デジタル庁は「オルタナティブ・データ」を活用するべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年10月1日 17時45分
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月1日放送)に経済アナリストの森永康平が出演。政府がデジタル庁の新設に向けて、「デジタル改革関連法案準備室」を内閣官房に設置したというニュースについて解説した。
デジタル改革関連法案準備室
政府は9月30日、菅政権が看板政策に掲げるデジタル庁の新設に向けて、「デジタル改革関連法案準備室」を内閣官房に設置した。2020年末までに骨格を固め、2021年の通常国会に必要な関連法案を提出する方針だ。
飯田)準備室の室長は、平井卓也デジタル改革担当大臣ということです。これがどういうものを打ち出して来るのか、ここから先ですよね。
古いシステムをつぎはぎで使い続けている日本
森永)日本もそうですが、デジタル関係が発達したのが昔の国は、当時のシステムを途中で変えるときにトラブルがあってはいけないので、古いシステムをつぎはぎで使い続けている国が多い。一方、最近発達して来た新興国や、ついこの間まで新興国と呼ばれていた国には、躊躇なく新しいシステムを入れられます。その結果、なぜか先進国よりも、最近出て来た国の方がシステム自体は新しいということがよくあります。それを刷新して行くことを期待しています。
飯田)携帯の普及もアフリカなどの方が、固定電話に行かずに一足飛びに携帯が普及したという話はありますね。
森永)そういうところを国をあげて改革するということに関しては、もちろん賛成です。
役人だけでやろうとせず、民間から登用することが大切
森永)しかし、総論は賛成であると。「デジタル化したほうがいいですよね」と言われれば、「それはそうです」となるわけですが、各論反対のような、一個一個の打ち出される政策を見て、「何だこれは?」とか、「これ、どこかの企業が得していませんか?」というような批判が出て来るのだろうなということが予想されます。この辺を精査して行かないと、風呂敷はバーンと広げたけれども、一個一個の政策が小粒だったり、変な方向を向いていたりということが起こり得るので、そこをきちんとモニタリングして行く必要があります。
飯田)それを思ったのが、ゴールド免許の更新についてです。「オンラインでできます」というような見出しを見て、「オッ」と思ったのですが、よく見たら、「講習はオンラインで観ることができる」と。でも、「視力検査などは行かなければいけません」ということで、むしろ手間が増えたのではないかと思います。
森永)給付金なども「電子で全部できます」という話が最初あったにもかかわらず、結局、2人パソコンの前に並んでダブルチェックしたほうが早かったというようなことが、すでに今年(2020年)起きてしまっているわけです。
飯田)プリントアウトして、それでチェックする、というようなことがありましたよね。
森永)私も民間企業でサービスの開発をやっていたのでわかるのですが、最初の制度設計をしっかり引かないから、こういうことが起きるのです。「こういう問題点があるよね」と1つずつ問題点に対して、ある意味パッチワーク的に、「では、これはこうしよう」、「これはこうしよう」ということしかやらないから、申請はオンラインなのだけれど、「他の検査は実地でお願いします」というようなことが出て来てしまうのです。最初に大きなロードマップをつくった上で、そこから仕様を細かく落としに行くということをやらなければならないのです。しかし、これは経験者でなければできません。ですので、民間のウェブやデジタルのプランをやったことがある人を登用することが大事であって、決して「国会のなかだけで、役人だけで何とかしましょう」ということは避けた方がいいと思います。
オルタナティブ・データを活用して欲しい
飯田)うまく使えば、いろいろなデータが即座に入って来る。業者もやるメリットがあるわけですよね。
森永)特に今回期待しているのは、俗に言うオルタナティブ・データというものを、デジタル庁ができるのであれば、ぜひ活用していただきたいと思っています。いままでは経済指標というと、家計調査や消費者物価指数、GDPということになりますが、それらは月1回しか出ないし、今月出るものは2ヵ月前の数字なわけです。
飯田)そうですよね、10月に出るのは、8月の指数です。
森永)それを見ながら政策を打つと、完全に1歩2歩遅い政策になってしまいます。いちばんわかりやすいのは、2018年10月に景気の回復が終わって、そこから後退していたということを、2020年に入ってから認定して、その間の2019年10月に増税をかけてしまっているわけです。そういうことは本当はあってはいけない話だと思います。オルタナティブ・データという、いままで使えなかったと思われていたデータを活用するということをやって行って欲しいですね。
オルタナティブ・データと公式な経済指標を活用して政策を打って行く
森永)ただ私、いい流れだなと思っているのが、9月23日に西村大臣が会見をしているのを生放送で観ていましたら、すでに民間企業が持っているオルタナティブ・データ、例えばクレジットカードの決済情報や携帯で取れる位置情報。こういうものを利用して、「どれくらい自粛度合いが緩和されているのか、それに伴ってどれくらい消費が増えているのか」ということを出しているのです。これはいままでになかったことです。いまの時点で、ここまで大臣が使うくらいにまで来ているのであれば、今回のデジタル庁創設に伴って、そこをもっと活用して欲しいと思います。ただオルタナティブ・データ自体も、当然データにバイアスがあるので、それが既存の経済指標の代替になるというわけではありません。
飯田)完全に変わるものではないということですね。
森永)速報性や更新頻度という意味では、オルタナティブ・データの方が強いのですが、まんべんなくデータを取れているのは、公式な経済指標です。この2つを利用しながら、いまこの瞬間に合った政策を打って行くというのができるようになるはずです。
飯田)クレジットカードの決済データだと、クレジットカードを持てる人のデータになるから、中所得層以上のデータになる可能性がありますね。
森永)未成年のデータが取れないとか。
飯田)そういう癖みたいなものは、既存のデータとの整合で補整して行けばいいということですね。
「はんこを使わなくなった」が「デジタル化した」こととならないように
森永)結局、蓋を開けてみれば、「はんこを使わなくなりました」とか、「ファックスを廃止しました」とか。そういうことをもって、「デジタル化しました」ということだけはやめて欲しいですね。
飯田)しかし、そういうものはマスコミが食いつくのですよね。
森永)河野大臣の「はんこは不要にできそうだ」ということがニュースになっていましたが、そんなことは当たり前のことです。「そんなこと、民間企業ではやらないよ」というところですよね。
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