中国の対米投資が9割減、米中貿易摩擦は戦争へ?
ニューズウィーク日本版 / 2018年6月21日 17時40分
<報復関税合戦で2大経済大国間の取引が収縮すれば、世界経済にも悪影響は避けられない>
米中貿易戦争の懸念が高まる中、中国の対米直接投資が激減している。今年5月末までに中国企業が行った工場用地取得や企業買収などの対米投資は、昨年同期比で大幅に落ち込んだ。世界の2大経済大国である米中両国の貿易関係が急激に悪化したことが背景にある、と専門家は指摘する。
データを公表したのは、中国企業の投資動向専門の米調査会社ロジウム・グループだ。その最新の統計によれば、今年1~5月に中国が行った対米投資はわずか18億ドル。前年同期から92%も落ち込んだ、と米CNNMoneyは報じている。半期では過去7年で最低の水準だ。
中国の対米投資が減少に転じたのは2017年。米中双方における規制強化が原因だ、とロジウム・グループは分析する。中国は対外投資を抑制し、アメリカも中国企業よる企業買収への監視を強化した。
中国の対米投資額は、バラク・オバマ前米大統領の任期の最終年だった2016年に460億ドルと史上最高を記録した。
それが2017年には290億ドルに落ち込み、今年は5月末時点でわずか18億ドルにとどまっている。ドナルド・トランプ政権は6月18日にも、2000億ドル分の中国製品に10%の追加関税を課すと発表、中国側も直ちに同額の関税で報復を誓ったばかりだ。その数日前には、500億ドルの中国製品に25%の追加関税をかけるとして、中国も報復に出たばかり。米中の貿易摩擦は激化こそすれ、沈静化する気配はない。
世界経済にも悪影響
「貿易戦争」の始まりは、トランプ政権が3月に中国製の鉄鋼とアルミに追加関税を課し、中国もお返しをしたこと。以来、米中の報復合戦が繰り返されるたび、世界の株式市場は動揺してきた。
貿易をめぐる米中対立は、石油市場からハイテク産業に至るまで、幅広い産業に悪影響を及ぼしている。特に後者への打撃は深刻だ。中国の通信機器大手の中興通訊(ZTE)は、アメリカの部品の輸入禁止などの制裁措置を受け、操業停止に追い込まれた(その後トランプは態度を変え、制裁を緩和する姿勢を見せている)。
4月にホワイトハウスでトランプと会談した米アップルのティム・クックCEOは、貿易戦争が取り返しのつかないほどエスカレートしたり、中国から輸入する部品のコストが上がってiPhoneが値上がりするようなことはないだろう、と楽観的な見方を示した。
「(貿易戦争に)勝者はいない。どちらも負ける」、とクックはCNNの番組で語った。「負けが分かりきっているのだから、米中両国は問題を解決できるはずだ」
(翻訳:河原里香)
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