広島大、純国産ゲノム編集ツールを高機能化し独自ツールを開発
マイナビニュース / 2024年4月18日 6時45分
広島大学は4月16日、構造モデリングに基づく改変により、同大学が開発した純国産ゲノム編集ツール「Zinc Finger(ZF)-ND1」の高機能化に成功したことを発表した。
同成果は、広島大 ゲノム編集イノベーションセンターの片山翔太特任准教授、同・山本卓教授、広島大学 医系科学研究科の野村渉教授、産業技術総合研究所の渡邊真宏主任研究員、同・加藤義雄グループ長らの共同研究チームによるもの。詳細は、さまざまな分野の基礎から応用までを扱う学際的な学術誌「Advanced Science」に掲載された。
ゲノム編集ツールは遺伝子細胞治療のための強力なツールである。現在は、第3世代のCRISPR-Casが最も多く利用されているとされ、その次に利用されているのが第2世代の「TALEN」(2010年開発)とされる。そのほか、1996年に開発された最初(第1世代)のツールであるため、現在ではあまり利用されていないが「ZFN(Zinc Finger Nuclease)」もある。
CRISPR-CasやTALENは作製の難易度が容易であり、所要時間も数日で済み、標的配列の認識も前者が20塩基、後者が30~40塩基といった具合。それに対しZFNは、難易度はかなり困難で、所要時間は2か月、標的配列の認識も18塩基といった点で世代の差による性能差が出ており、それらが現在ではあまり利用されていない要因となっている。
しかし、ZFNには大きな利点がある。CRISPR-CasやTALENの基本特許が2030年以降まで継続しているため、しばらくは医療分野への使用には高額なライセンスフィーとして年間100億円以上が必要なのに対し、ZFNは基本特許がすでに切れているので現在はライセンスフリーで使用できるという点だ。
広島大では以前に、ZFNのDNAを認識する酵素ZFに、独自に開発したDNA切断酵素「FirmCutND1」を組合わせることにより、純国産のゲノム編集ツール「ZincFinger-ND1」を開発。しかし、機能的なZFNを構築し、そのゲノム編集効率を向上させることが非常に困難だったという。
ZFNの作製は、従来、無作為に並べ替えたZFから標的DNAに結合するZFを取ってくるスクリーニングによるものが主流だった。しかし、機能的なZFNを作製するには2か月ほどかかるなど、かなりの時間と労力を必要とするものだったという。また、ZFを遺伝子工学的に連結させる手法「Modular Assembly」も考案されたが、3-finger ZFN(ZFを3つ連結)を作製しても、機能的なZFNが得られる確率は5%程度であり、作製効率が悪く使い物にならなかったとする。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
がん抑制に重要な役割を果たす転写伸長マークが導入されるメカニズムを解明
Digital PR Platform / 2024年4月30日 10時0分
-
九大、卵子と精子のエピゲノム修飾「DNAメチル化」に関する謎の一端を解明
マイナビニュース / 2024年4月25日 20時33分
-
雄ヒナ殺処分の抑止へ。卵が孵化する前に性別を判定するeggXYtの遺伝子編集技術
Techable / 2024年4月18日 18時0分
-
サルからヒトへ、古代DNAが明かした人類のルーツ 遺伝子配列の変化をさかのぼると祖先がわかる
東洋経済オンライン / 2024年4月7日 16時30分
-
名大などが細胞と共生可能な「センダイウイルス」を発見、生態解明に貢献
マイナビニュース / 2024年4月3日 17時36分
ランキング
-
1ジョージア大使、松屋にポーランド風ハンバーグ登場で心配「国際情勢に影響しかねない熾烈な戦いになりそう」
iza(イザ!) / 2024年5月1日 13時55分
-
2パイオニアの車載スマートデバイス「NP1」を試して感じたイイところ、ムムムなところ 音声操作前提のドラレコ&カーナビ
ITmedia Mobile / 2024年5月2日 6時5分
-
3Androidアプリに悪意あるコードを追加して再配布するマルウェアに注意
マイナビニュース / 2024年5月2日 8時31分
-
4パッと見で分からない細かいこだわりも バッファロー開発陣に聞くWi-Fi 7ルーター「WXR18000BE10P」の秘密【後編】
ITmedia PC USER / 2024年5月1日 15時5分
-
5「そっち使うの?!」「これは天才」 さびだらけの鉄くぎをぐつぐつ煮込むと……? DIYに役立つ“まさかの使い道”が200万再生
ねとらぼ / 2024年5月2日 12時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください