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「わが子の急病・発熱」ケース別対処法9

プレジデントオンライン / 2018年12月13日 9時15分

写真=iStock.com/kiankhoon

子どもが病気になった途端、オロオロしてしまうパパは多いことだろう。緊急事態で活躍するには、「まず子どもの通常の健康状態を把握すること」と、一般社団法人「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」代表の阿真京子さん。「お医者さんが敏感になるのは、親の言う『いつもと違う』という言葉。いまと普段の状態がどう違うかがわかるのは、子育てに参加している親だけなんです」という。

「同じだけの知識と目線を両親が共有していればトラブルを乗り越えやすい。力を合わせないといけないときに、ケンカしてしまう夫婦が多いのは残念です」(阿真さん)

また、小児科を選ぶときのポイントはどこなのか。総合小児科医の森戸やすみさんはこう解説する。

「コミュニケーションが取りやすい医者が一番です。経験上、『発熱に反射的に抗生剤を出さない』『説明なく検査しない』をクリアしているドクターがオススメです」

子どもの病気で気になる疑問を小児医療の専門家2人に聞いていく。

■【1】いまさら聞けない基本編

「朝、息子の熱が37.2℃でした。仕事もあるので、子どもを保育園に連れていってもいいですか?」

【森戸】発熱と呼ばれる体温は37.5℃。これを基準に考え、熱がこれ以下で元気だったら連れていってもいいと思います。ただし37.5℃より下だとしても、調子が悪そうに見えたり、これから上がりそうな様子だったら、やめておきましょう。

解熱剤を飲ませて送り出す人もいますが、数時間で効き目が消えて、結局保育園から呼び出されます。子どももつらいを思いをして、根本的な解決にはなりません。最初から家で休ませるのが一番です。

【阿真】強引に保育園に連れていくと、別の病気をもらって帰ってきたり、思いのほか病気が長引いたり、しっぺ返しをくらうことがあります。体が少し熱かったり、すぐ寝たり、あまり食べなかったり、ちょっと具合が悪いなと思ったら、まずは休ませる。その習慣をつくっておくと、子どもが自分の体調を早めに察知して、「調子悪いかも」とすぐに知らせてくれるようになります。

日常的になっていて、つい忘れがちですが、保育園に長時間預けるほど、体は疲れていきます。平日の疲れが蓄積し、木曜、金曜に体調が下り坂だと感じたら、土日にムリをさせないということが結果的には功を奏します。子どものためにという思いはわかりますが、1度決めた週末の予定を崩そうとしないパパも目立ちます。子どものため、キャンセルする勇気を持ちたいものです。

「保育園に通い始めて2カ月。毎週病気で休むうちの娘は問題があるのでしょうか?」

【森戸】アメリカの権威ある小児科の教科書『Nelson Textbook of Pediatrics』第18版に、小児は平均して年に6~8回風邪をひき、9~15%は少なくとも12回風邪をひくと記されています。少なくともということは、お子さんによっては月1回以上のペースでかかってもおかしくないということ。小さい頃に感染症を繰り返すのは普通のことです。極端にナーバスになる必要はありません。お母さんからもらった免疫力は生後半年でなくなり、そこから数年かかって免疫ができあがり、徐々に風邪もひかなくなります。ただし、入院が必要な重症感染症に年に何度もかかる場合は、免疫系の異常がないかを検査する場合があります。担当した医師に相談してみましょう。

「お医者さんが出してくれるお薬は、とりあえずもらっておいたほうがいいんですか?」

【森戸】昔は熱が出たら抗生剤を処方するのが慣習でした。それもあってか、「前回抗生剤で治ったから、また出して」と言われることがあります。しかし抗生剤は細菌には効果がありますが、ウイルスによる風邪には効きません。「せっかく来たのに薬を出さないのも悪い気がするな」と考えて処方する医者が多いのが実情です。

薬に頼らず治るのが一番の理想ですから、「薬は飲ませたくない」「要らない」という要望があれば、それに沿って対処します。希望を言うのは全然失礼ではないし、医者としてはぜひ言ってほしいです。たとえ医療費の助成で窓口の支払いがなくても、処方箋の発行や薬の提供で医療費は発生しています。その薬を飲まなかったり、余ったからといって捨てるのは、いろんな面でムダということも再確認しておきましょう。

薬が残っている状態で症状が治まった場合には、それ以上飲まなくていい薬もあるし、症状がなくても続けて飲む薬もあります。最後まで飲んだほうがいいかどうかは医者や薬剤師さんに聞きましょう。説明義務があるので、丁寧に教えてくれるはずです。

