学校でのいじめに影響する家庭の収入格差
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月24日 15時45分
<子供のいじめや不登校に悩む日本の保護者は、世帯収入が下がるほど割合が上昇している>
いじめは学校での問題行動の最たるものだ。そもそも「いじめ」とは、一定の人間関係にある生徒による心理的・物理的な影響を与える行為で、対象となった生徒が心身の苦痛を感じるものと定義されている(いじめ防止対策推進法第2条)。
1980年代の半ばから社会問題化し、被害生徒が自殺に追い込まれる事件も多発している。最近はインターネットを使った「ネットいじめ」もはびこっていて、状況はますます深刻化している。
いじめには色々な形態があるが、冷やかし・からかいや身体的暴力が多いことがわかっている(文科省『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』)。この2タイプのいじめの被害率をとった座標上に、OECD加盟の33カ国を配置すると<図1>のようになる。15歳の男子生徒のうち、「月に数回」ないしは「週に1回以上」と答えた者の割合だ。
日本の生徒の被害率は、「からかわれる」が20.0%、「ぶたれたり押されたりする」が12.6%となっている。思ったより低い印象だが、国際的にみると最も高い。生徒の自己申告であるが、世界で最もいじめがはびこった「いじめ大国」といえるかもしれない。
その理由として、異質性への寛容さがないとか島国根性とか言われるが、どういう生徒が被害に遭いやすいかを観察すると一定の傾向が見えてくる。例えば、家庭環境との相関関係だ。
【参考記事】海外旅行格差から見える日本社会の深い分断
いじめは思春期に多発するが、14歳の父母のうち子どものいじめ被害で悩んでいる者の割合を世帯の年収別に調べた統計がある。<図2>はそれをグラフにしたものだ。
年収が低い家庭ほど、わが子のいじめ被害で悩んでいる親の比率が高い。年収800万以上では0.9%だが、年収200万未満では2.8%だ。子どもの不登校で悩んでいる親の率も同様である。いじめに象徴される、学校での人間関係のトラブルが原因になっていると思われる。
今は仲間との交際にも金がかかるので、経済的理由からスマホなどが持てず、つまはじきにされることもあるだろう。高校生になればアルバイトをして自分でカバーできるが、中学生ではそれもできない。
いわゆる「スクール・カースト」の決定要因として家庭環境は大きい。格差の拡大は、子どもの世界にも影を落としている。いじめの被害が生徒集団のどの層に分布しているかを突き止め、対策を講じていく必要がある。
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