日本の建設産業、これまでとこれから
マイナビニュース / 2024年9月18日 10時0分
「製造業と比べてデジタル化が進んでいない」と言われ続けると、怒られているみたいな気持ちになってしまいますよね。しかし、実際、現場では、LINEのようなメッセンジャーツールでやりとりしたり、情報共有したりしています。
蟹澤: 確かにおっしゃる通りですね。そもそも建設には「一品生産」「現場生産」という大量生産が可能な製造業とは全く違う難しさがあります。そのため建設産業では昔から、デジタルの力で何とかできないのかという発想がありました。
すでに1990年代から、3Dデータの活用やタブレットのような端末の導入にも積極的でした。デジタルの導入が難しいゆえに進んでいた部分もあったわけです。
志手: そうなんです。その上で指摘したいのは、「ムダな最新技術の導入」も多々あったことです。私自身、ゼネコン技術研究所出身なのでよくわかりますが、ゼネコンの研究部署は、新しい技術開発をしなければ評価されない世界です。なので、個別分散的にデジタルツールや効率化のためのシステムを開発して、社内で導入を促してきた歴史がある。
しかし、「最新技術の導入」ありきで、現場の視点が足りていない。現場はそんなものを求めていなかったり、使えなかったりするので、結局、普及しない。過去、そんなことをずっと繰り返してきました。
ひるがえって、建設現場はDXが遅々として進まない、と指摘されるのは、現場のほうに過去のトラウマがあるからではないでしょうか。「また面倒なことだけさせるのか」といった思いがある気がします。
野原: 本当に現場のためのツール、DXなのか、と疑心暗鬼なわけですね。
志手: そう思います。わかりやすい例が、過剰なセキュリティだと思いますね。建設現場には、いろんな会社のいろんな人が集まります。バラバラの彼らが情報共有のツールを入れようとすると、必ず「セキュリティ上の問題があるから使ってはいけない」とか「セキュリティ対策のため二重パスワードをつけなくてはいけない」となるわけです。
けれど、速さと効率性を求められる現場で、そんな面倒なことを要求されたらイヤになるに決まっています。そもそも「これはセキュリティで屈強に守るべき情報なのか?」と見直す必要もある。例えば、職人のAさんとBさんの「作業が終わりました」「では、私が現場に入ります」といったやりとりは、本当に漏れては困るのでしょうか?
野原: おっしゃる通りですね(笑)。では、BIM(※2)についてはいかがでしょうか? 企画段階から3次元で可視化でき、あらゆる設計段階から施工、維持管理まで一元管理できる利便性は、日本でも随分と知られてきたと思いますが。今後、どのように浸透していくと予想されていますか。
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