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今がベストなタイミング、AIは電気と同じような存在になる

ニューズウィーク日本版 / 2016年12月8日 16時30分

人間とAIは「ケンタウルス」となって密に協働していく

 すでにAIは買うことができます。グーグルにログオンするとAIが質問に答えてくれるのです。例えばテニスをしている人物の写真をアップロードして、「服の色は何色か」「ボールの色は何色か」などと聞くと正しい答えをくれるでしょう。6セントで100の質問をすることができます。

 AIに体をつけるとロボットとなります。スマートで賢い産業用ロボットは人間を感知して傷つけないようにしますし、さらには仕事のやり方を見せれば真似する能力もあります。試行錯誤しながら、正しく実行できるまで自律的に学習するのです。こういうスマートなロボットなら人間と協力できますし、素人でもプログラミングできます。これが重要な点です。人と一緒に作業できる、より人間的なロボットが登場しつつあるということです。

 我々の仕事の定義は変わるでしょう。仕事の多くがロボットに奪われると同時に、我々の知らない新しい仕事ができるのです。祖父母の時代になかった仕事がテクノロジーによって生み出されたのと同じように、ロボットは我々に新たな仕事を作ってくれます。ロボットが得意とするのは効率や生産性が問われる仕事で、人間はイノベーションやクリエイティビティが重要な仕事を受け持つことになるでしょう。新しいものを作り出すにはたくさんの失敗が必要で、その意味でイノベーションは非効率な作業です。芸術、アートもそうですし、人間関係もそう。人間の体験もしかり。ロボットが進化すると、こういう分野で働く人の価値が高まります。

テスラ社の工場で稼働するロボット。

【参考記事】MITメディアラボ所長 伊藤穰一が考える「AI時代の仕事の未来」



人間とAIが一体となって協働する状態は半身半馬のケンタウルスにたとえることができる。

 チェスの世界チャンピオンだったガルリ・カスパロフはIBMのAI「ディープ・ブルー」に敗れたとき、自分がAIと同じようにビッグデータにアクセスして、取りうる手を全てリアルタイムでシミュレーションできていれば勝てたと考えました。そしてAIと人間が協力して戦う新しいチェスリーグを始めました。彼はそのチームを「ケンタウルス」と呼びました。AIと人間の融合を、神話上の半身半馬の生きものになぞらえたわけです。今日、世界でベストのチェスのプレイヤーはAIでもなければ人間でもない、このケンタウルスです。

 これは今後のモデルになるでしょう。ベストな医学の診断者は「人間の医師+AI」なのです。これは人間とロボットが隣り合わせで作業するということです。AIと人間の知性が補完的な関係にあるからこそできることであり、一緒になれば双方がより賢くなるということです。仕事の報酬も、AIとどのくらいうまく協力できるかによって決まることになるでしょう。

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