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「徹底した逃げ回り」産経も怒る安倍政権の劣化

プレジデントオンライン / 2019年12月14日 11時15分

臨時国会が閉会し、記者会見する安倍晋三首相=2019年12月9日、首相官邸 - 写真=時事通信フォト

■記者会見では珍しく「低姿勢」だったワケ

臨時国会が12月9日に閉会した。同国会では「桜を見る会」の問題をめぐって野党が安倍晋三首相を厳しく追及した。

安倍首相は9日の記者会見で、桜を見る会の問題についてこう話していた。

「国民の皆さまからさまざまなご批判があることは十分に承知している」

記者会見では珍しく、安倍首相は終始“低姿勢”だった。この“低姿勢”には問題をなんとか解決したい安倍首相の魂胆が隠れている。

11月8日に共産党が問題を追及して以降、政府は来年度の開催中止や招待規模の見直しなどを矢継ぎ早に発表して早期収拾を図ろうとした。しかし、消費者庁から行政指導を受けたことのある磁気治療器販売会社「ジャパンライフ」の元会長が桜を見る会に出席した疑惑など、新たな問題が次々と浮上した。

このため安倍首相にとって悲願の憲法改正の国会論議は全く進まなかった。これまでの記者会見では、改憲の議論を年明けにも始めたい考えを示しているが、果たして安倍首相の思惑通りにいくだろうか。

■任期内に安倍首相による憲法改正は極めて難しい

現実問題として2021年9月末までの自民党総裁の任期内に安倍首相が憲法改正を実現することは極めて難しい。安倍首相は7月の参院選で憲法改正の議論の是非を争点に掲げて勝利したことを前提に、臨時国会で野党を巻き込んだ改憲論議を進めたいともくろんでいた。

臨時国会では衆院憲法審査会が自由討議を3回行った。しかしこの審査会に付託されている国民投票法改正案は審議されず、結局、5国会連続での継続審議が決まった。首相は12月9日の記者会見で「国民の皆さまの声は、『(改正論議を)もっとしっかり前に進める』というものではなかったかなと思う」と話し、その表情には悔しさがにじみ出ていた。

■得意の外交で、内閣支持率を回復させたいが…

安倍首相は今後、得意と言われる外交で自身の存在感をさらにアピールして、内閣支持率を回復させ、来年1月召集の通常国会で、改憲論議を加速させていくつもりだ。

実際、安倍首相は9日の記者会見では「12月中にイランのロハニ大統領の来日を調整している」と語り、「米国と同盟関係があり、同時にイランと長年、良好な関係を維持してきた日本ならではのかじ取りが、国際社会からも求められている」と説明した。

安倍首相は12月15~17日にはインドを訪問してモディ首相とも会談する。12月下旬には中国での日中韓首脳会談に出席し、中国の習近平(シー・チーピン)国家主席や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とそれぞれ首脳会談を行う。

習氏との首脳会談では香港の民主化運動を中国との外交にいかに利用できるか。アメリカは香港の運動を支援する香港人権民主化法を成立させ、中国に圧力をかけてる。文氏との首脳会談では、日本に有利な徴用工問題解決の糸口を見つけられるかどうかである。

いずれにせよ、安倍首相の外交手腕が試されることは間違いない。

■まさに専横さで国会や国民を愚弄する安倍政権

この臨時国会閉会に絡めて各紙はさまざまな社説を書いている。

12月10日付の朝日新聞の社説は「説明責任を顧みず、論戦から逃げ回る。安倍政権の立法府軽視も極まった観がある」と書き出す。「逃げ回る」「極まった観」という言い回しは、安倍首相を嫌う朝日社説らしい。見出しの「政権の専横を忘れまい」というきつい表現にも朝日らしさが出ている。ちなみに専横とはわがままで横暴な振る舞いや態度を指す。数の力で野党の反対を押し切り、「安倍1強」とまで言われる安倍政権は、まさにこの専横さで国会や国民を愚弄してきた。

朝日社説は桜を見る会の問題には次のように指摘し、問題の究明を求める。

「政治の公平・公正に対する信頼は政策遂行の基礎である。税金で賄われる公的行事を、安倍首相が私物化していたのではないかという疑念を放置したまま、先に進むことはできない」

「首相の私物化」。桜を見る会の問題の本質はここにある。

「首相は本会議などで一方的に弁明することはあったが、一問一答で詰められる委員会質疑に応じることは最後までなかった。参院予算委員会で、自民党出身の委員長が提案した首相抜きでの質疑すら、与党の反対で実現しなかった。異様なまでの論戦回避である」

「一方的に弁明」「論戦回避」。国会中継を見ていると、朝日社説のこの指摘がよく分かる。

■政権にとって都合の悪いデータを国会に出し渋る

菅原一秀経済産業相と河井克行法相自身による説明責任、それに首相の任命責任を取り上げた後、朝日社説は「政権にとって都合の悪いデータを国会に出し渋るのも、この政権の常套手段だ」と書き、こう指摘している。

