建設DXはどのように進化していくのか
マイナビニュース / 2024年9月26日 10時0分
野原: これまでだと、御社の技術者が大林組や大成建設の現場に入ることなど想定できなかったのではないでしょうか?
村上: ありえませんでしたね(笑)。
野原: 建設RXコンソーシアムの取り組みはたいへん面白い取り組みで、意義もありますね。もっとも、ゼネコン、特にスーパーゼネコンは、これまで技術を極めていくことを競われてきました。だからこそ研究所にもお金を使うし、研究員などを競って採用してきたわけですよね。各社がそれぞれ培ってきた技術を共有することが、独自性や競争力を失うことにつながるという危惧はなかったのでしょうか?
村上: 私も技術者ですので、かつては技術が会社の独自性を表す要素であり競い合える武器であると考えていました。しかしよく考えてみると、われわれは職人の使う技術で競い合っていても仕方ないんですよ。競い合うなら建築物で、作る建物で競い合わないといけない。技術は手段に過ぎず、目的は、いい建物を作ることですから。
技術を道具にたとえるとわかりやすいかもしれません。A社で作業をする時には、A社が開発した非常に便利なのこぎりを使えるのに、B社やC社の現場では、不便な昔ながらののこぎりしか使えないというのではなく、どの会社の現場でも、A社ののこぎりを使えるようになり、出来上がった建築物の出来で競い合おうというのが真っ当な競争であるはずです。
考えてみれば、これまでも技術があるから仕事が来たわけではない。いい建物を建設できるから仕事が来たのですからね。
野原: 建設産業にとって建設RXコンソーシアムは、大きな転換を促しそうな団体です。設立から同業の各社に参加をしてもらうまで簡単ではなかったと思いますが、設立に踏み切った契機は何だったのでしょうか?
村上: 建設産業に対する危機感に尽きます。ITの世界ではGAFAM(※2)のような巨大なグローバル企業が出ているのに、われわれの建設産業は昔ながらのやり方から全くと言っていいほど変化してきませんでした。
「現地現物の一品生産だからデジタル技術を入れられない」という言いわけを続けていたら、いつの間にか美味しいところを他業界に全部持っていかれてしまい、ややこしく時間がかかるところしか残らないんじゃないかという危機感から、「まずは集まって話をしよう」と動き始めました。
以前から各社の間では「協力しないといけないね」という話は出ていたのですが、じゃあ具体的にどうしようという話まで踏み込むきっかけがないまま時間が過ぎていきました。しかし他業界からの外圧を意識したことで、今のままではいけないねと一歩踏み出した形になったのです。
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