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実家暮らしで油断してると野垂れ死にする

プレジデントオンライン / 2019年1月31日 9時15分

※写真はイメージです(写真=iStock.com/recep-bg)

「実家暮らしはお金が貯まる」とはよく言われる。だが、実家暮らしでも給料の大半を趣味につぎ込んでしまっていたら、貯金はできない。毎月25万円と給料の半分以上をレコードやライブにつぎ込み、独身生活を謳歌していた男性が、危機感を抱いてファイナンシャルプランナーの元に駆け込んできた。長年の浪費癖を治すことはできるのだろうか――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山氏のもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

■趣味にすべてをつぎ込む“オタク貧乏”

有名IT企業勤務の高橋義大さん(33歳/仮名)は、超がつくほどのロックマニア。音楽雑誌にも寄稿するほどの知識とコレクションを持っていました。

年収は約650万円。都内の実家に住んでいるため、生活には余裕があります。それをいいことに高橋さんは給料の大半をレコードやライブにつぎ込み、独身生活を謳歌していました。しかしお付き合いしている女性との結婚を両親にせかされたことから、お金のことを一度見てもらおうと、私のもとに来てくれたのです。

そんな彼の支出を見てわかったのは“オタク貧乏”とも言うべき散財っぷりと、実家寄生による経済感覚の乏しさでした。趣味に生きる方には特にご一読いただきたい内容です。

■給料の半分以上が趣味に消える浪費癖

ファイナンシャルプランナーに相談するのが初めてという方の場合、まずは支出の内訳を書き出してもらいます(家計簿があればそれを拝見します)。そうして高橋さんのデータを分析してみると、毎月25万円ほどを音楽につぎ込んでいたことがわかりました。手取りがだいたい35~38万円なので、いかに趣味にかけるお金がハンパないものかおわかりいただけると思います。

「貯金ないなーとは思ってましたけど、まさかこんなに使ってたなんて……」

高橋さんもさすがにその数字に驚愕し、己の浪費癖にひいているようでした。

支出をさらに詳しく見ていくと、同じレコードを何枚も持っていたり、同じCDを何枚も集めたりしていることも判明。人の趣味に文句を言う気はまったくないのですが、実家暮らしでいくら余裕があっても、これでは貯まるはずがありません。

高橋さん自身30歳を過ぎていまだに親と同居し、好きなことに好きなだけお金を使っている現状に罪悪感もあったようで、「女性のファイナンシャルプランナーの方なら怒られないと思ったのでお願いしました」と言っていました。ちょっと気弱な方でもあるんです。そのためか、保険のおばちゃんの営業も断れないようで、似たような保険にいくつも入っていました。

■「このままいくと、野垂れ死にっすね」

とはいえ、もともと頭のいい高橋さん。現状の数字を“見える化”したことですぐに危機意識が芽生えたようでした。さらに畳み掛けるように「このままいくと将来のキャッシュフローはこうなります」という未来予想図を見せたことで、「60歳の俺、このままいくと野垂れ死にっすね」となり、ある種のショック療法になったようでした。

こういった浪費癖のある相談者には、還暦までのキャッシュフローを確認してもらっています。特に男性は数字で見せられると「ハッ!」となりやすいです。夫や息子の金遣いに心を痛めている奥さまは、ぜひショック療法を検討してください。

ただ、高橋さんが毎月給料の大半を趣味に使ってしまうのは音楽オタクだからというだけでなく、仕事のストレス発散という側面も大きいようでした。クライアントの無茶ぶりや上司の無理解といった平日のウサを、週末のレコード屋やライブで晴らす。そうして高橋さんは精神の均衡を保っているようでした。

■急激な締め付けが散財を招くこともある

そんな時に大幅に小遣いを削減してしまうと仕事にも影響が出かねません。このためひとまず10万円を音楽の予算としました。そして生活費を除いた残り約15万円を給料から天引きされる財形貯蓄にあてることに。数カ月かけてある程度貯金ができたら、その時にまた運用を考えようと話しています。

毎月10万円という「音楽費」はかなり多いのですが、浪費癖のある方に突然急激な締めつけを強いると、その反動でさらに散財してしまったり、ストレスがたまって貯金自体をやめてしまったりすることがあります。そのため高橋さんのように徐々に減らしていき、都度、状況を話し合いながら決めることが有効です。

皆さんお金の相談でいらっしゃるわけですが、結局はこうして人生相談と言いますか、お客さま自身の闇に向き合うような作業になっていきます。

人というのは、見たくないものには蓋をしてしまう生き物です。薄々「まずいな~」と感じているのに、とりあえず生活できているからいいやと、自分の懐事情を見ないようにしてしまう。そんな時、ファイナンシャルプランナーであるわれわれがグサッと現状を突きつけることで、変化のスイッチを入れるお手伝いができるのかもしれません。

■無意識のうちにコンビニで15万円

過去には、毎月15万円をコンビニで使っていた女性もいました。彼女は高橋さんのように好きで使っていたわけでなく、会社の下にある利便性からなんとなく、ストッキング、生理用品、お弁当……等々、日用品のありとあらゆるものをコンビニで買っていました。もちろん本人に自覚はなく、支出の見える化をしたところ、衝撃の数字が現れたのでした。

毎月身を粉にして働いたお金のうち15万円分がコンビニに消えていたことを知った彼女は一気にスイッチが入り、コンビニ支出は2万円まで減らすことができました。

高橋さんやこの女性だけでなく、本連載でお伝えしてきた全員からは、年に一度、必ず連絡があります。彼らは自分たちのことを金銭的に“ワケあり”だと自覚していて、ファイナンシャルプランナーを魔除けとして使っているような気がします。それは私としては大歓迎です。

■実家暮らしは最終的に損をする

あともうひとつ、高橋さんには大きな問題がありました。それは実家暮らしであることです。

貯金という側面から見れば、家賃や生活費が大幅に削減される実家暮らしは間違いなく良いことづくしです。地方から出てきて一人暮らしをしている同期に比べ、都内で実家暮らしをしている高橋さんはスタートダッシュが違います(それでも彼の場合は貯金できなかったわけですが)。

しかし、当たり前ですが親はいつか死にます。親亡き後、突然一人暮らしをはじめると、精神的自立が遅れるだけでなく、経済観念が培われず、生活に行き詰まる恐れがあります。

お金のスキルは一朝一夕で身につくものではありません。相談者を見ていても、最終的にお金に困っていないのは、きちんと自立してコツコツやってきた方です。

まだ結婚に前向きではなかった高橋さんですが、そういった意味ではこの機会に世帯を持つことで、さらなる貯蓄が可能になるかもしれません。私は魔除けとして、彼の道行きを安心させる存在になればと思っています。

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高山一恵(たかやま・かずえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
Money&You取締役。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。慶應義塾大学卒業。2005年に(株)エフピーウーマンの創業に携わり10年間取締役を務めた後、現職へ。主に女性向けに、全国で講演、執筆・監修、書籍、マネー相談を行っている。著書に『マンガでわかるiDeCoのはじめ方 ライバルはイデ子!?』(きんざい)、『35歳までにはぜったい知っておきたいお金のきほん』(アスペクト)など多数。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFP®)、1級FP技能士 高山 一恵 写真=iStock.com 聞き手・構成=小泉なつみ)

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