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受験勉強という「クソゲー」を最短攻略する方法

プレジデントオンライン / 2019年10月12日 6時15分

東京大学大学総合教育研究センター講師の藤本徹さん - 撮影=永野久美子

勉強よりもゲームが大好き。そんな子にどんな声かけをすればいいのか。現役東大生で謎解きクリエイターの松丸亮吾さんは「ゲームと違い、学校の勉強はゴールがわかりにくく、ミスをすると恥ずかしい思いもする。ただ裏を返せば、ゲームのように捉え直せれば、勉強は楽しいものに変えられる」という――。

■なぜゲームは楽しくて、学校の勉強は楽しくないのか?

ゲームばかりに興じているわが子に親はどう対処したらいいのだろうか。

何度も、「学校の宿題をやりなさい」と言ってもやろうとしないのに、ゲームは何時間もすごい集中力でやり続けている。勉強もゲームくらいの真剣さでやってほしいと思っている親は多いに違いない。

今夏、創造的な学びの場を産官学連携で提供しているNPO法人CANVASが行った「夏休み、子どもとデジタルゲームの上手な付き合い方」セミナー(協力:株式会社ポケモン)には、そうした親の深い悩みを解決するヒントがあった。

このセミナーのゲストのひとりは、「ゲームと学習」について研究している東京大学大学総合教育研究センター講師の藤本徹さん。藤本さんによれば、多くの人が夢中になるゲームには次のような4つの要素があるという。

「1つ目は、達成したくなるような明確なゴールがあること。2つ目は、ゴールに到達するためのルールが決まっていること。3つ目は、プレイヤーがしたことに対してフィードバックがあること。4つ目は、それをするかしないかは自発性に任されていることです。こうした条件が揃っていると、人はやる意欲を持ったり、おもしろさを感じたりするようになります」(図表1参照)

そして、子供がとかく嫌う学校の勉強にも、実はこのゲームの魅力に似た要素があるというのだ。

「学校の勉強のゴールは、テストで満点を取ったり、受験で合格したりすることです。ルールは校則、フィードバックは通知表など。ただ、ゲームに比べて、学校の勉強はゴールがわかりにくかったり、おもしろさが足りなかったりするのです」

■学校の勉強というクソゲーを、おもしろくする方法

しかし、こうした「学校の勉強はつまらない」という世界観は、捉え方次第で変えることもできると考える人もいる。このセミナーのもうひとりのゲストとして参加した、テレビ番組や書籍で謎解きクリエイターとして活躍する松丸亮吾さんだ。松丸さんは東京大学工学部の4年生。「僕は学校の勉強もゲームの世界観のように捉えていた」と語る。

撮影=永野久美子
謎解きクリエイターとして活躍する松丸亮吾さん(東京大学工学部4年)は勉強をゲーム感覚で取り組んだ。 - 撮影=永野久美子

「自分は親から『勉強しろ』と言われていたら、反発して絶対やらないタイプでした。でも今、振り返れば、ゲームの攻略をするような感覚で自分なりに勉強したんです。それは将来、クリエイターになるという夢があったからできたことかもしれません。その夢を叶えるには勉強して、いい大学にいかないといけないと子どもながらに思っていました」
「一方、そうした夢や目標がない子どもは多い。彼らは学校からいい点が取れるように勉強させられますが、学校や教師は、なぜいい点を取ったほうがいいのか、その先に何があるかは、あまり語らない。だから、子どもにすれば点数を上げる意味がわからないんだと思います」

撮影=永野久美子
  - 撮影=永野久美子

そこで親は、子供が好きなもの、夢中なものを見つけた時に、それに対する魅力的な目標(ゴール)を設定し、目標を達成するために勉強が必要なことを教えてあげるといいという。

「先日、あるお母さんが、『子どもが昆虫好きで昆虫採集ばかりしていて勉強しない』と嘆いていました。でも、それってすごく素敵なことだと思いました。聞けばその子の夢は、昆虫博士になること。昆虫博士になるには、まずその道の研究者にならないといけない。そのためには『学校の勉強をして、自分が望む環境のある大学へ行けるようにしようよ』と言ってあげればいい。勉強を目的にするのではなく、昆虫博士という夢までレールを引いてあげる。そうすれば、その子にとって魅力的なストーリーができて、勉強に前向きになるのではないでしょうか。ストーリーを組み立ててあげることが大事だと思います」(松丸さん)

■「ミスは悪いことじゃない。苦手を克服するチャンス」

さらに、松丸さんは、前出の子どもがイメージしがちな「学校の勉強のルール」を親が上手に書き替え、面白いと感じさせられたらベストだという。失敗することは恥ずかしいことでないし、チャレンジすることは悪くないと思えるように。