▼地域外でも重宝するスマホアプリ
《教えてドクター》
長野県の佐久医師会と佐久医療センターが中心になって作成。子どもの症状や病名を選ぶと、病院受診のタイミングや家庭でのケアの方法などを教えてくれる。予防接種のスケジュールを月別に表示する機能や災害時の子どものケアまで盛り込まれている。
《小児救急支援アプリ》
大阪大学、大阪市立大学、大阪市消防局が共同開発。子どもの病気やけがの症状をチェックすると、緊急性を判断してくれる。大阪府内では119番通報への誘導や看護師に救急医療相談ができるが、大阪府以外でも救急車を呼ぶ判断の目安に。

■【2】救急対応・病院探し編

「夜、娘の熱が39.5℃まで上がりました。すぐ救急外来に行ったほうがいいですか?」

【森戸】医療機関は午前9時から午後5時までの診療時間が多く、それ以外は時間外になります。ただし時間外は必要最小限の人数でやっているため、「急場をしのいで、翌日までつなぐところ」と認識してください。日中に比べて、できる検査も少ないし、処方できる薬も限られています。

判断に迷ったときは、♯8000にお電話を。もしくは市町村広報やHPを見ると、時間外で対応してくれる病院や医師会などの情報が載っています。近くの医療機関に電話して「時間外だけど行ってもいいか」と問い合わせるのもいいでしょう。

症状の目安としては、生後6カ月未満で、発熱、母乳やミルクを半日以上飲まない、咳が止まらない、何度も吐くような場合はすぐ医療機関に行きましょう。年齢が低いほど症状が出にくく、発熱だけでも重い病気ということがあるからです。それより大きい子は、咳がひどい、何度も吐く、痛みが治まらないなど、眠れない状態が続くようであれば救急外来へ。もし吐いたのが一回だけだったり、痛みが止まったなら、家で様子を見たほうがいいと思います。

【阿真】熱はあるけれど、機嫌もよく排泄も順調で、元気だったら救急外来に行かなくても大丈夫なケースが多いです。熱以外に+αの症状があったら、検討するようにしましょう。

「息子がゼーゼーと呼吸をしていて苦しそうです。何科に連れていけばいいですか?」

【森戸】子どもの病気は、なんでも小児科へ向かえばいいわけではありません。小児科は内科の子ども版。切ったり縫ったりは基本できません。

大人だったらどの科へ行くか考えると、間違いは減ります。ケガをしたら整形外科。頭を打ったら脳外科。皮膚や爪の疾患は皮膚科。ただし体温が上がって発疹がある場合は水ぼうそう、手足口病などの可能性があるので、小児科のほうがいいかもしれません。

質問のような症状は、鼻づまりがつらくて吸引してほしいのであれば耳鼻科でもいいですが、内科系なのでまず小児科でいいと思います。

また、「小児科/内科」「内科/小児科」という看板を掲げている診療所は、医師が1人であれば、専門の科を先に標榜しています。つまり、子どもに詳しいのは前者。内科だと子どもの食物アレルギーや成長発達についてよく知らないこともあるので、基本、未就学児は小児科専門に行くようにしましょう。

ただし、専門以外の科を標榜しても違法ではないため、小児を診る研修を受けていなくても、小児科を標榜する診療所もあります。一方で周囲に小児科がないという理由でよく勉強し経験豊富な内科医もいるし、関心が狭く不勉強な小児科医もいます。どの科がベストかは、足を運んでみないとわからないのです。

「引っ越してきて小児科を探しています。口コミサイトを参考に選んでいいですか?」

【阿真】私の家の近所に、優しくて「どうしますか?」と親に判断を委ねるA先生と、きつめで「こうだ」と言い切るB先生の、2つの診療所があります。決めつけられたくないママはA先生を、はっきり言ってほしいママはB先生を選んで、評価は真っ二つに分かれます。

どちらが正解ということはありません。人の評価はあくまで目安として考え、自分との相性で選ぶのが一番です。

【森戸】「患者満足度」と「いい医者」は、一致しているとは限りません。患者の言う通りやってくれると満足度は高くなりますが、それがいい治療かどうかは別問題ですから。なので口コミの評価は参考までに!

