「自覚症状なし」父の「すい臓がん」が発覚したのは、母だけが気づいた「ある症状」がきっかけだった。親が突然「がん」になったらどうすべき?
OTONA SALONE / 2024年11月29日 11時15分
こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。過去6回の連載では「義母の介護」を中心にお話ししてきましたが、今回は、同時期に経験した「もう一つの介護」について書きたいと思います。その介護の対象となったのは、当時83歳の父です。
日頃から趣味を楽しみ、適度に運動もこなし、地域の活動にも参加。まだ残る黒々とした髪をいつも丁寧に整え、身だしなみには人一倍気を使っている。そんな姿を見ていたからなのか、「介護はまだまだ先」と勝手に思い込んでいた私。でも、そんな父を突然介護することになるなんて。そして、数ヶ月後に「別れの日」が訪れてしまうとは、夢にも思いませんでした。
【アラフィフライターの介護体験記】#7
▶前回の記事を読む▶▶ 引きこもりだった義母がデイサービスに行くと決意。「介護は恋愛に似てる」認知症の義母が180度変わった社会福祉士の教え
>>心配そうな母からの電話。母の「不安」は的中した
元気だった父に生じた「ある症状」。これって、本当に病気のサイン?
2023年2月21日火曜日。忘れもしないその日は、朝から義母に頼まれた買い物を済ませ、その足で取材先に向かい、何かと慌ただしく過ごしていました。そんな中、スマートフォンには母から何度も着信が。ようやく電話に出てみると、「忙しいところごめんね。ちょっと話があるんだけど……」と、電話口から何やら不安な様子が伝わってきました。
聞けば父が数日前から食欲がなく、どことなく元気がない。発熱や痛みを訴えるようなことはないものの、徐々に顔が黄色くなり「黄疸」のような症状が出てきたというのです。「昨日、先生(かかりつけ医)のところへ行ってきたの。今日の午後に血液検査の結果が出るから、そこである程度のことは分かるんだけど」と言うので、私も病院に同行することを決めました。
正直なところ、この母の電話に対して「ちょっと心配しすぎじゃない?」と思った私。というのも、数週間前に会った父は元気そうで、とても病気にかかっているようには見えなかったからです。「きっと、大丈夫」そう自分に言い聞かせ、むしろ血圧が高い母のことが気になって、実家に向かったのでした。
>>「基準値の約10倍」思わず目を疑った
「基準値の約10倍」思わず目を疑った数値が示すもの
玄関先でいつものように出迎えてくれた父は、顔色こそ少し黄色味を帯びていましたが、普段とあまり変わらないように見えました。しかし、長年連れ添った母には何か感じるものがあったのか、その表情から不安の色が消えることはなく……。
そして病院で、その不安は見事に的中することになります。「ご家族も一緒に」と診察室に呼ばれ、画面に表示されている血液検査の結果を見てみると、「総ビリルビン(T-Bil)」(肝臓や胆道の異常を調べるための指標)の欄に「10.43 mg/dL」という数字がありました。基準値は「0.2〜1.1mg/dL」と書かれているので、この数値が深刻な状況を示しているのは一目瞭然です。
※基準値は検査機関によって異なることがあります。
「総ビリルビンの数値が高いと、肝炎や肝硬変など肝臓の病気が疑われる」「今回の数値は基準値の約10倍なので、一刻も早く原因を突き止める必要がある」「すぐに紹介状を書くので、明日の朝一番で(消化器内科のある)総合病院へ行ってほしい」と医師。
基準値の10倍? 肝臓の病気? もしかして?
一瞬にして、あらゆる思いが頭をかけめぐりました。同時に私が心配だったのは、この状況を父がどう感じたかということ。何と声をかけるべきか悩んでいると、「明日から入院かもしれないね。どうせなら、新しいパジャマを持っていきたいなぁ」と、何とも呑気な言葉。
父は、とても優しい人。このときも、間違いなく自分が一番不安なはずなのに、私や母のことを気遣って明るく振る舞ったに違いありません。そこで、私たちにも“スイッチ”が入ります。
私:「じゃあ、私が帰りに新しいパジャマを買うよ。何色がいい?」
母:「帰ったら、さっそく準備しないとね」
まるで旅行の準備をするかのようなテンションで、入院に必要な荷物を揃え始める父と母。私も「まずは明日のことだけを考えよう」と気持ちを切り替えて、帰路に就きました。
▶▶次のページ 父の隣で聞いた「余命3ヶ月」という言葉。抗がん剤をする?しない?その選択とは
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