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おにぎり5000個を売るコンビニ店長の技

プレジデントオンライン / 2019年3月15日 9時15分

JR東日本リテールネット 東京支店エキュート京葉ストリート マネージャー 君塚保二氏

日本一の売り上げを誇るコンビニが東京駅構内にある。コンビニの1日平均売上高は、大手各社が60万円前後の中で、約1000万円と桁違いだ。日本一忙しい店長のマルチタスク術を聞いた――。

■自分で考えて動けるスタッフを育てる

私が店長を務める「ニューデイズエキュート京葉ストリート」は、東京駅にある複数のニューデイズの中でも、最大級の“旗艦店”という位置づけです。東京駅の乗降客数は全国屈指で、通勤のお客さまのご利用が多いことに加え、新幹線乗り場や京葉線ホームへの連絡通路にも近いため、店の周辺は出張に行くビジネスパーソン、観光客などでいつも賑わっています。

当店の忙しさのピークは朝7~8時。主力である弁当・飲料やお土産類が飛ぶように売れます。例えば、「おにぎり」の1日当たりの販売個数は、およそ5000個(2018年11月)。1日当たりの平均ご利用者数は1万人を超えます。年末年始などの繁忙期には、お土産類など高単価の商品がよく売れることもあって、日販が1000万円を突破することも珍しくありません。

店長として短時間で多くの仕事を手際よくこなすために重要なのは、スタッフに仕事を任せること。私1人だけの力では、日本一忙しいコンビニのオペレーションを回すことは難しく、運営のカギはスタッフが握っているのです。

当店は現在、登録しているパート・アルバイトの方を含めるとスタッフが65人います。各スタッフのシフトは私が組んでいるのですが、全員と密にコミュニケーションを取るように心がけています。それに、当店のように忙しい店では、一つひとつ指示をしないとスタッフが動かないようでは、運営に支障をきたしてしまいます。そもそも私は24時間お店にいるわけではないので、スタッフのみで店を運営する局面が必ず出てきます。そこで、当店は、パート・アルバイトの方であっても、自分で考えて動けるような働き方にしました。

例えば、商品発注は、基本的に担当のパート・アルバイトの方に一任しています。そのほうがスタッフのモチベーションが上がり、定着率がよくなるようです。経験の浅い人でも、これまでの販売情報に基づいた「自動発注システム」を活用しながら、簡単に発注ができるようにしています。

■翌朝のピークに備え、夜中に一気に品出し

ニューデイズは、他社のコンビニと違って24時間営業ではなく、鉄道の運行時間に合わせて営業するのが普通。当店も、営業時間はほかのニューデイズよりは長いのですが、5~24時となっています。とはいえ、商品回転数が「ハンパない」ため、バックヤードは24時間フル稼働の状態。とりわけ、販売のピークである朝に合わせて、商品を夜間に大量搬入するので、「夜にシャッターが下りてからが最も忙しい勝負時」といっても、過言ではありません。

当店はできる限り作業時間を減らすために、お店として独自の工夫を施しています。その代表例が当店の売れ筋であるおにぎりの陳列棚。皆さんもよく見かけると思いますが、コンビニでは通常、おにぎりを売り場の通路から棚に補充します。しかし、当店はおにぎりをバックヤードから直接、棚に補充できるようにしています。そのため、品出し作業にムダが少なく、在庫が滞留しません。一方で、売り場での補充作業をなくせるため、お客さまのお買い物を妨げなくてすみます。

このほか、冬場はホット飲料も大量に売れるので、バックヤードでは常時、約400本の在庫を温めておき、店頭が品薄になったら、こまめに補充できるようにしています。

また、東京駅のコンビニならではの事情ですが、売り場のレジでは、お土産の種類に合わせてそれぞれ別の袋に入れる必要があります。作業に手間がかかるため、レジ下の棚に袋をあらかじめ小分けにしておき、すぐに取り出せるようにしています。

■お店もお客さまもハッピーな店づくり

店舗サイドの時間管理はもちろんですが、実は、「お客さまの時間管理」も極めて重要といえるでしょう。お客さまにストレスなく、スムーズにお買い物をしていただくことは、顧客満足度を引き上げ、集客力を高めるだけではなく、接客や品出しの負担も軽減し、店舗運営の効率化にもつながるのです。とりわけ、時間に追われるお客さまが多い当店では、「ショートタイムショッピング」というニーズへの対応が欠かせません。

例えば、コンビニのおにぎりコーナーは通常、店の奥に配置されていますが、当店は入り口のすぐ横に配置しています。「おにぎりを急いで買いたい」というお客さまが多いからです。18年10月には売り場を改装し、アイテム数を絞り込んで陳列棚を減らした一方、通路幅を広げました。キャリーバッグを持って入店するお客さまが増えているので、店内の移動をしやすくするためです。

■「セルフレジ」を1台から3台に増設

また、会計の待ち時間とレジのスタッフを減らすため、お客さまご自身でお支払いいただく「セルフレジ」を1台から3台に増設しました。最近は通勤される会社員の方をはじめ、セルフレジをご利用されるお客さまが以前よりも増えています。

欲しい商品を見つけやすくするため、「わかりやすい陳列」にも力を入れています。今回の改装では、キャンペーン商品を1週間ごとに入れ替え、大量陳列して訴求する新コーナーも導入しました。例えば、最近の事例では「半生チョコ」を集積したところ、既存の売り場陳列に比べて、日販が3~4倍に増えました。売り場の改装によって利便性の向上に成功しただけでなく、お客さまの需要をうまく掘り起こせたのではないかと、手ごたえを感じています。

このような工夫によって、コンビニの多種多様な業務を効率的に進めることができます。そのうえ、効率化で生まれた時間を有効活用することで、お客さまの満足度の向上につながる取り組みができています。こうしたお客さまのためにもなり、生産性を高める工夫は、今後も継続して実践していきます。

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▼君塚店長のマルチタスク仕事術
① 5000個のおにぎりの陳列は棚の裏から
商品回転率が非常に高い店舗では、商品の補充が命。看板商品のおにぎりは、通常のコンビニが売り場側から補充するのに対して、当店では混雑時でも棚の裏側から補充できる。


② スタッフに権限を委譲して24時間を回す
コンビニ運営は24時間休みがなく、スタッフ一人ひとりの力が不可欠。アルバイト・パートの方にも、商品の発注業務をはじめ、任せられる仕事は任せている。
③ セルフレジでスタッフ人数も待ち時間も削減
来店客が自ら会計を行うセルフレジを3台に増設。お店にとっては必要なスタッフの人数が、利用客にとっては会計の待ち時間が削減され、ウィンウィンの効果がある。

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君塚保二(きみづか・やすじ)
JR東日本リテールネット 東京支店エキュート京葉ストリート マネージャー
1963年生まれ。83年に旧日本国有鉄道入社後、国鉄民営化に伴って鉄道弘済会(JR東日本リテールネットの前身)に移り、東京支店コンビニエンス営業課などを経て、2014年12月より現職。

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(JR東日本リテールネット 東京支店エキュート京葉ストリート マネージャー 君塚 保二 構成=野澤正毅 撮影=的野弘路)

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