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支持者を堂々と「税金」で接待する安倍氏の驕り

プレジデントオンライン / 2019年11月13日 15時15分

「桜を見る会」で走る安倍晋三首相(中央)=2019年4月13日、東京都新宿区 - 写真=時事通信フォト

■「安倍氏の安倍氏による安倍氏のための会」

首相主催の「桜を見る会」が大炎上している。

毎年4月に開かれるこの会は、安倍政権の長期化によって少しずつ膨張してきた。プレジデントオンライン編集部では、今年5月にその問題点を指摘していたが、ここにきて「税金で地元有権者を接待している」という点に目が向くようになった。自民党の対応は鈍く、長期政権の致命傷となる可能性が出てきた。

プレジデントオンライン編集部は、以前から「桜を見る会」の問題に注目してきた。今年5月17日には「予算の3倍に膨張『桜を見る会』の政治利用」という記事を公開している。ここでは、安倍政権のもとで「桜を見る会」の参加者数や費用が右肩上がりに増えている点を指摘した。さらに今年の「桜を見る会」では作家の百田尚樹氏ら保守系の論客、つまり安倍晋三首相の「お友だち」が大挙して参加していたことから、「安倍氏の安倍氏による安倍氏のための会」ではないかと問題提起した。

■バス17台連ねて850人が安倍氏の地元から上京

この問題が再燃したのは11月8日。参院予算委員会で共産党の田村智子氏が独自調査をもとにこの問題を取り上げた。

田村氏は、安倍内閣で閣僚だった稲田朋美氏、官房副長官だった世耕弘成氏、自民党総裁特別補佐だった萩生田光一氏らの後援会活動報告などに、後援会のメンバーが多数「桜を見る会」に参加したことが分かる記載や写真が掲載されていることを指摘していった。

さらに矛先は安倍氏に向けられ、地元の山口県議が14年の「桜を見る会」に際しブログで「今回は私の後援会女性部の7人の会員の方と同行しました。(中略)貸し切りバスで新宿御苑に向かい、到着するとすぐに安倍首相夫妻との写真撮影会」などと書いている話を暴露(現在は閲覧できなくなっている)。山口県防府市のライオンズクラブの会報を基に、安倍氏の地元から850人が貸し切りバス17台を連ねて参加したのではないかとただした。

■自腹のカネが有権者に渡っただけでも辞任している

安倍氏は、懇親会などで後援者らと写真を撮っている事実は認めながら、招待客の選定基準といった内容については、セキュリティーなどの理由で「答えは差し控える」と述べるにとどめた。

田村氏の質問は、自民党議員らの情報を丹念に調べた労作ではある。ただし、「桜を見る会」に政権与党の後援者が相当数参加していることは周知の事実だ。安倍氏の「お友達」や後援者が多数含まれていることも多くの人が知っていた。それなのになぜ、秋も深まった今、「桜を見る会」の問題が盛り上がっているのか。

大きな理由は10月末の2つのスキャンダルだろう。

菅原一秀経済産業相は10月25日、秘書が有権者に香典を渡し、選挙区の有権者にメロンやカニを贈っていた疑いなどを指摘されて辞任。31日には河井克行法相が、参院選に出馬した妻の運動員に法定を超える報酬を渡していた疑いを報じられて辞任した。2人が批判を受けたのは「政治とカネ」の認識の甘さだ。いずれも自腹のカネが有権者や運動員に渡ったことの責任を取った。

「桜を見る会」はどうか。出席者によると樽酒、オードブル、軽食などが提供された。みやげもあった。メルカリをはじめとするフリマアプリには、みやげとして提供された酒升などが出品されている。

■地元後援会の人間を堂々と「税金」を使って接待

もちろん選挙区から上京してくる後援者らは、交通費、宿泊費など応分の負担はしているだろう。それは後援会のツアーで東京1泊旅行をするのと同じだ。しかし、同じ1泊旅行でも浅草やスカイツリーを見学して帰る旅行に、「桜を見る会」が加われば価値は変わってくる。

菅原氏や河井氏は有権者に「自腹」で金品を配った。一方、安倍政権の幹部たちは「桜を見る会」において、地元後援会の人間を堂々と税金を使って接待している。

「政治家が自分のお金でやったら明らかに公職選挙法違反。(今回の件では)税金を利用している。モラルハザードを安倍政権が起こしている」という田村氏の指摘は多くの国民が共感しているのではないか。

「桜を見る会」の問題は、菅原、河井の両氏が辞任したスキャンダルよりも悪質ではないか。そういう疑念が広がりつつある。

■二階氏は「何か問題あるか」と開き直ったが…

これに対して、政府・自民党側の動きは鈍い。二階俊博幹事長は12日の記者会見で、「桜を見る会」に自民党議員の後援者らが招待されていることについて「議員は選挙区の皆さんに、できるだけのことを配慮するのは当然のことだ」と発言。さらに党役員に「桜を見る会」に参加できる枠が割り当てられているとの指摘に対しては「あったって別にいいんじゃないですか。何か問題になることはありますか」と開き直るように、質問した記者にかみついた。

恐らく自民党議員の多くは二階氏と同じ考えなのだろう。長い間、政府と党による持ちつ持たれつの関係が染み付いてしまっているため、批判されていることに鈍感になっているのだろう。

安倍政権側は、菅原、河井の両氏が辞任した時に内閣や自民党の支持率が落ちなかったことで自信を深めている。しかし閣僚辞任ドミノではびくともしなかった政権の屋台骨が「桜を見る会」で揺らぐ可能性もあるのだ。

菅義偉官房長官は12日夕の記者会見で「桜を見る会」の開催要領を見直す考えを示した。しかし朝日新聞は翌13日の朝刊1面トップで「首相事務所 ツアー案内」という記事を掲載。安倍氏の事務所が「桜を見る会」を目玉とするツアー日程をプロデュースしている実態を浮き彫りにした。当面、国民の怒りは静まりそうにない。

■対応の鈍さは、長期政権の致命傷となりえる

最後に「ブーメラン」の可能性について触れておきたい。ここ数年、政権与党側に問題が起きると、数日後に旧民主党などの野党勢力側にも同様の問題が浮上し、痛み分けとなるパターンが続く。「桜を見る会」についても、民主党政権時のことが「ブーメラン」となって返ってくるかもしれない。

民主党政権下では3度、「桜」の季節を迎えている。最初の2010年、鳩山政権下で一度行われたが、安倍政権で肥大化した現在の規模と比べると、内容は抑制的だったようだ。当時の民主党幹部らの後援会の参加が、今後取り沙汰されるだろうが、今の自民党幹部と比べると規模は格段に小さい。その後の2年は、東日本大震災後の対応などを優先して行わなかった。

この件に関しては野党側の傷は浅く、「ブーメラン」となることはなさそうだ。だからこそ、自民党の対応の鈍さは長期政権の致命傷となるかもしれない。

■「桜を見る会」の開催中止を発表(11月13日17時35分追記)

菅義偉官房長官は13日午後の記者会見で来年の「桜を見る会」の開催中止を発表した。

大学入学共通テストへの英語民間検定試験の導入問題で批判を受けた際に2020年度の導入の見送りを決断したように、この政権は旗色が悪いとみると方針を転換することで傷を最小限に食い止めようという手を打つことが多い。

今回の中止もそうなのだが、当日午前まで「(初めて開いた)昭和27年(1952年)以来の慣行の中で行われている」と説明していただけに、朝令暮改の批判は免れない。「中止」で逆風を止めるのは難しそうだ。

(永田町コンフィデンシャル)

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