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なぜ日本人は結婚すると夫の姓を名乗るか

プレジデントオンライン / 2018年7月20日 9時15分

写真=iStock.com/Satoshi-K

■民法「婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」

2018年1月、サイボウズの青野慶久社長を含む4人の原告が、選択的夫婦別姓制度を求めて国を相手どって提訴した。法的な論点を整理しよう。

夫婦の姓について、民法は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」(750条)と定めている。夫と妻どちらの姓にしてもいいので、制度上、男女の扱いに差はない。ただ、妻が夫の姓を名乗るケースは約96%。これは実質的な男女差別であり憲法違反というのが、従来の夫婦別姓派のロジックだった。

こうした訴えに対して、2015年に最高裁大法廷は、民法の規定は合憲という判断を下す。裁判官15人中5人は違憲を主張するなど意見は割れたが、ひとまず合憲判断が出たことで、しばらく無風状態が続くはずだった。

ところが、数年後の今回の提訴。今回は何が違うのか。弁護人を務める作花知志弁護士は次のように解説する。

「今回、私たちが問題にしているのは、民法ではなく戸籍法。現行の戸籍法には“法の欠缺”があり、憲法に違反しているという主張です」

この主張を理解するには、氏には「民法上の氏」と「戸籍法上の氏」の2種類があることを知る必要がある。民法は家族の権利関係などを決める実体法。それに対して戸籍法は、実体を戸籍という実務に投影させるための手続法だ。通常、「民法上の氏」と「戸籍法上の氏」は同じだが、異なる場合もある。代表的なのは、離婚後旧姓に戻らず、婚姻時の姓を名乗り続けるとき。

「離婚すれば、『民法上の氏』は必ず旧姓に戻ります。ただ、戸籍法に基づいて届け出れば、婚姻時の姓を『戸籍法上の氏』として使い続けられます。氏が変わると社会生活で不利益を被ることがあるので、そのケアとして戸籍法上に規定が設けられました」

■国際結婚の場合、民法上は山田花子、戸籍法上はジャクソン花子

民法と戸籍法の氏が異なるケースはほかにもある。日本人と外国人が結婚したときだ。外国人は日本国籍を持てないため、日本人の「民法上の氏」は結婚後も変わらない。しかし、配偶者と同じ姓を名乗りたければ、「戸籍法上の氏」は外国人姓にできる。たとえば山田花子がマイケル・ジャクソンと結婚しても、民法上は山田花子だが、戸籍法上はジャクソン花子になれる。

日本人と外国人夫婦が離婚した場合も、日本人同士の離婚と同様だ。ジャクソン花子は戸籍法上、山田花子に戻らずに婚姻時の姓を使い続けることが可能だ。

「日本人同士の結婚・離婚、日本人と外国人の結婚・離婚の4パターンのうち、3パターンまでは戸籍法で同姓にするか別姓にするかを選択できるようケアがされています。ところが、日本人同士の結婚だけは別姓にできるような手当てがされていない。これは本来、立法されてしかるべき法が立法されていない“法の欠缺”に該当すると考えます」

今後の裁判に注目だ。

(ジャーナリスト 村上 敬 答えていただいた人=弁護士・弁理士・税理士 作花知志 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)

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