「相続したボロ家」に稼いでもらう方法

プレジデントオンライン / 2019年2月24日 11時15分

AFLO=写真

不動産を「負の遺産」ではなく「優良な資産」にするためには、どうすればいいのか。専門家に話を聞いた。第4回は「実家処分編」――。(全4回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年12月3日号)の掲載記事を再編集したものです。

■マイナス資産を、プラスにする法

両親が他界して、空き家になった田舎の実家。どうしようと思いあぐねながら、そのまま放置している例が多い。古い家でも、処分してお金に換えることはできるのか、それとも何かうまい再利用の道があるのだろうか。

ずっと独り暮らしだった親が他界し、故郷の実家の土地・建物を相続した。だが、自身はその実家から長いこと遠く離れて暮らしているうえ、築年が古く、家の中の家財道具もそのまま残っている。

売ろうにも売れず、あんなボロ家に借り手がつくとも思えず、途方にくれたまま時間だけが過ぎてゆく。何かよい手立てはないものだろうか。

「最近、そういう相談が増えています」――不動産業のエージェントサービス(埼玉県さいたま市)代表・石井成光氏が言う。

「そういう相談で、皆さんがまず口にするのは『いくらで売れるか』ですが、業者サイドとしては、あまり扱いたくない案件ですね……」

理由は、多くの場合商売にならないから。石井氏は「それも立地によりけりなのですが」と前置きして、「例えば、首都圏エリアで都心から30~40キロ圏内の市街地ならば、業者は歓迎でしょう。しかし、その圏外となると、買い手がなかなかつかぬうえ、土地・建物の評価額がガクンと低くなり、手数料収入では見合わなくなります」。

地方都市の場合もほぼ同様。通勤圏を外れると、売るのは相当に難しくなる。問題は立地ばかりではない。実家を売りたいという相談の対象家屋には築30年、40年以上という築古物件が多いのだ。

長く空き家であったがゆえに傷んだり、傾いたりと、そのまま住むのに適さない物件も少なくない。では、いっそ家屋を取り壊して、更地にして土地を売ってはどうか。

「やはり見合わないでしょう。家財の処分費用や家屋の解体費用がかかります。地方都市の郊外では、土地価格が坪約5万~6万円のところが多いのですが、解体費用は概ね坪5万円ほどが目安。業者に頼んで家財を廃棄物として処分するにも、数十万円はかかります」(石井氏、以下同)

石井氏は、依頼があれば家の売買、または解体と土地売買の見積もりはする。しかし、たいていの場合、見積もりを見た依頼者からは音沙汰なしになるそうだ。

■投資額は、賃貸なら300万~400万円

そのままでは売れない、家を壊しても見合わない。空き家のまま放っておいても固定資産税などの維持費はかかる。八方塞がりじゃないか。

「いえ、貸すという手がありますよ」

えっ、他人に? あのボロ家を?

「実家を処分したいという方は、何とか売れないかとは考えるが、貸家にすることを考える方は意外と少ない。ボロ家のままではだめですが」

人が住めないほど傷んだ状態なら、当然話にはならない。しかし、住む分には問題がないのなら、壁のクロスを張り替えたり、傷んだ建具や水回りを直すなど、多少のリフォームを施せば、戸建て貸家として通用する物件は多いという。

「最近まで親が住んでいた家なら、28~30坪程度でも借り手はつきます。地方都市の郊外でも、戸建て賃貸は利回り10%くらいで回せます。リフォーム費用も回収できますよ」

立地と物件にもよるが、ワンルームのアパートの賃貸相場が3万円程度の地域なら、戸建て貸家の家賃は6万~7万円ほど。しかも「戸建て貸家にすると売れる」ともいう。

「戸建て賃貸は、投資物件として需要があります。新築のマンションや戸建てだと、投資額は数千万円になりますが、築古物件の賃貸なら、せいぜい300万~400万円ほど。築古物件を買ってリフォームし、入居者をつけて売るというビジネスは、弊社も手がけています。けっこう買い手も多いんです」

とはいえ、素人のわれわれでは、どれくらいの費用をかけて、何をどうリフォームすればいいのかわからない。実家のある地域とはいえ、不動産事情や家賃相場にも疎い。

「地元の不動産業者に相談するのが近道だと思います。地方には、戸建て貸家を扱う業者が案外多いんです。信頼のおける中堅どころを選ぶのがいいでしょう」

築古物件でも、戸建て賃貸が見込めれば、リフォームから入居者の募集、その後の運営・管理までを引き受けてもらえるだろうと石井氏はいう。築古の実家を持つ身、これでだいぶ肩の荷が軽くなった。

■賃貸利回りは、30~40%

東大阪市に、築古物件を戸建て賃貸として再生させるばかりではなく、不動産投資家とのマッチングまで行う団体があると聞き、訪ねてみた。

一般社団法人・全国古家再生推進協議会。会員数は約3000人で、実際に再生した物件は600軒を超えるという。

「うちで扱ってきたのは、ほとんどが築40年前後の築古物件です。20坪以下の狭小住宅も多い」――そう語る理事長の大熊重之氏は、オークマ工塗という部品塗装会社を営む。

