米へのパイプ役となれるか~イラン、ミャンマーに独自の関係を持つ菅政権に問われる外交力
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年2月22日 17時45分
菅義偉首相、バイデン米大統領(ロイター=共同)
ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月22日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。バイデン大統領が日系人強制収容について改めて謝罪する声明を発表したニュースについて解説した。
バイデン大統領~日系人強制収容を「恥ずべき歴史」と謝罪
アメリカのバイデン大統領は、太平洋戦争中のアメリカで日系人強制収容の根拠となった大統領令署名から79年が経過した2月19日、「アメリカの歴史の最も恥ずべき時代の1つ」と声明を発表し、改めて謝罪した。
新行)またバイデン大統領は新型コロナ対策や気候変動の問題、外交などの分野で相次いで政策を発表しています。この1ヵ月、そして今回の謝罪についてどうご覧になりますか?
バイデン政権の人権政策のなかの1つ
須田)この日系人の強制収容に関して言いますと、私はハワイで取材をしたことがあります。明治になって、国内で食べることができなくなった日本人が、事実上騙されて労働者としてハワイへ連れて行かれて、さとうきび畑等々で奴隷のように使役された。ハワイというのは赤土なのですが、この赤い土の色というのは「日本人の血の色だ」などと言われました。自分たちの代だけでは豊かになれないと、子どもにお金をかけて教育を施したのです。そして日系人の地位が徐々に上がって行ったという状況があったのです。
新行)そうですね。
須田)しかし、日系人の地位がリセットされてしまったのがパールハーバー、真珠湾攻撃です。一切合切の財産を取り上げられて強制収容所に送られ、敵性外国人とされた。元以下に戻ってしまった。現在では、日系人はハワイでは弁護士など、さまざまな分野で活躍しています。ハワイ州知事にダニエル・イノウエさんがなったりするというところまで地位が向上しているのだけれども、これは日系人自らが戦後つくりあげて来た努力の賜物なのです。何もバックアップはしてくれなかったですからね。そういった点で言うと、レーガン政権のときに謝罪し、補償をしたのは、最終的な名誉回復につながったのではないでしょうか。それを歴代政権がどう踏襲するのかというところが問われて来たのです。レーガンさんは共和党ですけれども、バイデンさんとしても、民主党としても、そこは継続的にやって行くというところを示したということです。このバイデン政権、民主党政権は、人権というところに強く配慮します。特にマイノリティ、地位向上したとは言え、日系人もマイノリティですから、そこに対してもきちんと目配りをして行くのだというところを示したことは、トータル的に見ると、バイデン政権の人権政策のなかの1つというところに位置づけられると思います。
トランプ前大統領によって変えた方向性を早く元に戻そうとするスピード重視の政策
新行)この1ヵ月はどう考えられますか?
須田)大統領令というのは、議会がその対応をする、通常だったら法律をきちんとつくって、それに大統領が署名して政策を進めるというのが普通の手続きなのです。しかし、それでは間に合わないとき、もっとスピーディーに対応したいときに、大統領令をまず先行して発出して、そのあとに議会がついて来るということになるわけです。トランプさんが変えた方向性を元に戻そうと、スピード感をもって対応するという、スピード重視の政策だとも言えます。
新行)どのようなところがありますか?
須田)例えばパリ協定への復帰です。パリ協定から離脱して、アメリカだけが地球温暖化政策に逆行しているかのようななかで、なぜか中国が主導権を握ろうとしているのです。中国は火力発電所を増設しているにもかかわらず、電気自動車を積極的に導入するというところだけで、「うちは温暖化対策について積極的に取り組んでいます」と言って、その主導権を握ろうとしているのです。それに対して、アメリカのパリ協定復帰は一定のくさびを打ち込むことになります。早期の対応というところでは、よかったのではないかと思います。
新行)復帰ということでは、イランの核合意もですよね。
イラン、ミャンマー~独自のパイプを持つ日本の立場が問われて来る
須田)ただ、これについては、一朝一夕に先に進んで行く話ではありません。イランにとってみても、政権が変わる度に自国に対する対応が変わるのでは、「一体誰を信用したらいいのか。4年後にまた変わるのでは困る」ということで、ここについては、すぐさまイランとの関係が改善することはないと思います。そこで、イランにパイプを持っている日本の立場が問われて来るのです。対イランに関して、バイデンさんがどう菅さんに対応して来るのか。そこは注目すべきポイントではないかと思います。
新行)対イランのみならず、日本がパイプ役となってアメリカにつなぐという役割は、他のところでもあり得ることですよね。
須田)ミャンマーもそうですね。日本はそういうところは融通無碍ですから、軍事政権に対してもパイプを持っています。クーデターに関しては、人権問題というところで国内事情を考えると強く出ざるを得ないのだけれども、アメリカは強く出過ぎたところがあります。そこに日本がブレーキをかけて行く。全面にかける必要はないけれども、バイデン政権に対して、日本から一定程度の事情説明や、理解を求めるということは必要になって来るのではないかと思います。このまま行くと、ミャンマーの軍事政権も中国シフトになりかねませんからね。
新行)改めて、日本はアメリカと今後どう付き合って行くべきでしょうか?
須田)日米同盟というのが、日本の外交、安全保障の主軸ですから、そこを最重視しなければならないわけです。加えてバイデン政権になって、アメリカ第一主義、アメリカファーストから各国間の強調というところに切り替えました。とは言っても、バイデンさんの言っていることも「アメリカ第一主義」なのです。それはどこの国も、自国の国益を重視しないで外国との関係を重視するなんてことはあり得ません。日本は日本の国益を追求して行く、その点で言うべきことを言い、協力すべきところは協力する。だから何が何でもアメリカにおもねる必要はないと思います。「きちんとものを言えるのかどうか」というところが大切になって来ると思います。
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