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早食い、大食い競争はなぜ危険なのか──食べ物を詰まらせるだけでなく長期的には癌のリスクも

ニューズウィーク日本版 / 2019年8月30日 16時10分

<アメリカでは毎年各地で早食い、大食いのコンテストが開催されるが、参加者の死亡事故が後を絶たない>

よだれまみれの口いっぱいにホットドッグを頬張る――大食いコンテストは今やアメリカの名物だ。しかし最近、タコス大食いコンテストの参加者が死亡したことで、その安全性があらためて疑問視されている。

8月中旬にカリフォルニア州フレズノで開催されたタコス大食いコンテストに参加したダナ・ハッチングズ(44)が、喉を詰まらせて死亡した。ダナのきょうだいのメッカは、地元テレビ局の取材に対して「大食いコンテストに出ることは聞いていたが、まさかこんなことになるなんて」と悲しみを語った。

アメリカでは毎年各地で早食い、大食いのコンテストが開催され、アマチュアからプロフェッショナルまで多くの若者たちが参加しているが、そこでの死亡事故が後を絶たない。

2017年3月、コロラド州デンバーのドーナッツショップが開催した約225グラムのドーナッツを80秒以内で食べ切るコンテストに参加していた、42歳のトラビス・マルーフが喉を詰まらせて死亡した。

「人々の想像よりも遥かに危険」

同時期にコネティカット州のセイクレッドハート大学で開催されたチャリティーパンケーキ大食い大会に参加した後、20歳のケイトリン・ネルソンが死亡した。訴訟を起こしたネルソンの家族の代理人は、「このようなコンテストは人々が想像しているよりも遥かに危険だ」と語った。

早食い、大食いコンテストで参加者は、目の前に大量の食べ物を積み上げられ、制限時間内にできるだけ多くの量を食べることを求められる。食べ物はホットドッグ、フライドチキン、牛の脳みそからゆで卵まで様々で、メジャーな大会では数千ドル以上の賞金が出ることもある。

こうした大会で実際に食べられる食べ物は驚くほどの量で、ニューヨークのコニーアイランドで毎年開催される有名な「ネイサンズ」のホットドッグ早食い大会では、昨年の優勝者が10分間に74個を飲み込む過去最高記録を出して1万ドルの賞金を手にした。

英国栄養協会の広報で栄養士の資格も持つキルステン・ジャクソンは、食べ物を喉に詰まらせて窒息するだけでなく、早食い、大食いコンテストは長期的に見て癌を誘発するリスクもあると指摘する。

まず脂肪分が多い食べ物は消化に時間が掛かり、逆流性食道炎などの症状を引き起こす可能性がある。また塩分の多い食べ物は高血圧を、辛い食べ物は下痢を引き起こす可能性があるという。



「早食い、大食いのリスクはほとんどが消化不良に関連している。飲み込んだ大量の食べ物が胃の入り口の食道括約筋に圧力を及ぼす。このために胃酸が逆流して胸やけを起こし、長期に渡って胃酸が逆流することで食道を傷付け、炎症を引き起こす。頻度にもよるが、結果として食道癌に繋がることがある」と、ジャクソンは言う。

「またカロリー、塩分、飽和脂肪酸を大量に摂取することで、心臓病、高血圧、体重増加につながる」

さらに早食いのプロになると、肥満に加えて胃を完全に空にできなくなる胃不全マヒのリスクも高まる。この症状は糖尿病患者に多く見られ、腹部膨満感や胸やけのほか消化できない食べ物を嘔吐してしまうこともある。また血糖値の乱高下も引き起こす。

「早食い競争の人気は高まっているが、自分の体を破壊する可能性がある行動だ」と、研究者たちは警告している。






カシュミラ・ガンダー

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