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<デジタルサイネージ広告って本当のイイの?>2015年秋からの新型JR山手線で「中吊り広告」が撤廃

メディアゴン / 2014年11月18日 0時8分

岩崎 未都里[ブロガー]

* * *

メディアやテレビ関係には、「アノ、名プロデューサー様が?!」といった人が、意外にも「電車移動好きな方」が多くて驚かされます。「鉄道好き」で有名なタモリさんも、「笑っていいとも!」が終了したおかげで「昼前のJR山手線に乗れる」ということを喜ばれていたそうです(最近はすっかり飽きてしまったようですが)。

メディア業界の重鎮やビッグネームは「送迎付きが当たり前」・・・のようなイメージがありますから、公共交通機関なんて使わないだろう、というちょっとした先入観というか、偏見を持つ人は少なくないはずです。

しかし、電車に乗ると、そこで得られる情報量は非常に多いので、メディア業界人にとっては、一般視聴者の感覚や流行、話題、嗜好性を知るためにも、「電車移動」は大きなメリットがあるのではないでしょうか。

JK(女子校生)の会話や服、いじっているスマホ、読んでいる雑誌、バッグに「バッグより大きな人形」を強引に付けてる女の子・・・などなど。実際に「人と情報」が集まっている現場にいなければ分からないことは少なくありません。電車はその代表です。電車に乗り込んで周囲を見回すだけで、「流行や話題」が一目瞭然になり、とても面白いですよね。

ちょっと下世話ですが、筆者も電車内観察はいつも楽しませてもらっています。スマホの電池が切れた時も、電車内の人の会話に耳をそばだてるだけで、20~30分ぐらいは平気で潰せてしまいます。「この服装・メイク・バッグの大きさからして間違いなく表参道まで行かずに渋谷で降りる!」などと、乗客観察から「ひとりクイズ」をすることでも楽しめます。

なかでも、天井からヒラヒラしてる中吊り広告は、つい目を惹かれる方も多いはず。女子である筆者は「男性向け週刊誌」を読む機会がないので、見出しを眺めるだけでもちょっと満腹感に浸れます。

電車の中吊り広告が、実際に社内に中吊りされている期間は2~3日だそうですが、広告としての即効性が高いので、新商品やキャンペーン、雑誌の発売などには最適です。広告の中でも注目されるメディアの一つである所以ですね。なかには「中吊り広告」から習慣的に情報を得る乗客もいるので、話題づくりのツールとしても有効で、重宝している人は多いはずです。

ところが・・・。

来年2015年の秋からデビューする予定の「新型・山手線E235系」には、なんと!中吊り広告がありません!その代わりに、1両あたり20か所に約20インチの液晶画面「デジタルサイネージ」が設置され、動画のコマーシャルやニュースが流されるそうです。[註]

電通が発表した『2013年 日本の広告費』でも、2013年の交通広告は前年比1.5%増の2004億円。増えているのは新設や増設が続いている「デジタルサイネージ」で、なかでも車内ビジョンの稼働率は高いと言われてます。

「デジタルサイネージ」の場合、スペースが決まっている中吊り広告と異なり、1つの画面に多くのクライアントを入れることが可能ですから、広告費用も面積が必要となる「中吊り広告」よりも広告費が安いのでは?と思い、調べてみたところ、予想外にそうではありませんでした。

デジタルサイネージの広告費は「スポットCM15秒で7日間で430万円」。中吊り広告費は「B3サイズで2日間で436万円」ですから、それと比較すると結構微妙な金額です。しかし、売りゆきは・・・と言えば、「デジタルサイネージ」が現時点で右肩上がりになっているようです。

筆者の個人的な感覚からすれば、「中吊り広告」の方が「液晶動画」よりも、じっくり読めるような気がするので、移動中の広告・情報源としては、適しているように思います。自分で読みたい広告探せるので、車内移動しても見て回ることさえあります(そういう人、多くないですか?)。それに対して、「動画広告」は「読みたい情報」を乗客(=視聴者)が「受け身」で待たなくていけないので、移動中の電車内ということを考えると、イライラさせられます。他の広告と比較したり、俯瞰することもできません。

電車内デジタルサイネージに対して「これはちょっと困るな」の第一位は、移動している「電車自体」の情報を得るために、数秒(あるいはそれ以上)を耐えて待たなければならない、ということです。

 「次の駅はわかってるの!次の次の駅も教えて?!」
 「一体今どこ走ってるの?」

次の駅名が表示されるのを待ってる間に、目的駅に到着してしまい、慌てて走り降りる・・・なんて経験をした人は少なくないはず。

もちろん、デジタルサイネージが悪い・・・と言うわけではありません。渋谷のスクランブル交差点の巨大スクリーンなどは、ちょっとした「屋外シアター感覚」ですから、思わず見入ってしまうこともあります。もちろん、この場合は、移動中の電車ではありませんので、情報が受身でも気になりません。ようは「場所と内容」の熟慮が必要であると思うわけです。

右肩上がりの電車内デジタルサイネージ広告。効果的な部分も多々あるとは思いますが、いきなり「中吊り広告」が撤廃されてしまうと、従来の多くの「中吊り広告ユーザー」は困惑してしまうように思います。目新しいことに飛びつくだけでなく、それぞれ長所と短所を活かした利用はできないものでしょうか。

[註]デジタルサイネージ:Digital Signage=電子看板。

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