ハドソン・モホーク『ランタン』インタビュー/Hudson Mohawke『Lantern』 Interview
NeoL / 2015年8月29日 15時50分
ハドソン・モホーク『ランタン』インタビュー/Hudson Mohawke『Lantern』 Interview
去る6月に、6年ぶりの新作となる2ndアルバム『ランタン』をリリースしたハドソン・モホーク。14歳で英国のDJ技術を競う英国のDMCでファイナリストとになった彼は、10代のころから英グラスゴーのアンダーグラウンド・シーンで注目を集めたプロデューサー/DJだ。簡単にキャリアを振り返ると、05年にデビュー・アルバム『Butter』をWarp Recordsからリリース、12年にはカニエ・ウェストらともコラボを開始し、彼のレーベルGOOD Musicと契約したほか『イーザス』(13年)などにプロデューサーとして制作参加。他にドレイクやPusshaT作品もプロデュースし、今やアメリカでもその名前と実力広く知られてる。
そんな彼の2ndアルバム『ランタン』は、彼らしい尖ったビートやサンプリングを駆使した曲と、ヴォーカルが参加しメロディー・メイカーとしての側面に驚かされる曲とが、交互に並んだ1枚になった。ヴォーカリストとして参加したアントニー・ヘガティやミゲル、ジェネイ・アイコらの心ふるわせる歌声とも相まって、ハドソン・モホークがいかに多面的で才能豊かなプロデューサーかを改めて実感させる1枚になった。
久々の来日となるフジ・ロックでは、バキバキのビート・メイカーぶりを前面に出しホワイト・ステージに集まった観衆を踊らせたハドソン。現在29歳の彼があの日の午後、答えてくれたインタビューをお届けしよう。穏やかで知性的、素直でありつつ洞察力を感じさせるその口調と言葉からは、音楽的にもキャリア的にも今後さらに彼が先へと羽ばたいていくであろうことを確信した。
ーー日本の夏は、暑くて驚いたんじゃないですか?
ハドソン「うん、えっと、スキーリゾートだと思っていたから、やっぱり雪が降ってるのを想像していて(笑)。ノー、でもスーパーナイスだよ(笑)」
ーーよかった。私、あなたの新作『ランタン』がすごく好きで。
ハドソン「ありがとう! ありがとうありがとうありがとう」
ーー初来日の時からあなたのDJを見に行ってたんですけど、その時期とは全く違う印象の、成長を感じさせるアルバムだったんですね。今回は、どういうことを考えて作り始めたんですか?
ハドソン「そうだな、多くの人に『2ndアルバムのほうが、1stアルバムを作るよりずっと難しい』って言われてたんだよ。でも実際のところ、このアルバムのほうが僕は作るのがずっと簡単に感じたんだ。なぜなら、気づいたんだ……自分はけっこうラッキーな境遇にいるんだ、って。つまり、僕は幅広い音楽が作りたいんだけど、それを聴いた人が(ネガティヴな口調で)『これはファックだ』とか『どうしてこういう作品を?』みたいな感じにならず、みんな総じて、僕の作ったものをちゃんと聴いてくれる。そういう状況って、とても幸運なことだよね。だけど……そうだな、最初のアルバムは、僕にとっては最初のレコードでもあるから、僕のハード・ドライヴにそれまで何年間もあった素材を一つにまとめればよかった。それって僕の視点でいうと、アルバムってものではないんだよね。むしろ、ミックステープ的というか。一方でこの『ランタン』のプロジェクトはもっと、全体像を持ったアルバムにしようと考えていたんだ」
ーーアルバムを通して聴いていると、まるでラジオを聴いているような、流れや物語があるような気がしたんです。ミュージックを詰め合わせた、というより流れを意識したソングがそこにある、というか。
ハドソン「うん、実際、それが僕らがやろうとしたことだったんだよ。たとえ今ではみんながアルバムを最初から最後まで聴くようなことをせず、トラックごとに聴くほうが一般的だったとしても、僕はそれぞれのトラック同士が流れを持つように自分でも感じられる、全体像のある作品にしたかったんだ。それこそさっき言ったように、全体的なリスニング体験ができるような。あと、曲ごとに聴くっていうのは言ってみればiTunes的なことだと僕は思うんだよね。レコードから自分の好きなトラックだけを買って聴くわけだから。その一方で、Spotifyっていうのは(アルバムの)全体を通して聴くことができる。そういう意味で、アルバムを通して聴く、というメンタリティが最近は再び戻ってきたように感じてるんだ」
ーーなるほど。ジェネイ・アイコやアンソニーの参加した曲はあなたのメロディーやソングを作る能力にハッとしました。こういう曲たちを書きたいという気持ちはいつごろから?
