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未だにNHKが「解散見送り」と報じない謎

プレジデントオンライン / 2019年6月17日 16時15分

参院決算委員会で、挙手する安倍晋三首相(右)=6月10日、国会内(写真=時事通信フォト)

■6月9日の日経「衆参同日選見送り強まる」が最初

6月初旬までさまざまなメディアが言い立ててきた「衆参同日選」説。7月の参院選に合わせて安倍晋三首相が衆院を解散し、同日選に持ち込むという内容だったが、ここにきて急速に沈静化しつつある。

新聞やテレビは「7月21日、参院選単独で行われる」との見通しを伝えている。ただし、その中でNHKはいまだに「解散見送り」と報じていない。なぜNHKは「それでも同日選の可能性が残っている」とみているのか。その理由を解説しよう。

同日選見送りの流れをつくったのは6月9日の日経新聞朝刊だ。政界情報は慎重に裏取りしてから報じるという評判の日経が1面で勝負をかけた記事は、それなりにインパクトがあった。ただし見出しは「衆参同日選見送り強まる」。記事の中身も「見送る方向が強まってきた」で、断定はしていない。確信がなさそうにも読める。

■確証がなくても後追いするマスコミの横並び意識

朝日、読売、毎日、産経などのライバル紙も一斉に10日夕刊や翌11日朝刊で日経報道を追い掛けた。これで、同日選報道が事実上打ち止めになった形だが、やはりどこかで逃げを打った書きぶりが多い。

全国紙の政治部幹部クラスに事情を聴くと、「7、8割、同日選はないと思っていたところで日経報道が出た。後追いするしかない」「日経報道を受けて追加取材したら、おおむね裏打ちする情報が取れたので追随した」というような回答が帰ってきた。一時と比べると解散風が弱くなっているという共通認識はあるものの、どこの社も絶対の自信は、ないようだ。

日本のメディアは今も、大きなニュースを報じるときは横並び意識が働く。どこかの社が、先んじた報道をすると、確証がなくても後追いすることが少なくない。今回は、その典型例だったのではないか。

■各社とも「多分、ないだろう」が前提の苦しい理屈

各紙が報じた「同日選見送り」の記事を読み比べてみる。11日の1面トップで報じた朝日は政権幹部の「同日選が必要だという感じではない」という発言を引用している。産経は同日の1面で与党幹部の「無理をして解散する必要はない」という発言を紹介した。毎日は朝刊1面で、安倍氏が10日の党役員会で、衆院解散に言及しなかったことを指摘。同日選見送りの方向となった根拠のひとつにしている。

しかし朝日や産経が書いたようなコメントを語る政府・与党幹部は解散風が吹き荒れていた頃から、いくらでもいた。安倍氏が、党の会合で衆院解散に触れないのは、いつものことだ。同日選が遠のいた根拠としては弱い。

基本的には日経報道を受け、各社とも「多分、同日選はないだろう」という見通しのもと、苦しい理屈をつけて記事を組み立てた形跡が、うかがえる。

■「同日選報道」の火付け役であるNHKが動いていない

新聞、テレビ各紙が「同日選見送り」の確信を持てない最大の理由のひとつに、NHKが「見送り」を明確に伝えていないことにある。

最近のNHKは安倍政権の御用機関などと揶揄されてはいるが、政権の意向を正確に報道していることは間違いない。そのNHKは、5月中旬「衆参同日選の可能性が高まると与野党双方の見方」との報道をし、今回の「同日選報道」をリードしてきた経緯がある。

そのNHKは、6月9日から11日までの間に新聞各紙が行った同日選見送り報道に、付き合っていない。同日選報道の火付け役であるNHKも消火作業に入れば完全に火は消えるのだが、そうなっていないのだ。

15日、そのNHKは「衆参同日選に踏み切らない構えも野党側の動向で最終判断か」と報じた。「見送り」の方向に軸足を移してはいる。ただし「安倍総理大臣は、今後の野党側の動向や19日に開催される党首討論の行方なども見極めながら同日選挙について最終的に判断するものと見られます」と、同日選の可能性を残した内容に止まっている。「火消し」というより「再燃」の余地を残している。

■首相に解散を迫らない野党のへっぴり腰

野党議員たちも「自信がない」のは同じだ。

「ついに党ごと消滅しそうな『民主党』の最期」(6月5日付)でも紹介しているように、野党側は本音では衆参同日選を回避したい。特に党勢が低迷し続ける国民民主党は、もし同日選となれば党存亡の危機に直面するだけに戦々恐々としてきた。

野党内では今「解散が遠のいたから堂々と内閣不信任決議案を出せる」という考えと「わなかもしれない」という考えが交錯している。

一連の「解散見送り」報道の後、ある野党議員は自民党国対幹部に「不信任決議案は出しますよ。自民党はもう解散しないと決めたのでしょ」と伝えてきた。自民党議員が「安倍首相次第でまだ分からないですよ」と伝えると、野党議員はぎょっとした表情をしていたという。

本気で政権を追い詰めようとするのならば、安倍氏に直接、衆院解散を迫ればいい。しかし10日、安倍氏出席のもと開かれた参院決算委員会で、野党議員たちは安倍氏に対し解散の意思を問うことはなかった。

■大前提の「参院単独でも十分勝てる」は崩れ始めた

政府・与党内で同日選見送り論が高まった理由は「参院選単独でも勝てる」との見通しになったためだという。そのようなデータが政権幹部に上がっているのは事実だ。しかし、その理屈であれば、与党が議席を減らす可能性が生じた場合、解散風が再浮上することになる。

6月中旬に入り、年金だけでは老後2000万円不足するという内容の「消された報告書」問題が急浮上。安倍政権への批判が強まっている。

また米国とイランの間を仲介してポイントを稼ごうとした安倍氏のイラン訪問も、滞在中にホルムズ海峡付近でタンカー攻撃が起き、安倍政権のもくろみは外れた。

安倍政権に逆風が吹き始めている。毎日新聞が15、16両日に行った世論調査では内閣支持率は前月比3ポイント減の40%。不支持率は6ポイント増の37%。自民党の支持率は36%から29%に急落。潮目は変わり始めている。

だとすれば「参院選単独では苦戦する」という判断に変わり、同日選論が再燃するという展開も考えられる。

■「ハプニング解散」の可能性はなお残っている

19日の党首討論で立憲民主党の枝野幸男代表や国民民主党の玉木雄一郎代表が、衆院解散を求めずに討論を終えるということがあり得るのだろうか。国会会期末に野党が内閣不信任決議案を見送ることがあり得るだろうか。

腹の中では、衆院解散の可能性につながるようなことは避けたいと思っていても、会期末に弱腰の姿勢のままでは選挙戦の出ばなをくじかれてしまう。ここはリスクを承知で解散を迫るという道を選ぶと考えた方が自然ではないか。

一方、安倍氏は党首討論や内閣不信任決議案で野党から挑発を受けた時、冷静でいられるだろうか。強気で鳴る安倍氏のこと。今は同日選を見送るつもりでいたとしても、まさにハプニング的に解散の道に進むことだって十分あるのではないか。

少なくとも「26日の今国会会期末までは、何があるか分からない」と覚悟を決めるのが正解ではないか。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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