「日米貿易協定の承認手続きは臨時国会最大の焦点だったが、野党が求めた経済効果の試算などは示されず、検討に必要な情報が十分にそろっていたとは言いがたい。成果を急ぐトランプ政権に配慮した来年1月1日発効ありきの審議だったというほかない」

安倍政権はトランプ大統領のアメリカ第一主義に大きく加担していると思う。そう批判されても仕方あるまい。

さらに朝日社説は「年間を通してみても、国会をないがしろにする安倍政権の専横ぶりは際立っていた」と批判し、野党が要求した通常国会の予算委員会開催や臨時国会の早期召集などの要求が無視されたことを挙げる。

最後まで朝日社説は安倍政権を酷評する。

「国会を閉じ、年が改まれば、一連の問題も忘れられる――。首相はそう高をくくっているのかもしれない。しかし、政治権力が国民への説明を放棄した先に待っているのは、民主主義の土台の崩壊である」

「民主主義の土台の崩壊」。沙鴎一歩もこの1年の安倍政権と安倍首相の言動を振り返ってみると、そう感じる。

■野党が政権の不祥事をただすのは当然だ

左派の朝日社説に対し、右派の読売新聞の社説(12月8日付)は首相主催の桜を見る会についてはこう言及する。

「功績を残した人々を慰労するのが本来の目的だが、首相側は地元後援会員らを多数招待していた。桜を見る会の趣旨に反しており、節度を欠いたとの批判は免れない。政府が開催基準の抜本的な見直しを決めたのは当然である」

この指摘はいいだろう。気になるのが「臨時国会閉幕へ 政策論議の劣化を懸念する」という見出しと、次の書き出しである。

「不祥事の追及に労力を費やし、与野党の政策論争は深まりを欠いた。憂うべき事態である」

「不祥事の追及」に労力を費やすことがどうして問題なのか。野党が国会で政権の不祥事をただし、政権として本来のあるべき姿を求めるのは当然である。それを「憂うべき事態」と断言する読売社説はいかがなものか。

次のくだりを読むと、読売社説がなにを憂えているかが分かる。

■与野党がともに間違っているのではない

「立憲民主党など野党5党は、追及本部を設置した。関係省庁の担当者を呼び、事細かに問題点をあげつらった。衆参両院の予算委員会で首相出席の集中審議も求めたが、与党は応じなかった」
「野党は、安倍内閣のイメージダウンを狙い、政府・与党は野党の攻勢をかわし続けた。国会戦術上の駆け引きに終始し、本質的な議論は乏しかった。言論の府として、嘆かわしい」

読売社説の指摘する本質的議論とは、消費税引き上げの影響や党首討論の開催、憲法改正などの論議である。

読売社説のこの主張。一見すると、与野党がそろって党利党略の国会戦術に時間を費やした結果、肝心な国会審議ができなかったと喧嘩両成敗のように受け取れる。

しかし問題の本質は、安倍首相が桜を見る会という公的行事を私物化したところにある。しかも安倍首相は野党の質問にまともには答えていない。安倍首相が逃げるから、野党が追及する。安倍首相がきちんと答弁していれば、国会の政策論争は進んだはずだ。与野党がともに間違っているのではなく、与党を率いる安倍首相が間違っているのだ。

なぜ、読売社説はそう書かないのだろうか。読売社説はどこまでも安倍政権擁護なのである。

読売社説は「与野党はそれぞれの問題意識を表明しあい、議論を深めていくことが大切だ」と締めくくっているが、開いた口がふさがらない。

■「今からでも遅くない。全てを明らかにして新年を迎えればいい」

12月10日付の産経新聞の社説(主張)は「臨時国会閉幕 役割果たしたとは言えぬ」と読売社説と同じように国会論議が不十分だったという趣旨の見出しを立てている。

しかし、政権に対する批判は忘れていない。どのような論調の新聞であろうと、政権批判はきちんと行うべきなのである。

「安倍晋三首相は在任記録が最長になったが、政権のゆるみが目立った。不祥事で重要閣僚2人が辞任した。説明責任が今も果たされていないのはどうしたことか」

産経社説の後半での指摘だが、安倍政権の問題は全て「ゆるみ」「たるみ」に由来する。「もり・かけ問題」も桜を見る会の問題もその根っこは同じである。最近だと、週刊文春(12月19日号)がスクープした「首相補佐官と厚生労働省女性審議官の不倫」の背景にも、安倍政権の「ゆるみ」「たるみ」が見える。

最後に産経社説はこう訴える。

「立憲民主党など野党4党は『桜を見る会』の問題追及のため40日間の会期延長を求めた。与党は災害、景気対応の補正予算案、令和2年度予算案の編成を急ぐとして拒んだ。内閣府による招待者名簿破棄などがあり、首相や政府側の説明は十分ではなかった。問題がないというなら今からでも遅くない。全てを明らかにして新年を迎えればいい」

沙鴎一歩もそう思う。国会の幕が閉じられたからと言って野党は究明の手をゆるめてはならないし、安倍首相は自ら進んで疑惑や問題に白黒を付けるべきなのである。

(ジャーナリスト 沙鴎 一歩)

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