ハドソン「僕が、コラボレーション・ワークを前よりやるようになった頃かな。2012年とかそのあたりのことなんだけど。その頃、ベッドルーム・プロデューサーではなく、もっと全体的なプロデューサーというものになりたいと思うようになった。単なるビート・メーカーとかそういうものじゃなく、ね。人とコラボレーションするというのはやっぱりある種の心構えが必要で、なぜなら、彼らの視点というものも受け容れないといけない。自分の視点だけに固執して、他の人のオピニオンを受け入れないとかじゃなくてね。2人や3人の人の意見をミックスするテクニックを学ぶ必要がある。だから、僕はその時点から学びはじめて、このレコードではそれをより進めていきたいと思った。だから、そういう曲をレコードに含めることに決めたんだ。僕はいつも仕事をしたいと思っていたアーティストたちがいたし、このレコードのヴォーカル・トラックにフィーチャーされてもいるんだけど、昔は、僕はただインターネットでアカペラをダウンロードして、そこから曲を作るしかやり方がなかった。一度も実際には、これらの曲を作るときに同じ部屋で一緒に作ったりはしてこなかったんだよね。だから、誰かのアカペラを盗んでいたのと(笑)、今回は実際にコラボレーションした、という違いがあるね」
ーー人の声の魅力、って何だと思いますか?
ハドソン「僕にとっての魅力は、声を楽器として使う時は、世界的に素晴らしいヴォーカリストに頼む必要が必ずしもないこと。たとえば、僕は全く歌えないんだけど、自分の声をインストゥルメンタル・レコードに使うことが出来る。実はこれ、僕にとってはとても興味深いアプローチなんだ。つまりそれを、人間の声には聞こえないように完全に変えてしまって、いろんなサウンドにできる。すごく興味深い方法だよね。で、それと同時に、今回たとえばミゲルとかジェネイなどのような本当に素晴らしい声を持っている人と一緒にやることは、僕にとっては目からウロコが落ちるような経験だったよ。これまで、そういう素晴らしいヴォーカリストとの仕事をしたことがなかったから……アントニーもそうだよね。本当に、美しい歌声なんだよ。そういう人たちと一緒にやるのは、僕にとっては大きなインスピレーションにもなったよ」
ーーそうやって生まれた本作の、最後の曲のタイトルが"ブラン・ニュー・ワールド"であるのはとてもポジティヴな気がして、興味深く感じました。
ハドソン「うん、これは……僕の古い曲たちをかなりレファレンスした曲とも言えるんだ。なぜなら、つまり、サンプリングをベースにしていた頃のヴァイブがある。面白い話があってさ、この曲で使ってるサンプルの権利をクリアにしようとしたところ……80年代のUKのグループなんだけど、彼らの返事が『メンバーの一人の甥っ子にビートの作り方を教えてくれたら、権利を認めてあげる』っていう(笑)」
ーー(笑)面白いですね。
ハドソン「ね、だから『オッケー』って(笑)。だから、このアルバムではたくさんのメロディーも作ったけど、同時に、サンプルをベースにした音楽、という要素もアルバムを通して使いたかったんだ。最近は、もうそういうやり方をする人は少なくなったからね。なぜかというと、もしレコードでお金を儲けたいと思ったら、サンプルを使うこういうやり方は、本当にバカげたことだから。で、このレコードのいくつかの曲に関しても、サンプルを使用したことで発生した使用料のパーセンテージを考えると、やっぱり、多くの人が『自分はこういうやり方はしない』ってことになるだろうなと思う。だけど、僕はこの曲を使いたい、これを入れたい、となると……10%ぐらいしか自分には入らなくてそれ以外の権利は渡さないといけなくなる。でも僕は、ただそのサンプルを曲の中に入れたいだけから、それでもやるんだ」
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
文 妹沢奈美/text Nami Sezawa
Hudson Mohawke
『Lantern』
発売中
(WARP RECORDS/BEAT RECORDS)
beatkart: http://shop.beatink.com/shopdetail/000000001917/
amazon: http://www.amazon.co.jp/dp/B00UIVEMUU/
Tower Records: http://tower.jp/item/3842244
HMV: http://www.hmv.co.jp/artist_Hudson-Mohawke_000000000411116/item_Lantern_6306805
iTunes: https://itunes.apple.com/jp/album/lantern/id979791170
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