星は誕生時にくしゃみをする? 九大などが、「磁束問題」解決のヒントを観測
マイナビニュース / 2024年4月12日 16時58分
九州大学(九大)と国立天文台(NAOJ)は4月11日、地球から約450光年という、星の誕生現場としては最も近くにある「おうし座分子雲」の分子雲コア「MC27」に潜む原始星をアルマ望遠鏡で観測した結果、同星を取り巻く「原始星円盤」(「原始惑星系円盤」の前段階)から数天文単位の大きさを持つ「棘(とげ)」のようなものが存在していることを観測。円盤の縁に磁力が集中した際に重力中心の原始星から外側に向かう浮力が働き、突発的な爆発現象のようにして短時間で磁束が放出されることから、ヒトの「くしゃみ」にも似た現象であることがわかったと共同で発表した。
同成果は、九大大学院 理学研究院 地球惑星科学部門兼国立天文台アルマプロジェクトの徳田一起学術研究員/特任助教らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。
宇宙空間には、水素を主とする星間ガスが漂っており、それらが一際豊富に存在する場所が分子雲である。その中でもさらに濃度が増した領域が分子雲コアと呼ばれ、太陽などの星の卵となる。
分子雲コアのガスは部分的に電離しており、ガスは磁場とお互いに影響を及ぼし合いながら運動することがわかっている(ガスと磁場は(強く)結合している)。そのことから、ガスは磁力線に貫かれていると考えられており、分子雲コアが収縮して原始星が誕生する際には、磁力線が束ねられた「磁束」も一緒に持ち込まれる。
しかし、この磁束を全部持ち込んでしまうと、現在の太陽や知られている原始星が持つものよりも何桁も大きい磁力(1000万ガウス)が発生してしまうため、星が誕生する過程で磁束を外に捨て去る必要があるという。磁束がどのようなメカニズムで捨て去られているのかは、現時点ではさまざまな議論があり、「磁束問題」と呼ばれている(星が誕生するには、分子雲コアの回転の勢いを捨て去る「角運動量問題」と、磁束を捨て去る「磁束問題」という、2つの大きな問題を解決する必要がある)。
磁束問題に関して、従来は重力で原始星にガスが集まる時間と同程度の長い時間尺度で、円盤を通して一定の割合でじわじわと磁束が抜かれて磁力が弱まっていくという考え方が主流だった。しかし研究チームが今回、アルマ望遠鏡を用いて、おうし座分子雲の分子雲コアMC27に潜む原始星に対する、非常に高い解像度の観測を行ったところ、従来の考え方とは異なる、一気に磁束を捨て去ったと思われる特徴を発見。当初は予想されていなかった、原始星周囲の円盤から数天文単位の大きさを持つ棘のようなものがあったという。
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