の幸福度)の向上を目指さなきゃいけないんじゃないかと考えています。採算性のことを考えると赤字で便数を減らすしかないという話になって、どんどん不便になっていく。不便になると、またお客さんが減る、という負のスパイラルに入ってしまう。鉄道は社会生活を営むベースになるという考えのもとに戦略を立てないといけないのです」

 苦境が続く三陸鉄道だが、岩手県外の人々ができることはあるだろうか。その一つとして震災学習列車への乗車を呼びかける。

 「自然災害は日本全国で毎年あります。災害を人ごととして考えるんじゃなくて、身近な問題として考える機会にしてもらいたいです」

三陸に来ることが支援に

 三陸鉄道の沿線では震災の爪痕や復興の現状を学ぶことができる。だが沿線一帯は食や風景などの魅力にもあふれている。

 「鉄道の旅は楽しいんですよね。こたつ列車では弁当が食べられますし、お酒も飲めます。4人で一つのテーブルを囲む旅って楽しいんです。また伝統芸能がすごく多い地域ですし、素朴な人柄を感じてリフレッシュするのもいいと思います。震災のこともちょっと気にかけながらも、やっぱり楽しんでいただくことが大事です。来ていただくことが最終的には地域の振興あるいは復興にもつながると思っています」

(まいどなニュース/京都新聞・浅井 佳穂)

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