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潜入取材の達人が暴く"ユニクロ潜入"1年

プレジデントオンライン / 2018年2月11日 11時15分

横田増生(よこた・ますお)1965年、福岡県生まれ。アイオワ大学ジャーナリズムスクールで修士号。93年に帰国後、物流業界紙記者・編集長を経て99年フリーランスに。著書に『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』『仁義なき宅配ヤマトvs佐川vs日本郵便vsアマゾン』ほか。

■うちの会社で働いてもらって、体験してほしい

あれは僕に対する招待状じゃないかと思いました、と著者が笑う。「ならば、求めに応じて働いてみようと」。

今や国内に知らぬ者はいないユニクロは、アパレルで世界第3位のファーストリテイリング傘下。グループ総帥は名うての実業家、柳井正氏だ。そのユニクロが、2011年に著者が上梓した前作『ユニクロ帝国の光と影』で劣悪な労働現場の実態を暴かれた。

同社は版元の文藝春秋を名誉棄損で提訴したが、一審・二審で訴えを退けられ、14年末に上告を棄却されて完全敗訴。高額の損害賠償を求めたこの訴訟は「スラップ(批判的言論威嚇目的訴訟)」と批判された。

以降、同社に取材を拒まれ続けていた著者は、年を越したある日、柳井氏の対談記事(プレジデント誌15年3月2日号)を目にする。曰く「悪口を言っているのは僕と会ったことがない人がほとんど」「うちの会社で働いてもらって、どういう企業なのかをぜひ体験してもらいたいですね」――これが冒頭に引用した“招待状”である。直前の司法判断などなかったかのような発言だ。

■いったん離婚して再婚し、妻の旧姓に

これまでにもアマゾン・ドット・コムやヤマト運輸に潜り込んでルポを書いてきた著者は、いわば「潜入取材の達人」。今回は素性を隠すために便宜上、いったん離婚して再婚し、妻の旧姓を名乗った。

「潜入1年、というと長いようですが、実は余裕が全然ありませんでした。休憩や通勤を含む1日の拘束は約10時間。帰宅したら、現場で取ったメモを忘れないうちにワープロで起こすのが日課で、半年分がA4判で約300枚。店外でも50人は取材しました」

■時給1000円のアルバイトをやってみたら変わる

政府や企業の不正や違法が横行すれば、潜入取材や内部告発の価値はより高まる。潜入取材は本業と潜入先の仕事を並行せねばならず、心身ともに負担が大きい。ましてや、過重労働を暴くことが目的なら当然、そこでの労働じたいも激務。文字通りの労作だ。

「柳井さんも、自分が時給1000円のアルバイトをやってみたら変わるでしょうね。あるいは、自分の孫を働かせてみればいいと思うんですよ。そういう話を直接ご本人としようと、何度も取材を申し込んできたわけです」

世に名を馳せた人物も、高慢がすぎれば己の言動を客観視できなくなる。「働いてみれば?」などという放言がなければ、本書が世に出ることもなかったことだろう。

(ジャーナリスト 藤野 光太郎 撮影=永井 浩)

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