アラフィフおっさんが心ときめかせた幻のスポーツカー 日産MID4とダイハツX021
MotorFan / 2018年8月15日 7時0分
世の中にスポーツカーは数あれど、なかには幻に終わったクルマもあります。けれど、幻に終わったからこそ心に残るというもの。筆者にも、かつて東京モーターショーの煌びやかなステージで魅せられた、忘れられないスポーツカーがあります。ここではそんな幻のスポーツカー3台を紹介します。
日産が本気でつくったミッドシップスポーツカー、MID4
1985年、中学生だった筆者は当時晴海で開催されていた東京モーターショーで、1台のクルマに心奪われました。それが、日産MID4です。ミッドシップの本格スポーツカーというだけでもスゴイことでしたが、このクルマのポイントはMID「4」という名前の通り、4WDを採用していたのがポイントです。今でこそスポーツカーに4WDというのは珍しくありませんが、当時4WDのスポーツカーなんてポルシェ959があったくらい。そうした意味でも、先進性に溢れたスポーツカーでした。
エンジンは当時Z31のフェアレディZなどに搭載されていた、3.0リッターV6エンジンのVG30をDOHC化したVG30DE。パワーは230psと今でこそ大したものには感じませんが、85年当時は同じVG30のSOHCターボであるVG30ETが230psで国産車最強だった時代。ターボに頼らず、NAで230spをマークするというのはスゴイことでした。
モーターショーのコンセプトカーはカタチだけの「ハリボテ」であることも少なくありませんが、このMID4は走行可能。秋に富士スピードウェイで行なわれた世界耐久選手権、WEC JAPANでもペースカーをつとめるなど、高い完成度を誇っており、市販も間近いのでは? と噂されていました。
とにかくMID4の登場は筆者には衝撃的で、帰りに晴海からの水上バスの列に並んでいるときも、友人とMID4について熱く語っていたのを憶えています。当時MID4がどのくらい注目されていたかというと、コンセプトカーでありながらプラモデルが発売されてしまったくらい。もちろん筆者も買ってつくりました。
このように国内外で注目を集めたMID4ですが、市販化は行なわれなかったもののさらに開発を進め、次回1987年の東京モーターショーで、MID4−Ⅱに進化します。
その後の日産スポーツモデルの礎となったMID4-Ⅱ
1987年の東京モーターショーには、さらに洗練された姿でMID4-Ⅱが登場しました。筆者のお目当てももちろんコレで、開場と同時に日産ブースにダッシュして、最前列でかぶりつきながら眺めたものでした。
スタイルはスーパースポーツカーらしい流麗なフォルムになり、よりスポーツカーとしての完成度を高めたMID4-Ⅱ。その中身の進化度合いも優れたもので、エンジンは先代MID4のVG30DEをツインターボ化したVG30DETTとなり、パワーは330psにまでアップします。エンジンのマウント方法も先代の横置きから縦置きに変更。サスペンションも前後ストラットから、フロント:ダブルウィッシュボーン、リヤ:マルチリンクへと進化しています。東京モーターショー後には試乗会も行なわれ、当時の自動車雑誌の誌面を賑わせました。当時まだ免許のなかった筆者はその記事を読んで、クルマを運転する感覚すらわからないながらも、妄想を逞しくしたものでした。
MID4-Ⅱの注目度は先代にも増して高く、これもプラモデル化されました。MID4、MID4-Ⅱのプラモデルは2台とも今でも入手できます。当時の熱狂振りに思いをはせながらつくってみるのもいいのでは。
このように、いつ市販化されてもおかしくない完成度を見せたMID4-Ⅱですが、結局市販化は見送られることになりました。ですが、完成車という形では世に送り出されなかったものの、エンジンやインパネデザインはZ32フェアレディZに。ステアリングはR32スカイラインに。マルチリンクサスペンションは日産901活動の一環に…というように、MID4-Ⅱのエッセンスはその後の日産車に受け継がれているのです。
ちなみにMID4びいきであった筆者は、その後発表されたホンダNS-X(発表当時はハイフン入りのNS-X表記でした)を見て「MID4-Ⅱのパ○リじゃん…」などど不埒なことを思ってしまったのは秘密です。
まるでフォーミュラカーのようだったダイハツX021
時はバブル絶頂期。スポーツカーもGT-RやS13シルビア、RX-7、MR-2、NSXとまさに黄金時代。まわりの友人もFC3SやR32タイプMなどを買い、隣に乗せてもらっては羨ましがっておりました。ただFC3Sのリヤシートに乗ったときだけはカンベンしてくれと思いましたが。
このころ筆者は夢追い人(世間一般では浪人と呼ぶらしい)でして、クルマを買うなんてとてもとても状態……ですが、1991年の東京モーターショーであるクルマに心を奪われました。
そのクルマとはダイハツX021。コンパクトなオープン2シータースポーツで、エンジンこそ1.6LのSOHCですがポイントはボディ。軽量なのはもちろん、インボードタイプのサスペンションを採用し、まるでフォーミュラカーのようでした。
丸目のファニーなルックスに、中身はフォーミュラばりのガチシャシー。このジキルとハイド的な2面性に惚れ込んでしまったのです。その思いが高じて、近所のダイハツディーラーに行き、市販予定はないのか、などと聞いたあげくに、X021が如何に優れたスポーツカーであるかをディーラーマンに対して滔々と語るという、今思うと若気の至りここに極まれりな恥ずかしい行動に出てしまったものでした。
結局X021も市販化されることはなかったのですが、21世紀になって製作を担当した童夢の倉庫で発見され、レストアして走らせた、というニュースが流れました。あのつくりは童夢だからこそかぁ…などと得心したものです。
ここまでおっさんの思い出話を語ってしまいましたが、やはりスポーツカーというのはクルマ好きの心を躍らせてしまう何かがあります。この先もそんなスポーツカーの登場をワクワクしながら待ちましょう。
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