▼救急車を呼ぶか悩んだらまずはここへ電話
《#8000》
全国共通の小児救急電話相談の番号。住んでいる都道府県の相談窓口に転送され、小児科医、看護師が対処の仕方や病院に関してアドバイスをしてくれる。時間は限定されており、担当が少ないとつながりにくいこともある。
《#7119》
消防庁が開設する救急相談センター。365日24時間、大人の相談にも対応するが、設置されているのは北海道、東京、愛知、奈良、大阪のモデル地区のみ。#8000より緊急性が高く、救急車を呼ぶか迷ったときにはお電話を。

■【3】役立つ情報検索編

「子どもの病気をスマホで調べますが、サイトがたくさんあってどの情報が正しいのかわかりません。」

【阿真】ネットの情報は玉石混交。可愛いデザインで平易な文章のサイトをつい読んでしまいますが、よく見ると個人的な経験を語っているだけで、医学的判断とかけ離れていることも少なくありません。

そこで信用したいのは、裏づけのあるデータ。たとえば感染症のことなら国立感染症研究所のサイト、子どもの病気全般なら国立成育医療研究センターのサイトなどです。学術的なデータも載っていますが、素人でも読みこめば内容が理解できます。病名を検索すると怪しい説がどんどん出てきて、正確な情報に行き着くまで時間がかかることもありますので、はじめから信頼できるサイトにいくのが最短コースです。

【森戸】監修者に医者がついているかはひとつの目安になりますが、妙な説を唱える人もいるので注意が必要。また情報はネットにだけ存在するわけではありません。母子手帳にも有意義な情報が記されているので、ぜひ参考にしてください。

もし調べた情報と医者の見解が違う場合は、納得できるまで医者と話をするべきです。情報と違うという理由だけでほかの医者に向かうと、次々医者を変えて問題の解決から遠ざかることも多いので。

「予防接種を調べたら、数が多くて大変そうです。任意のものは受けなくてもいいでしょうか?」

【森戸】予防接種には、BCGやMR(麻疹・風疹)、四種混合、ヒブ、肺炎球菌などの定期接種、それ以外の任意接種があります。重要性が高いもの=定期接種と思っていないでしょうか? そうではなく、国や自治体の予算確保が難しいワクチンが任意になっているだけです。日本では任意接種扱いのロタウイルス、おたふくかぜのワクチンはほとんどの先進国と多くの途上国で定期接種です。髄膜炎菌ワクチンが定期接種に入っている国もあります。つまり任意接種も重要なので、全部受けておきましょう。なお任意接種ワクチンには助成が出ている市区町村もあり、クリニックによって料金が異なります。

インフルエンザワクチンは、効く、効かないと説が分かれていましたが、近年の報告では効果があるという論文が続々と出ています。乳幼児と老人は重症化しやすいので、私は受けることをお勧めします。

「予防接種の副作用(副反応)は心配ないでしょうか?」

【阿真】予防接種をネットで検索すると、「あぶない」「打ってはいけない」などの情報が次々出てきます。こんなに副反応ばかり伝えられては、ママが怖くなるのも当然です。

そこで改めて予防接種のメリットを理解しておきましょう。たとえば細菌性髄膜炎。かつて年間1000人が感染して、20%が重症になり、5%が亡くなっていました。それがヒブ感染症と肺炎球菌のワクチンが普及してから激減して、いまは年間の感染者が1桁台です。

【森戸】副反応の危険はあります。でも、副反応のリスクと感染症のリスクを比べて、前者のリスクが圧倒的に低いワクチンしか、ありません。ワクチンは、感染症で過去にたくさんの方が亡くなったり、合併症や後遺症を残したりしたため、それを予防するためにできました。公衆衛生の向上、医療技術の進歩で感染症の被害が周りから減ると重要性を見失ってしまいますが、その事実は忘れないでほしいものです。

また日本ではワクチンの同時接種が一般的でなかったため、1度に何本も受けることを嫌がる患者さんや医者がたまにいます。しかし世界的には20年以上の歴史があり、副反応のリスクは単独で受けたときと変わりません。

▼信頼できる小児救急・予防接種情報
《こどもの救急》
日本小児科学会が監修・運営しているサイト。発熱や吐き気などの気になる症状から、当てはまる状態をチェック。「急患診療所へ行くとよいでしょう」「おうちで様子をみましょう」のように診断してくれる。リンク集も充実。
《KNOW☆VPD!》
「ワクチンで防げる病気(VPD)を知って子供たちの命を守ろう」がコンセプトのサイト。おすすめの予防接種スケジュールがダウンロードでき、全国の小児ワクチン助成情報、予防接種Q&Aなど、関連情報を網羅する。

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阿真京子
一般社団法人「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」代表
1974年生まれ。日本語講師、飲食店経営を経て、2007年に同会を立ち上げ、12年に法人化。小児医療の環境改善に尽力する。3児の母。
 

森戸やすみ
1971年生まれ。一般小児科、NICU勤務などを経て、現在は小児科クリニックの院長を務める。2児の母。著書に『小児科ママの「育児の不安」解決BOOK』(メタモル出版)、『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)など。
 

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(一般社団法人「知ろう小児医療 守ろう子ども達の会」代表 阿真 京子、総合小児科医 森戸 やすみ 構成=鈴木 工 撮影=岡田晃奈 写真=iStock.com)

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