H-IIAロケット、最後の旅立ちへ - 四半世紀の想いが詰まった50号機が完成!
マイナビニュース / 2024年10月15日 13時21分
●H-IIAの生まれ故郷「三菱重工飛島工場」と、初飛行から23年の歩み
種子島の海と空が織りなす、刺すような青。その中でH-IIAロケットのオレンジ色は、強烈なコントラストを生み出している。オレンジ色はエネルギーやパワーの象徴とされるが、まさにそのとおりだろう。
H-IIAは、これまで数多くの衛星を打ち上げ、日本の宇宙開発において重要な役割を果たしてきた。そんな名機も、試験機1号機の打ち上げから23年を経て、まもなく歴史に幕を下ろす。
2024年9月25日、最後を飾る50号機が完成し報道陣に公開され、27日には種子島へ向けて出荷された。最後の打ち上げのときが、刻一刻と迫っている。
H-IIAロケットが生まれる場所で
H-IIAロケットは、愛知県飛島村にある三菱重工の飛島工場で製造される。名古屋駅から車で30分ほどの臨海工業地帯に位置し、周囲には他の工場や倉庫が立ち並んでいる。
ロケットを造っているからといって、なにか特別な見た目をしているわけではなく、そうと言われなければわからない、他の工場と変わらない外観をしている。
飛島工場はロケット専用ではなく、航空機部品なども製造している。ロケットは工場内の一画にある「第2工場」で組み立てられており、私たちが見学したのは、さらにその一部の「ロケット組立棟」という、その名のとおりロケット機体が組み立てられる建物である。
防じん服を着てエアシャワーを浴び、中に入ると、オレンジ色をした巨大な円筒形の物体――ロケットの機体が横倒しになり、所狭しと並んでいる光景が広がる。ロケット組立棟の広さは103m×30mほどであり、大型ロケットを何機分も並べる場所としては決して広いとはいえない。
H-IIAを構成している部品のうち、この工場で造られているのは第1段機体と第2段機体、そして両者をつなぐ段間部という部品で、これらを総称して「コア機体」と呼ぶ。ロケットエンジンや配管などの部品は取り付けられているが、ロケット機体の大半はタンクであり、工場の関係者曰く「ちょっとしたドラム缶」である。
だが、このドラム缶、もといタンクには、莫大なエネルギーを秘めた推進薬が詰め込まれ、それを燃やして、眩い光と轟音を伴い猛スピードで空を駆け上がり、秒速約8kmの軌道速度にまで達する。その事実を踏まえて眺めると、畏敬の念を感じ、とても冷静ではいられない。寝静まっているドラゴンに恐る恐る近づく、レベル1の冒険者の気分である。
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