「学校では授業中に教師に当てられて、正解が言えなければ、クラス全員の前で恥をかいて終わり、なんてことがあります。また、成績の順位も紙で知らされるだけで、1学年300中50番以内に入っている子なら『いい成績だったな』って達成感を得られるけど、それ以下の場合、順位を知ったからといってどうすればいいんだよと思います。この時、順位を上げようと這い上がれる子はいいけど、『あぁ、自分は勉強ができないんだな』って自信がなくなってしまう子が大半なのではないでしょうか」
「僕の家の場合、テストで悪い点をとっても、母は叱りませんでした。そして、『ミスは悪いことじゃない。むしろ、苦手を克服するチャンスなんだよ』と言って、苦手を克服する方法を一緒に考えてくれた。これがすごく良かったと思っています」

松丸さんの母親は、「ミス(失敗)はペケ・恥」→「ミス(失敗)はチャンス」というルールの書き換えをしたのだ。これは、前出の「ゲームが人を夢中にさせる4つの理由」のひとつを実践したということになる。

「テストの点が悪いとしても、『僕はここを直せばいいんだ、これが今の僕に足りないことなんだ』ってわかるから、勉強をやる意味がわかります。だから、自発的にやるようになるし、やっていくうちに成績も上がるようになっていきます。すると次にミスしたときも、『自分でやろう』といういい循環ができていきます。親は手取り足取りすべてを見ないといけないわけじゃなくて、『失敗はチャンス』という風にルールだけ書き換えてやれば、子ども自身が変化していくと思います」(松丸さん)

■大好きなゲームをエサに勉強したくなる仕組みをつくろう

さらに松丸家では、子どもを勉強に向かわせる、おもしろいルールがあったという。

「僕は小学生の頃からゲームが大好きで、いつも夢中でプレイしていました。そうやってゲームばっかりしていると、『ゲームは1時間まで』と制限時間を設けられることが多いと思うのですが、うちはそうではありませんでした。代わりに『勉強を3時間やったら、好きなだけゲームしていい』というルールになっていたんです。ゲームを人質にとられて、勉強させられたかんじでしたが、これが僕にはあっていました」(松丸さん)

最初のうちは、なかなか3時間の勉強ができなかったという。しかし、やらないとゲームができないから、やるしかない。そうしているうちに成績が伸びていったのだとか。

「最初はゲームするために仕方なくやっていた勉強ですが、3時間を積み重ねるうちに楽しくなっていきました。『勉強ができない』→『楽しくない』→『だからやらない』のサイクルから、『(ゲームのために)やらないといけない』→『勉強ができるようになるから楽しい』→『楽しいからさらに勉強する』というサイクルに変わって、そこからは自分で勉強するようになりました」(松丸さん)

重要なのは、「仕組み」だ。これをうまくつくることができれば、子どもが大好きなゲームは勉強をがんばるきっかけにすることができるのだ。前出・藤本さんは「子どもの性格にあわせて、仕組みを考えるといいでしょう」という。

「飽きっぽい子なら、ゲームをやりすぎる心配はないので、宿題や課題を終えたらゲームの時間にしてあげる。逆にやりすぎる心配のある子なら、時間を決めて、たとえば宿題をやったら10分、お手伝いしたら10分、というように時間を加算していくようなルールにすると、やるべきことも終わるし、やりすぎも防ぐことができます。親御さんも、あの手、この手でお子さんにあったルールづくりを考えることを楽しんでほしいと思います」

■情報収集力、判断力、行動力……ゲームで学べることもある

さらにゲームをすること、そのものにも優れた効果があると語る。

「ゲームでは、現実の世界ではできない貴重な経験をたくさんすることができるものもあります。それは、学びにもつながっているのです。たとえば、ストラテジーゲーム(戦略シミュレーションゲーム)では、情報収集力、素早く正確な判断力、戦略的な行動力などを養うことができます。チーム対戦ゲームでは、協調意識やコミュニケーション、協力スキルが高まります。ホラーゲームもプレッシャーの中で、緊張や不安に対処、恐怖、怒りの感情をコントロールする経験になっています」(藤本さん)

親はゲームばかりして、勉強しないわが子にイライラしがちだ。今年5月には世界保健機関(WHO)が「ゲーム障害」を依存症と認定したこと(※)もあり、「ゲームに埋没して、人生を台なしにしてしまうのではないか」と心配になり、ゲームを敵視する親は多い。

※2019年5月、WHOは、「ゲーム障害」を依存症として認定した「国際疾病分類」最新版を承認。アルコールやギャンブルなどの依存症と並んで治療が必要な疾病となった。ゲーム障害の定義は「オンラインゲームやテレビゲームをしたい衝動が抑えられなくなり、日常生活より優先する」「健康を害するなどの問題が起きてもゲームを続け、一層エスカレートしたりする」「家族や社会、学業、仕事に著しい障害がもたらされる」「こうした症状が12カ月以上続く」など。

だが、ゲームの世界で子供がどんな経験をしているのかは、親も一度、のぞいてみる必要があるかもしれない。そこで子供なりに挑戦したり、創造したり、貢献をしているのなら、前向きに評価すべきことだろう。そして、ハマりすぎが心配なら、現実の世界にもゲームに負けないくらい魅力的なイベントや旅などを企画して、親子で楽しい時間を過ごせるように工夫するといいだろう。

(プレジデントFamily編集部 森下 和海)

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