暇つぶしに作った”間違い探し”に反響 全部「老人と海」に見えるけど…文芸翻訳者のクイズに様々な声、正解は?
まいどなニュース / 2024年4月2日 20時15分
ヘミングウェイの最高傑作ともいわれる小説「老人と海」のタイトルを使用した「まちがい探し」クイズが「X」にポストされました。「老人と海」のタイトルが12列×5行並んでいる中に一つだけ「まちがい」が紛れ込んでいるようなのですが…!?
クイズを見た人たちからは、
「老人と海老、人と海老、人と海老、人と海老、人と海」
などという混乱の声や、
「そろそろ桜の季節ですよ。」
というツッコミも寄せられたなか、
「The old man and …」という英文と共に「梅」の画像を添えた返信や、
「老人と梅」
とズバリ正解を答える声も届き、リプライ欄は楽しい雰囲気につつまれました。
出題者は、今年の1月末に角川文庫から発売された、同書の新訳を手がけた文芸翻訳者の越前敏弥さん(@t_echizen)のアカウントです。
「すぐに『老人と梅』が頭に浮かんだ」
クイズに「疲れたので、まちがい探しクイズを作ってみました。」という一文を添えてポストした越前さんにお話を聞きました。
――あらためて「クイズ」を作成しようと思ったきっかけを教えてください。
締め切り間際で大変なときでしたが、人間、そういうときほど目の前の大事なことから逃避したくなるものです。インスタでときどき似たような「まちがい探しクイズ」が出てくるので、自分も何か作れないかと以前から思っていました。
――「老人と梅」という文言はどうやって思いついたのでしょうか?
どうせなら、自分の最近の訳書のタイトルでと思い、まずは『オリンピア』で考えましたが、全部カタカナなのであまりおもしろくない。で、『老人と海』でどうかと考え、比較的すぐに「老人と梅」が頭に浮かびました。これならけっこう見間違えそうだし、楽しんでくれる人もいそうだし。
「自分ではこういうまちがいをしたことはない」
――失礼ながら、あるいは翻訳作業中に本当に間違われたこともあった、とか…?
自分ではこういうまちがいをやったことはありませんでしたが、ちょっと検索したところ、書誌情報のたぐいで「老人と梅」と書かれているサイトを見つけて、「ああ、やっぱりいたか」と同情しました。作った本人はいまも気づいてないんだろうなあ。
――投稿に様々なコメントが寄せられました。
暇つぶしではあったものの、アップするときには字間調整を何度もやりなおすなど、それなりに工夫したので、反応がよくてうれしく思いました。「老人と海老」や「人と海老」については自分では予想していませんでしたが、それについて書いてくれた人がずいぶんいましたね。自分でもだんだんそう見えてきました。
新たな物語が爆誕!?
――全く別の新しい物語が(笑)。
高校の同級生でAIの専門家がいるのですが、そいつがChatGPTの有料版で短編小説『老人と梅』をイラスト入りで作って、送ってくれました。梅が大好きな妻に先立たれた老人のとても悲しいお話でした。自分でも無料版で作ってみましたが、なかなかのものができましたよ。まあ、いかにもという感じの話でしたが。あとで知ったのですが、かなり前に、いしいひさいちさんが同名のパロディ作品を作っていらっしゃったようですね。読んでみたいです。
新訳の読みどころは
さらに担当した「老人と海」の新訳について「自分自身は、若いころにはこの作品のよさがさっぱりわからなかったのですが、いま読むと、短い中に人生のすべてが凝縮されているすばらしい作品です。今回の新訳では、5つのポイントで新しい試みをしていて、それについては巻末のあとがきにくわしく書いたので、よかったら読んでください」と読みどころを話す越前さん。不朽の名作「老人と海」を未読の人はこの機会に手に取ってみてはいかがでしょう。
【越前敏弥(えちぜん としや)さんプロフィール】
文芸翻訳者。代表作はダン・ブラウン著「ロバート・ラングドン教授シリーズ」(KADOKAWA)、古典ミステリの大家エラリー・クイーンの「Xの悲劇」(KADOKAWA)の新訳など多数。本年1月末に角川文庫より刊行したアーネスト・ヘミングウェイの「老人と海」の新訳を手がけ、主人公の「老人」の相棒であるマノーリンを「少年」ではなく「若者」とする解釈で古典に新たな気づきと魅力を吹き込んでいる。
(まいどなニュース特約・山本 明)
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