富裕層や政治家が「名医」にかかれるワケ

プレジデントオンライン / 2019年2月24日 11時15分

アフロ=写真

各種ランキングで上位入り、TVドキュメンタリー番組の主人公ともなる凄腕の医師たち。彼らに診てもらいたい! という願望は叶うのか?

自分の体にメスが入ると考えれば、不器用な医者に手術されるのはごめんだ。願わくば「名医」と呼ばれる腕利き医者にかかりたい。そんなニーズに応えるかのように、出版物やインターネットには名医ランキングなど、名医に関する情報が広く出回っている。だが、そこで紹介されているのが本当に名医なのかどうか、疑問に思ったことはないだろうか。

■「"数"は信用に値します」

腕利き医師として広く信頼されている、ある匿名外科医は「“数”は信用に値します」と断言する。

「腕がいいといわれる医者は、手術など技術が問われることが多いですよね。ならば、手術症例数が多いほど腕がいいといえます。さまざまな病院が『この病気ならあの先生へ』と信頼して紹介してくれている結果ですから。『数が多いからといってうまいわけじゃない』という人もいるけど、それは腕がない医者のやっかみ。うまい医者のところには自然と患者が集まるものです」

ただ、名医の存在を知ったところで「強いコネがなければ、診てもらえないに違いない」と諦める向きもあろう。

実際のところは、どうなのだろうか。

■政治家が名医に近づけるのは"ルートを知っている"から

「富裕層や政治家、有名芸能人であれば、名医とストレートにアクセスできることが少なからずあります」

そう語るのは、日本の医療を研究する会代表理事の川田諭氏だ。

「しかしそれは、お金を積んでいるわけではなくて、ルートを知っているからなんです」

ある与党国会議員のベテラン秘書が、その川田氏の言葉を裏付ける。

「国会議員の医師へのアクセス法は2通り。1つは支持者の陳情によるもの、もう1つは議員本人が入院する場合です。前者の場合、医療政策課など都道府県庁の医療を仕切る部署に秘書が連絡して、目当ての病院の病院長に一報を入れさせます。病院長は、行政に病院の増床の許認可を握られていることもありますが、政治好きの病院長も多く、受け入れはスムーズ。国会議員自身の入院は、地盤は近いが敵対関係にない、医療に強い他の議員に直接お願いすることが多い」

結局は地位や名声、コネがモノを言うのか――。ところが、そうとも言い切れない。「昔は大学病院で政治家の紹介というケースをよく見聞きしましたが、今はどうでしょうか」と疑問を呈するのは、紀尾井町内科の市村有紀子院長。「最近は礼儀をわきまえていない政治家が多く、無理に紹介しても逆に顔をつぶされてしまうこともあります。政治家という肩書で押し込めるという時代ではなくなってしまったんです」と、その効力には否定的だ。

一方、冒頭の匿名外科医は、

「『強いコネによる紹介だからいい治療を受けられるに違いない』と思い込んでいる患者に限って、採血すら私にやってほしいとゴネる。私には私にしかできない治療法があり、それを待っている患者がいるということも理解してほしいですね。どんなコネがあろうと、常識外れな要求をされればいい感情は持てません」

と、迷惑そうに本音を語る。

■名医にアクセスするなら紹介状は必要

「たしかに、親しい人から紹介された患者であれば、ちょっとした空き時間に『病室に顔を出しておこうかな』『雑談をしてリラックスしてもらおうかな』というくらいのことは考えるかもしれません。ただ提供する医療行為の質は、どんな人からの紹介であろうと、どんなバックグラウンドを持った人であろうと同じです。なぜなら、その一つ一つが治療成績の結果となるから。医師として興味があるのは病気そのものなんです」(匿名外科医)

いずれにせよ、名医にアクセスするには、紹介状は必要と考えたほうがいいだろう。そもそも、名医と呼ばれる人の大半は設備の整った大病院に所属しているため、紹介状がなければ特定療養費が数千円から2万円程度かかってしまう。紹介状は、自分のかかりつけの医師に頼むのが普通だ。

「この医師にかかりたいと具体的に要望すれば、紹介状は必ず書いてくれます。紹介状を受け取った医師が拒むことはありませんから、目的の名医に到達することならできます。ただ、実際に受診できるまで“○カ月待ち”する覚悟は必要。もちろん緊急性がある場合は、かかりつけ医から『急いで診てください』と相手の病院に伝えてもらえば、早く診てもらえる可能性はあるでしょう。付け加えると入院だけでなく通院が必要となったときに、通える距離かどうかも大事」(市村氏)

患者の病状に最もフィットした名医を紹介してくれるなら、理想的だ。

■大学病院の"関連病院"から本丸に近づく

「40歳以下の医師は、新しいカリキュラムによる臨床研修を受けており、基本的に全科目を診ています。問診の際も患者を上から見下ろす先生然とした態度は否定され、患者に寄り添う教育を受けています。ある程度、経験を積んだ35~40歳の開業医の中にはいい先生が多いです」(川田氏)

だが現実には、医局繋がりや地域繋がりで親しい医師(病院)にばかり患者を右から左へと機械的に送り込む開業医が少なくないことには注意が必要だ。ただ、その繋がりの強さによる恩恵にあずかれることもある。

「有名な大学病院の関連病院は全国に散らばっています。そこからアクセスするのが本丸に近づく1つの道。大学病院のHPなどに○○会といった文字を見つけたら、そこをたどっていけばいい。また、大きな専門病院の近くに同じ分野を専門にするクリニックがあれば、両者の繋がりが深いことが多いです」(川田氏)

大学医学部同窓会のHPからスタート●大学医学部同窓会HPにあるメンバー勤務先施設のマップから、目当ての医師にアクセスできる可能性も。写真左は慶大(三四会)、右は順天堂大医学部同窓会HPより。

もっとも、注意すべき点はある。

「あちこちの医師にやたら接触するドクターショッピングに走らず、まずは近所でいいかかりつけ医を1人見つけ、いい関係を結ぶことが、名医にアクセスする最善の方法でしょう。困ったときにいつでも相談できるような付き合いを普段から保つことが重要。我々開業医も、それぞれの疾患に適した最善の病院やドクターを人柄も含めて把握し、ネットワークを構築しておく努力をすべきだと思っています」(市村氏)

浮わつかず、まずは基本から……ということのようだ。

(小澤 啓司 写真=アフロ)

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