日本におけるSDGsの重要な課題は「ジェンダー」と「環境」
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2021年6月8日 8時12分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(6月1日放送)に、一般社団法人 SDGsアントレプレナーズ 代表理事の青柳仁士が出演。SDGsが誕生した経緯、またその概要について解説した。
黒木)今週のゲストは元国連職員で一般社団法人SDGsアントレプレナーズ 代表理事の青柳仁士さんです。持続可能な世界を目指す目標がSDGsであって、貧困や気候変動など17個のゴールが定められているのですが、なかでも日本で重要な課題とされているものは何でしょうか?
青柳)1つはジェンダーの問題です。それから、環境に関する問題は、日本では重要だと思います。例えば、CO2の削減。それから「つくる責任、使う責任」という目標があるのですが、日本は大量生産大量消費型の社会ですから、リサイクルなどをするという資源の問題。その辺りが日本では問題になっています。
黒木)ジェンダーについては最近でも問題がありましたね。
青柳)日本は世界全体から見て、かなり遅れていると言われています。他のゴールはいいところにあるということも多いのですが、ジェンダーだけはほぼ最低に近いところにあります。企業のなかでの女性の管理職の割合が先進国のなかで圧倒的に少ない、また、未だに就職のときの格差が残っているところもあります。そのような面で低評価されてしまっているところがあります。
黒木)貧困という意味ではどうですか?
青柳)1日1.25ドル以下で暮らしている人のことを「絶対的貧困層」と言いますが、これがいま世界で7億人いまして、これが一義的にはSDGsの言う「貧困」です。日本を見ると「そういう人はいないではないか」と思うのですが、日本には絶対的貧困と言われる人は少ないのですが、「相対的貧困層」が多いのです。日本の世帯の平均的な収入の半分以下で暮らしている世帯のことを相対的貧困世帯と言うのですが、7人に1人の子どもがそういう世帯に住んでいるという状況です。特に母子家庭のひとり親世帯が多く、母子家庭の約半分が日本全国で見ると相対的貧困層になってしまいます。都心部でもそういう方たくさんがいます。
黒木)母子家庭の方。
青柳)しかし、それがわからないのはなぜかと言うと、日本社会において、「私は苦しいので助けてください」とか、「何かください」と言うのはなかなか抵抗がありますので、側から見ると普通に暮らしているように見える方が多いわけです。でも実際にはかなり苦しい状況にあって、そのしわ寄せが子どもに来るのです。学費が出せないから、義務教育以降は子どもの選択肢が狭まってしまう。そこが問題視されています。
黒木)そういう課題に対して、取り組んでいる企業の方々がいらっしゃるということですか?
青柳)そうですね。例えば「子ども食堂」をやっているところがあります。子ども食堂もいろいろな企業とパートナーシップを組んで、そこでお金を集めながら、満足に食べられないと脳も体も発達しませんので、そういうところを支援しています。あとは企業のなかでいろいろな奨学金を立て、企業奨学金という形でそういう子どもたちの進学を助けていくという例も聞いたことがあるような、あっちの企業もこっちの企業も、かなりそういうのは導入しているところが多かったり、いろいろなケースがあります。
黒木)SDGsに取り組むことによって、そういった企業にはどんなメリットがあるのですか?
青柳)いま世界全体で見ますと、そういうことに取り組まない企業というのが低い評価をされてしまうという環境がすでに整っていると言い切ってしまってよい状況になっています。環境だけではなく、社会、経済も同じような動きがあり、SDGsというのはそれに拍車をかけているようなものですので、企業にとっては、将来的に本気で生き残って成長して行きたかったら、長期的に人々と社会に必要とされ続ける存在であることが不可欠な状況で、そのためにSDGsに取り組んでいくということがとても重要だということだと思います。
黒木)私たちの意識もどんどん変えて行かなければいけない時代になっているということですね。
青柳)はい。
青柳仁士(あおやぎ・ひとし)/一般社団法人 SDGsアントレプレナーズ 代表理事
■1978年生まれ。早稲田大学政治経済学部、デューク大学国際開発政策学修士卒。
■2001年から国連開発計画(UNDP)、国際協力機構(JICA)、プライスウォーターハウス・クーパース株式会社(PwC)にて、日本・米国・アジア・中東・アフリカ諸国で社会課題解決型事業・ビジネスの実践に携わる。
■2012年に国連本部のあるニューヨークでSDGs創設の国際議論に参画。
■SDGsが始まった2016年から国連開発計画(UNDP)駐日事務所の広報官として日本の政府機関・民間企業・教育機関・メディア・市民社会などへの初期のSDGs普及の責任者を務める。初期のSDGs普及に従事。
■SDGsにビジネスで取り組むための国連初のプラットフォームを設立。2019年にSDGsアントレプレナーズを立ち上げ、社会起業家として活動。
■SDGsの理解を深め、現状よりも一歩進んだSDGsの取り組みができるように企業などを後押ししている。
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