この春の新社会人は、平成の乱気流を通り抜けてきた21世紀人
ニューズウィーク日本版 / 2019年4月10日 17時30分
<バブル崩壊、2度の大震災、オウム事件、ネット勃興と、平成に成長した世代は様々な社会変化を経験してきた>
間もなく元号が変わることもあり、平成を振り返る記事や番組が目につく。平成の世相・出来事の年表が提示されているが、時代軸に人間の成長過程(年齢)の軸も加味すると、それぞれの世代の軌跡が浮かび上がる。
平成という時代をどういうステージで過ごしたかは、世代によって異なる。平成は激動の時代だったが、そのインパクトは一律ではない。
1976年生まれの筆者は、平成元年(1989年)に13歳だった。思春期以降をこの時代で過ごしたことになる。平成の初頭に生まれた世代は、今年でちょうど30歳だ。この春に就職した学生は1996(平成8)年生まれだ。
縦軸に平成の時代(1989~2019年)、横軸に年齢(青年期まで)を取った座標上に各世代の軌跡線を引くと、平成の時代と人間形成の様相を一度に知ることができる。ジェネレーショングラムという図法だ。<図1>には、目ぼしい出来事や教育政策を書き入れている。
平成元年(1989年)は、世界的にはベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツが統一した年として知られる。国内では、東京・埼玉で連続幼女誘拐殺人事件が起こり、子を持つ親が震え上がっていた。
大学入試改革が議論されているが、現行の大学入試センター試験は1990年にスタートした。第2次ベビーブーマーが受験期に達し、大学受験競争が最も激しかった頃だ。時はバブル期、入り口は大変でも出口は楽と言われ、学生の就職は超売り手市場だった。
しかし浮かれた時代も終焉し(バブル崩壊)、社会に暗雲が立ち込めてくる。95年には阪神・淡路大震災が発生し、オウム真理教による地下鉄サリン事件も起きた。この年は、インターネットが勃興した「ネット元年」ともいわれる。
平成不況はいよいよ深刻化し、97年には大手の山一證券が倒産、翌年に年間自殺者が3万人の大台に乗った。学生の就職率はどん底で、若者の自立も困難になった。学校卒業後も実家暮らしを続ける「パラサイト・シングル」が注目され出したのもこの頃だ。筆者の世代(緑色)は、大学を出た時がこうした暗黒期と重なった「ツイテない」世代、人呼んで「ロスト・ジェネレーション」だ。
現在、この世代は40代になっているが、新卒時に正規就職から外れ、非正規雇用に滞留している人も数多い。平成初期の同年代に比べて所得も減っている。1992年では40代前半男性の所得中央値は524万円だったが、2017年では472万円だ(総務省『就業構造基本調査』)。<図2>の都道府県地図によると、全国的にアラフォーの稼ぎが目減りしていることが分かる。
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