本業の傍ら、同協議会を設立したのは2014年だが、不動産に目を向けたのは10年ほど前にさかのぼる。

■「皆さん、築古物件を過小評価しています」

「あるきっかけで買った中古マンションをリフォームし、賃貸に出したのですが、まったく借り手がつかない。そこで、塗装のスキルを生かして、今までにないカラーリングの住戸にしたら、すぐに借り手がついたんです」(大熊氏、以下同)

写真=iStock.com/miura-makoto

同じ手法を戸建てで試みたら、これが「バッチリ当たった」。それから、築古物件のリフォーム・賃貸化の依頼を受けるようになった。相続した実家の処分についての相談も増えたという。これまで福岡県北九州市や石川県、山梨県などの物件を手がけ、「8割は何とかなる」と大熊氏は自信を見せる。

「だいたい皆さん、築古物件を過小評価しています」と大熊氏はいう。

「特に相続して放置しておいた家だと『こんなボロ家を借りる人、ほんまにおるんか』と言います。でも、私たちの目で見ると、これはいいものになるなという物件が実に多い」

なまじ思い出の詰まった土地建物だけに、ボウボウの雑草や雨漏りという惨状を見るだけで気持ちが萎えてしまうのも無理はない。が、見かけによらず、修復が十分可能な案件は少なくないのだ。

「“ゴミ屋敷”もきれいにすれば何の問題もないし、シロアリは多くの場合、食われているのは家屋の一部だけ。傾いていても、床だけ修理すればよいケースもあります。見た目であきらめないことです」

大熊氏は、自身で培ってきた古家再生のノウハウをマニュアル化。人に指導できる仕組みづくりを徐々に整え、協議会の設立に至った。

同協議会では、築古物件の戸建て賃貸化をコーディネートする古家再生士の認定を行っており、依頼に対しては入居者付け、賃貸契約まで面倒をみてくれる。投資家向けには、古家再生投資プランナーというアドバイザーの認定制度もある。

「大手の不動産会社や工務店へ行くと『建て替えましょう』といわれる。相続した実家に何千万円もかけられる人なんて、そうはいませんよ。リフォーム会社に相談したら、500万~600万円もかかり、貸し出そうとしたら、家賃がその地域の相場より大幅に高くなって、結局は借り手がつかなかった。そんな話もよく聞きました」

実は、築古物件を戸建て貸家に再生する場合、ここが成否の重要なポイントになる。工務店が示したリフォームにかかる費用をもとに家賃を算定するという発想では、失敗する可能性が高いのだ。

では、どうするのか。大熊氏はまず「利回りをつくる」ところから始めるという。賃貸利回りを設定し、次にその地域の家賃相場を調べて、その利回り達成に必要な投資額=古家の再生費用を決めるわけだ。スタンスはマイナス資産の処分ではなく、どれくらい儲かるかを模索する投資家である。

実際、どれくらいの利回りが期待できるのか。同協議会の再生プランでは、古家であるがゆえのその家の良さや、地域性に合わせ、他の戸建て賃貸との差別化も図っているという。それもあって、賃貸利回りは関西で14~15%、関東で12~13%が標準ライン。相続した家は、買い入れ費用がないので、利回り30%~40%が標準だという。相談を受けて再生を勧めるかどうかの判断ラインも、この利回りを指標としている。

「今は取引のほとんどがネット経由なので、需要のボリュームゾーンを外した家賃設定は、借り主の検索に引っかからなくなります。十中八九、うまくいきません」

■固定資産税が、3~6倍になる

大熊氏が実際に相談を受けた大阪・四條畷市の物件を見てみよう。東京在住の40代・共働き夫婦が、認知症となった妻の父親の死後、ゴミ屋敷化した実家を相続。「そのまま売却したら、坪20万円くらいで900万円、解体費用は業者の言い値です。200万円取られれば、残るのは700万円程度」

将来の自らの居住を考えて、費用を通常より100万円程度上積みしたため、利回りは20%台となったが、それでも4年半で取り戻せる計算だ。

石井・大熊両氏は「相続した実家は放置せず、なるべく早く再利用を考えたほうがいい」と言う。15年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」がその根拠である。石井氏は「下手をすると、固定資産税が3~6倍になることもありうる。倒壊の恐れなどから、自治体に『特定空家等』に指定されると、改修や取り壊しなどの指導を受けます。従わないと税の優遇措置が取り消され、固定資産税が跳ね上がります」と言う。

全国の空き家数は、13年段階でおよそ820万戸(総務省統計局「住宅・土地統計調査結果」)。今後も増え続けると見込まれている。

「空き家の賃貸再利用は、持ち主も借り主も、地域の人もハッピーになる話」とは大熊氏。「100万円や200万円のリフォーム費用はかかるけれど『実家をどうしようか』と手をこまねいているより、これを投資だと考え、大家になって利益を得る道を選ぶほうが得策ですよ」

確かにこれは、大いに検討する余地がある。

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石井成光
エージェントサービス社長
不動産営業マンを経て独立し現職。日本版バイヤーズエージェント。著書に『素人でもできる賢くマンション・住宅を売る方法』ほか。
 

大熊重之
全国古家再生推進協議会理事長
塗装業のかたわら古家再生で経営者・サラリーマン・主婦の大家を生む。共著に『儲かる!空き家・古家不動産投資入門』。
 

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■▼【図1】実家を過小評価しがちなポイント5

(ライター 高橋 盛男 撮影=石橋素幸、水野真澄 写真=AFLO、PIXTA、iStock.com 写真提供=木下 修)

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