トヨタ 新型ヤリスがひとり勝ちのコンパクトカー市場、同じトヨタの“パッソ”はどうなった!? 2020年度はデビュー時販売台数の半数に
MōTA / 2021年5月10日 18時35分
現在、200万円以下で購入出来る新車といえば、軽自動車以外ではコンパクトカーが挙げられる。2020年度に10万台以上を販売した新型ヤリスを始め、日産 新型ノートやホンダ フィットなど各メーカーの代表的なモデルが勢揃いし、熾烈な競争を繰り広げている。 そんな中、トヨタにはもうひとつのコンパクトカー「パッソ」がある。しかしパッソは2016年の現行型登場時に比べ販売台数も半減。その理由は、ヤリスやルーミーなど自社内ライバルの躍進に加え、トヨタ販売統合の影響が大きい。 15年以上の歴史を持つトヨタ最小のコンパクトカー、パッソについて改めて検証してみよう。
トヨタ車最小サイズで2004年に登場! ヴィッツとの絶妙なすみ分けで直接の競合はせず
「トヨタ パッソ」は、トヨタとダイハツの共同開発により誕生したコンパクトカーだ。生産はダイハツで行われる。それまで売られていた「デュエット」(こちらは「ダイハツ ストーリア」のOEMモデルである)に代わり、2004年に誕生した。
当時トヨタでは「トヨタ店」「トヨペット店」「トヨタカローラ店」「トヨタネッツ店」の4つの販売チャンネルが用意され、それぞれに専売モデルが用意されていたが、コンパクトカーに関しては1999年に登場したネッツ店専売モデル「ヴィッツ」とパッソだけという状況。
欧州での現地生産を行う世界戦略車でもあったトヨタ製のヴィッツは、コンパクトながら大人4人が乗れる広い室内や、欧州車テイストのスタイリッシュな内外装デザインが特徴。3ナンバー車など上位モデルからのダウンサイジングユーザーも取り込み、人気を集めていた。
軽自動車への逸脱を防ぐ役割も果たしていたパッソ
いっぽうパッソは、当時売られていたトヨタ車最小のサイズという特徴に“プチトヨタ”の愛称を与え、宣伝などで訴求。車名とプチトヨタを連呼する軽快なCMソングと共に、一気にそのネーミングを広めていった。
価格帯もヴィッツよりも安く、軽自動車に流れつつあった当時の若者ユーザーの取り込みを図るなど、ヴィッツとヤリスの2台の間には、絶妙なすみ分けが図られていた。
2020年は全盛期の半数以下の販売台数に! 販売店チャンネル統合に加え、ルーミー登場も影響大
コロナ禍の影響も多く、また発表後かなり経っているためあくまでも参考値だが、2020年度のパッソ販売台数は3万3276台(19位)と半数近くまで落ち込んでいる。
この間に何が起きたのだろうか。
2020年春にトヨタの4つの販売チャンネルが統合され、各専売モデルが消滅し併売されることに
トヨタでは2020年、大きな販売改革が図られた。トヨタ店、トヨペット店、トヨタカローラ店、トヨタネッツ店の販売チャンネルが統合され、全店で全取り扱い車種が販売できるようになった。
4チャンネル向けそれぞれに用意されていた兄弟車も全店扱いされるようになり、アルファードとヴェルファイアのように、人気差が明確になったモデルも多い。
2020年度のパッソ販売の落ち込みは、やはりこの販売統合の影響が大きそうだ。片や新型ヤリスが2020年度に10万台以上を売ったことを考えると、もともとパッソを扱ってきたトヨタカローラ店を含め、コンパクトカーの販売はヤリスに特化していたこともうかがえる。
パッソをベースにしたコンパクトハイトワゴン「ルーミー」の登場も影響大
2016年、現行型パッソが登場しておよそ半年後の11月に、パッソのプラットフォームを活用したコンパクトハイトワゴンの「トヨタ ルーミー/タンク」の兄弟車が誕生した。こちらもダイハツからのOEMモデルである。
後席両側にはスライドドアを備え、コンパクトなサイズながら非常に実用性は高く、価格帯も200万円以下と安かった。これまでパッソが担っていた軽への顧客逸脱を防ぐ役割もしっかり引き継いだ格好だ。
2020年の販売統合に対し、いち早く動いたのもこのルーミー/タンクだった。
2020年5月にはタンクをモデル消滅させ、ルーミーに統合。2020年9月に実施されたマイナーチェンジの効果も相まって、2020年度の販売台数は10万6579台。ランキングは5位に食い込んだ。
ヤリスやルーミーが売れ行きを伸ばす中、パッソは存在感を急速に失ってしまった。
このまま現行型で消滅してしまうのか、また新たな役割を持ってフルモデルチェンジを実施するのか、今後の行方にも注目したい。
[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダ トオル]
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