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FP夫婦が子どものおこづかいを「ドル」にする訳

プレジデントオンライン / 2019年12月18日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/agrobacter

「自分の子供には将来生活に困ってほしくない」。子を持つ親なら誰でも願うことだろう。6人の子を育てるファイナンシャルプランナーの横山光昭氏は、「これから子どもがお金を貯めたり、お金に困らないようにするためには、工夫することを覚えさせましょう」という——。

※本稿は、横山光昭『子どもが10歳になったら投資をさせなさい』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

■おこづかいは「円」と「ドル」の選択制

私が子どもたちにおこづかいを渡すときは、米ドルと日本円から選べるようにしています。日本国内では、米ドル紙幣は円に両替しなければほとんど使うことができません。その代わり、米ドルで受けとる場合は円の1割増しになるという特典があります。

なぜ、もらってもすぐに使えない紙幣をおこづかいで渡しているのかと言うと、話は長女が小学校2年生、2003年ごろにさかのぼります。当時、私はとある外資系企業からの報酬をドルで受けとっていました。普段、ドルでの報酬はあまりないので、突然入ってきたドル資金をどうしたものかと思案していたとき、ふと「子どもに与えたらどうなるかな?」と思いついたのです。

長女はもちろん、ドル紙幣を見たことがありません。そこで、試しに1ドル札を渡してみたところ、お金のようだけど、お金ではない不思議なものを見るように眺め、好反応でした。以来、「ドル建ておこづかい制」をおこづかいの基本にしています。

横山家の子どもたちは、おこづかいを米ドルで受けとるか円で受けとるかを選んでいます。受けとったドル札は、いつでも「パパ銀行」で円に両替できます。これはおこづかいを渡す親にとっても不便で、コストがかかります。常に手元に米ドル紙幣を用意する必要があり、銀行で円からドルに両替すると手数料をとられます。そんな手間暇をかけてでも「ドル建ておこづかい制」を続けているのは、それ以上の大きなメリットがあるからです。

■お金を通じて社会への関心が高まる

横山家では、おこづかいをもらい始める小学校3年生のときから米ドルに触れます。最初に説明するのは、「このお札は、日本ではなくてアメリカのお金だよ」ということ。地球儀や世界地図を見ながら、アメリカの場所を知ってもらい、ついでにカナダやメキシコなど、まわりの国で使われているお金もそれぞれ違うことなどを話します。子どもたちはちんぷんかんぷんで途中から飽きてしまう子もいますが、それも当然の反応です。無理に情報を詰め込んでも意味がないので、毎月少しずつ伝えていきましょう。

子どもにしてみると、おこづかいをもらったものの、ドルのままでは使えないわけです。自然と「どうしたら使えるようになるのだろう?」と考え始めます。とはいえ、10歳くらいの子に「銀行で日本円に両替する」という仕組みを理解してもらうのは難しいもの。まずは米ドルというアメリカのお金があり、日本円に替えることができるのだと伝われば十分です。こうすることで、毎月のおこづかいの日が海外に目を向ける機会になります。

■為替レートにも意識が向くようになる

実際に米ドルでおこづかいをもらい、ドル札をパパ銀行で日本円に両替するようになると、子どもたちは円にするときおトクになるタイミングがあることに気づきます。たとえば、毎月10ドル(約1000円)のおこづかいをもらっているとしましょう。ある年のある月は円高が進んで1ドル99円に。また、ある年のある月は円安が進んで110円に。すると、同じ10ドルを両替したのに、おこづかいが990円になったり1100円になったりするわけです。110円の違いとはいえ、1000円のおこづかいの子にとっては一大事。結果、子どもたちは自然と円ドルの為替レートに意識が向くようになっていきました。

ちなみに、「ドル建ておこづかい制」の先駆者である長女は、中学生になるころには毎月のおこづかいの3、4割程度しか両替しなくなりました。すぐに使うおこづかい以外、残りは米ドルで貯めておいて、為替レートが有利なときに両替することにしたのです。もちろん、長女のようにドルで貯めるのが正解というわけではありません。米ドルでおこづかいを受けとることで、そのままドルが使える場所に旅行をしてみたいと思うようになってくれることでも、お金が世界への扉になるという意味では大成功。大事なのは、お金と社会とのつながりを感じとってもらうことです。

■「お金の教育」をする時の注意点

私がお金と社会のつながりについて子どもたちと話すとき、大切にしているルールが4つあります。

・自分のできないことを押しつけない
・考え方、やり方を強制しない
・子どものお金の使い方に口を出しすぎない
・いいと思ったら、思い切りほめる

親ができないことを子どもにやらせようとしても、納得感がないので言葉が心に届きません。たとえば、家計簿もつけず、支出を「消費」「浪費」「投資」に分けてみることもしていない親が、突然「今月からおこづかい帳をつけなさい!」と強制しても、子どもは反発するだけで実行することはないはずです。

