日本の建設産業、これまでとこれから
マイナビニュース / 2024年9月18日 10時0分
志手: まずは産業としてちゃんとすることですね。建設産業は中小零細企業が多いのです。つい最近まで、福利厚生も社会保険なども整備されていない会社がごまんとありました。親御さんからも就職活動の対象として見られるようになることが必要でしょう。
蟹澤: 以前、中小工務店の調査をしたら、半数くらいが就業規則も、労使協定にあたる三六協定もありませんでした。これではハローワークにも高校にも求人票を出せません。
かつては、「知り合いの息子さんを預かる」といった形の採用で人員を確保していた工務店が少なくありませんからね。公募して採用するという近代の労働制度に乗る必要があるでしょう。
野原: まずは、就職活動の土俵に乗らないと始まりませんね。
蟹澤: 古い頭の人たちの考え方を変えていく必要もあります。古い人たちの典型的な考え方は「建設業で働く人は稼ぎたくて来ている。だから休みたくないのだ」というものです。
しかし、今の若い人に、そんな人はほとんどいません。土日に出勤して稼ぐよりも、ちゃんと休みたいと思う人の方が圧倒的に多い。このような時代に即した働き方、処遇改善をしていくことも重要です。
そしてもう一つ、人間は最後はお金ではなくやりがいだという部分もある。マズローの人間の欲求5段階説でも、承認欲求よりも自己実現欲求の方が上ですからね。その産業の中で何を目標としていくのか。目標を立て、次々に達成していくことで自己実現欲求が満たされていきます。終身雇用の仕組みの中では、次は課長、次は部長と目標が立てやすいのですが、それは大企業の話です。中小企業が多い建設産業では目標が見えにくい。
野原: 確かに。それぞれが自分でキャリアプランを考えていく必要がありますし、それを実現するための仕組みが産業全体として必要ですね。
蟹澤: そこで、職人がいろいろな企業を渡り歩きながら、能力を磨いていくような仕組み、いわゆるジョブ型雇用に移行していくべきだと考えています。元来、日本の建設産業は優秀なので、竹中工務店でも、大成建設でも、鹿島建設でも、技術力はそれほど大きな差はないと言われています。本来、人が流動化しやすい産業ということです。職人や技術者が渡り歩くことは、それほど難しくないと思います。
実際、職人や技術者が渡り歩いたり、企業が受け入れたりするためには客観的な能力の評価基準みたいなものも必要になってくるでしょう。地方に行くと「ゼネコンである程度の経験を積んだら、次は役所に転職して発注側になる」といったルートができていますが、そうした職能によって将来のキャリアが見えるような仕組みを作っていくことが必要かなと考えています。
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