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手話が分からなくても伝える方法 スマートなスマホの使い方に「真似したい」

おたくま経済新聞 / 2019年12月18日 12時0分

 今は視覚や聴覚に障害があっても、スマホを使えば必要な情報を得ることができるようになりました。しかし、突然の事態にはやはりすぐ情報を得ることは難しいものです。そんな不安な時に、ある見知らぬ人が助け船を出した方法が素晴らしい、と関心を集めています。

 先天性の聴覚障害を持つ、“ねこ(耳をお空に置いてきた)”さん(以下ねこさん)。普段は手話で友人などとコミュニケーションをとっていますが、耳が聞こえないながらも、ろう・難聴・手話関連の情報提供や、聞こえない人と聞こえる人が互いに理解し合って、聞こえない人への偏見や無理解をなくしていく活動などを行っています。

 そんな聴覚障害の当事者であるねこさんが体験したことをツイッターに投稿したところ、1.3万件のリツイート、4.3万件のいいねが付きました。その内容とは……。

今夜飲み会の帰り友達と電車乗ってたんだけど、なかなか発車しない。
どうしたのかな?と友達と手話しながらキョロキョロしてると、向かいに座ってた人がiPhoneの画面を見せてくれて「中央線で人身事故があって停車すると放送がありました」って。
わーこういうの嬉しい!

 という話。電車に乗っていると、都市部では電車がしばしば人身事故に巻き込まれやすく、特に東京寄りの中央線では多いようです。大概こういう時は車掌さんが車内へアナウンスをして案内をしてくれますが、ねこさんもご友人も耳が聞こえず、手話で何が起こったのだろうか、と、若干の不安をおぼえつつ会話していたのだそう。

 それを見ていたのが、向かい側に座っていた人。手話独特の手の動きから、どうして電車が止まってしまったのかが分からずに不安に思っているであろうと、スマホのメモ帳アプリを使い、事故があった旨を伝えてくれたのです。

 何故突然、電車が動かなくなってしまったのかが伝わっていなかったねこさんたちにとっては、その行動は分かりやすくありがたかったものだったことでしょう。

 電車内のドアの上などに付いているディスプレイや、首都圏を走る電車に使われているデジタル広告には、こういった事故の情報はいったん運転司令所に集められ、そこから各列車に一斉配信する仕組みになっているので、発生したばかりの事態についての情報を即座に反映させることができません。お向かいの人による親切な行動は、ねこさんたちにとって具体的な内容を知らせることとなり、不安を解消してくれるものとなったのです。

 駅でもない場所で突然電車が立ち往生となってしまうと、聴覚障害がある人にとっては何が起こったのかを把握できず、不安だけが強くなりがち。

 車内の情報ディスプレイにも事故情報が反映されないので、こうした機転の良さを利かせてくださった方の行動はツイッターでも話題となり、「手話ができなくても助けたい、という気持ちがあれば、今の時代は伝える手段がたくさんある」といった意見や、「何が起きたか分からなくて不安になってるな」という風に判断して手助けしてくれたんでしょうね、といったリプライが届いています。

 そして、「その時が来たら自分も真似して助けたい」という人が何人も。逆に聞こえない方の人からも、手話だと他の人には通じないのでスマホのメモ帳で同じように聞いた事があります、という声も。

 また、「せっかく電車内ディスプレイがあるのだから緊急時のアナウンスはディスプレイにも即座に表示されるようになってくれたら、聞こえる人たちも分かりやすいし外国人にも分かりやすいのにね」といった意見も。現状では先述の通り、システム上すぐに反映させることは困難。運行中の一編成に、直接リアルタイムな情報を表示させることができる設備も開発が進んでいるようですが、まだ全車両へ導入されるようになるかは明らかではありません。

今夜飲み会の帰り友達と電車乗ってたんだけど、なかなか発車しない。
どうしたのかな?と友達と手話しながらキョロキョロしてると、向かいに座ってた人がiPhoneの画面を見せてくれて「中央線で人身事故があって停車すると放送がありました」って。
わーこういうの嬉しい!

— ねこ(耳をお空に置いてきた) (@catfoodmami) December 14, 2019

 聞こえる人にとって簡単に手に入れることができる情報は、時に聞こえない人にとっては同じように手に入れることができません。こうした突発的な状態を誰にでも分かるようにするのも、バリアフリー社会をつくるために必要なことであると思います。

 ねこさんは、ご自身が聴覚を失いながらも働いていくことについて、「発音ができなくても、耳の聞こえが悪くても、周りの方々とパソコンでチャットや筆談したりなどの方法で仕事をしたり、また、聞こえる部下を何人か持って出世したりしている人もいます。当事者の頑張りだけでなく周囲の方々の理解もあれば聞こえる方も聞こえない方もともに生きていくことができます」と、道具と周囲の理解がそろうことでバリアフリーに働けることをお話してくださいました。

 そして、「聞こえないということは決して不幸なことではない」とも。余計な雑音や騒音が聞こえてこないのはもちろんですが、理解のある人と、周囲のちょっとした手助けを感じることは「当たり前」ではないのです。ありがたい、と感謝することが幸せを感じることに繋がるでしょう。

 先天性の難聴は、風疹による「先天性風疹症候群」や、遺伝性のものなどがありますが、成人後にも聴覚を失う病気は多くあります。いずれの場合も、聞こえないことを他の方法でカバーすることで、社会活動を続けていくことができます。そのためには、やはり周囲の理解や表示方法などの改善など、物心ともにバリアフリー化を進めていくことが肝要。

 もし、誰かが困っている様子を見つけた時は、その人が何に対して困っているかを観察して、少しの勇気と一緒に「一緒に解決しよう」というサインを送ることが、より住みやすい社会を作っていくのではないでしょうか。

<記事化協力>
ねこ(耳をお空に置いてきた)さん(@catfoodmami)

(梓川みいな)

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