生ごみを触れない生徒が増加、家庭科教員の嘆き 洗濯やトイレ掃除は「宿題」に出て初めて体験
東洋経済オンライン / 2024年4月4日 11時0分
中・高校時代の「家庭科」というと受験には直接関係がない「副教科」のイメージが強い。そのため、そこでの授業に関心を持つ親は少ないのではないだろうか。
しかし今、生徒たちの圧倒的な経験不足からくる実情に嘆く家庭科の教員たちが多い。10年以上のキャリアを持ち、難関校を含め複数の学校で家庭科を教えている2人の教員から話を聞いた。
調理前に野菜を洗うことさえ知らない
家庭科の授業といえば、調理実習を楽しみにしている子どもたちは多い。しかし家庭科の教員からすると、調理実習こそ、子どもたちの家庭での様子が見えてくるという。
「まず野菜を洗うことさえ知らない子がいます。そして包丁が使えない。りんごの皮はむくというより削ぎ落とすように使う子が多いです。
ジャガイモはピーラーがないとむけない。中高生でも包丁が上手に使えるのはクラスで1人、2人といったところです」
こう語るのは小学校から大学まで幅広い年齢の子たちに家庭科を教えているベテラン教員のAさん。そしてこう続ける。
「最近中高生を教えていて顕著なのは、生ごみを触れない子が多いことです。男子でも女子でも同様です。調理実習のあと、だれが生ごみを捨てるかでジャンケンをしているときもあります。
ネットに入っていないと触れないし、ネットの端をつまんでごみ箱に捨てようとするから床にポタポタ水滴が垂れてしまう。生ごみは水分を絞って捨てる、という発想はない。
あと台拭きも汚い、といってつまんで持ってくる。布巾そのものを使えない子も多いですね。家では布巾の代わりにキッチンペーパーや使い捨て除菌シートを使っているようです」
見えてくるのは、潔癖すぎる子どもたちの姿だという。
同じく、複数の私立中高一貫校で教えるBさんは、このように言う。
「私が教えている学校にも生ごみを触れない子は多くいます。小さい頃からどろんこ遊びをすることがあまりなくて、『汚いものは触っちゃダメ』という生活をしてきているせいもあるのかな、と思います」
Bさんは調理実習中のある「事件」を語る。
「以前、男子中学校の調理実習で天ぷらを作ったのですが、衣用に用意していた水を熱した天ぷら油に入れてしまった子がいたんです。当然、火柱が上がって大騒ぎでした。
そのときはフットワークの軽い子が近くにあった濡れ雑巾をパッと火柱に被せて消火したんです。その子は手元に消火器がないときの消火方法を知っていたんですね。
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