子どもにお金を通して社会を知ってもらいたいなら、まずは大人も勉強して質問に答えられる準備をしておきましょう。もちろん、子どもが聞くことすべてに答えられる必要はありません。わからないことは一緒に調べてお金の疑問を探ることでコミュニケーションが深まります。

■親は口出ししすぎない

また、子どものお金の使い方に口を出しすぎないことも重要です。子育てでは、見守るよりも「ああしなさい」「こうしなさい」と指示を出し、強制力を発揮した方がスムーズに進む場面が多々あります。

しかし、金銭感覚の教育は長い時間をかけて行うものです。親がよかれと手を出し続け、お金の失敗をしないまま成長すると、金銭感覚がズレたまま社会に出ることになりかねません。その結果、クレジットカードのリボルビング払いやキャッシングで借金を抱えてしまうことにもなりかねません。ですから、「おこづかい制にする」「一部をドルで渡す」「おこづかい帳をつけたらおこづかいの額が少し増える」などの基本方針が定まり、子どもたちがレールの上を走り出したら、基本的に彼らの好きにしてもらいましょう。

■褒めて達成感を覚えてもらう

最後の「いいと思ったら、思い切りほめる」も非常に重要です。たとえば、おこづかい帳をしっかりつけられたとき、計画的なお金の使い方ができたとき、ニュースとお金について結びつけて考えられたときなど、あなたが「この子はやるな」と感じた瞬間に「すごいね」「うまくできたね」「その考えはなかった」といった調子で思い切りほめてあげましょう。

無駄づかいしがちだったお子さんがおこづかいをうまく使えるようになったら、「やって当たり前」ではなく、「すごいことを達成した」という方向でほめてあげましょう。前述したように、横山家ではお年玉や親戚からもらったおこづかいを口座に貯めるお金、おこづかいの不足分の補填に使うお金に分けて、子どもたちに管理させています。小学生のうちは、半年後という先の予定を考えて準備する感覚はなかなか持てませんが、年間のおこづかいのやりくりを任せていると、徐々に先を見る感覚が養われます。

■お年玉は少し多めに「口座」へ入金

子どもたちのお年玉は、少し多めにあげています。なぜかと言うと、月々のおこづかいは欲しいものを買って少し余る程度しかあげていないからです。これではお金を使ううえでの選択肢が狭くなり、先を見てやりくりする感覚が育ちません。もう少し余白があった方が自分なりのやりくりができるのではないかと考え、お年玉を多めにあげて、おこづかいの補填予算にあてる仕組みにしました。すると、下の子は上の子がやっているのを横目で見ながら、もらったお年玉を一時的な大金ととらえるのではなく、年間の予算として使い道を考えたり、より将来を見て貯金に回したりと視野を広げてくれるようになりました。

ちなみに、お年玉などの臨時収入を貯金用に回すときは、子どもたちの専用口座に入金しています。この口座には、月々のおこづかいのやりくりでできた残金やお祝い事でいただいた臨時のおこづかいなども貯めて、子どもたちと一緒に定期的に残高を確認します。通帳に数字となって積み重なっていく金額を目にすることで、子どもたちはお金が貯まっていくことを実感でき、「お金は貯められる」という自信を得ます。親の私たちは「すごいね、貯まってきたね」と思い切りほめるだけでいいのです。

■自分で管理することで計画性が身につく

子どもたちが中高生になったら、貯金用の口座の中身も自分で管理してもらいます。実際、中学生になると先を見て、月々のおこづかいと口座のお金を合わせて、計画的に使うことができるようになります。

横山光昭『子どもが10歳になったら投資をさせなさい』(青春出版社)

たとえば、高校生になったばかりのわが家の四女はプロレス大好き女子。新日本プロレスに大好きな選手がいて、欲しいパーカーが発売されると知りました。でも値段は8000円。毎月のおこづかいでは足りません。かといっておこづかいを全額使ってしまうと、友だちづき合いにも支障をきたします。

そこで、彼女は毎月1000円ずつ残金を貯め、4カ月後に貯金から4000円を下ろし、夏の終わりにパーカーを購入していました。なぜ、貯金から一気に8000円引き出さなかったのかと聞いてみると、「次に欲しいものが出たときに、どれだけ欲しくても我慢しなくちゃいけないから」という答えでした。親がポンと買ってあげていると、パーカーが手に入った喜びはあっても、8000円のありがたみは体感できません。おこづかい、お年玉という形でお金のそのものは親の財布から出ていたとしても、本人がやりくりすることでお金の重みが変わってくるわけです。

自分事になると、子どもたちはお金のやりくりに本気になります。私たち大人がお金を貯められないのは、工夫ができないことに原因があります。これから子どもがお金を貯めたり、お金に困らないようにするためには、工夫することを覚えさせましょう。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は110冊、累計330万部となる。個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。

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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)

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