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ふるさと納税で損しないための「税」の予備知識

プレジデントオンライン / 2019年12月24日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bill Oxford

応援したい自治体に寄附すると税金がお得になる「ふるさと納税」。年々人気が高まっているが、その制度は複雑だ。注意点はなにか。元国税調査官で税理士・産業カウンセラーの飯田真弓氏が解説する――。

■確定申告に行く前には知識を身につけたい

私がプレジデントオンラインに寄稿した「ふるさと納税したのに還付金0円の人の条件」(12月17日)を読んでくださった方から、もやもやする、わかりにくいというご意見が届いているようだ。

お役所の仕事が縦割りで、窓口をたらい回しにされるという「ぜんざい公社」の落語に絡めて、行ってみないとわからない確定申告会場での様子などについても書いてみたのだが、説明不足な点があったようにも思う。

「ふるさと納税」についてネットで調べてみると、記事や動画など、たくさんヒットする。ある「YouTuber税理士」がこんなことを言っているのをみつけた。

「ふるさと納税」って、なんだかややこしいですよね。
誰かに聞いてみたいけれど、税理士に相談するときっと有料になるんだろうなぁと、思案している方へ。
各地で申告相談会場というものが設けられ、休日でも受け付けるところがあるので、ぜひ、行ってみてくださいね。

前回の記事で、休日、家族とともに、申告会場に出向いたAさんを例に出してみたのは、予備知識なしに申告会場に行った場合、必ずしも適切な対応が受けられるわけではないので、注意が必要であることを知ってほしかったからだった。

■ふるさと納税をすると住民税が「控除」される

私の記事では、国税(所得税)の還付申告の受付業務で「還付金額が0円になる申告書は受付しなくてもよい」と思ったアルバイトと、「還付金が0円なら確定申告書を出しても無駄なのだ」と諦めてしまうAさんというシーンを想定した。

ごたごたした会場では、想定外のことが起こる可能性がある。ただ、読者のみなさんの反応をみると、この設定に多少の無理を感じられたのだと思う。

数年前に住宅ローン控除の申告をしたAさんが、源泉徴収票の源泉徴収税額の欄の数字が0円となっていても、課税所得金額があり寄付金控除をすることで所得控除の合計額が増え、翌年に住民税として納めるべき税額が少なくなる。このことを理解していれば、所得税の還付金額が0円でも申告書を提出してから申告会場を後にしていただろうということになる。

また、読者の方からは、住民税についてあまり言及されていないという点もご指摘いただいたようだ。みなさんご承知のことだと思うのだが、確認のためあらためて解説したい。

「ふるさと納税」は、住民税については「ふるさと納税」として寄付した金額が別個に手元に戻ってくるとか、還付されるというものではない。寄付金控除として、控除されるというものだ。

■所得税と住民税で扱いが違う理由

ふるさと納税をすると所得税は「還付」され、住民税は「控除」される。では、「還付」と「控除」とは、どう違うのだろうか。

給与所得者の方の場合、所得税は毎月の給料から天引きされている。勤め先で年末調整をして源泉徴収票に記載された金額が、その方の一年間に納めた所得税の金額となる。

給与所得者の方の場合は、2019年分に納めた所得税は、2019年が終わった時点で確定しており、天引きによって支払いも済んでいるということだ。

「ふるさと納税」の所得税分については、いったん納税額が確定しているが、確定申告書を提出することで、税金の払い戻しをするので還付ということになる。

一方、住民税はどうか。

住民税は、2019年分として確定した課税所得金額を元に各自治体が計算し決定される。

2019年12月の現時点では、2019年分の住民税はまだ確定していないのだ。

■ふるさと納税をした翌年の住民税に影響する

給与所得者の方の場合は、源泉徴収票の内容がそのまま、それぞれ住民票を置いている自治体に送られる。そして、その内容をもとに2019年分の地方税が決定される。影響が及ぶのが当年ではなく翌年なので、「ふるさと納税」として寄付した金額については、納めるべき住民税から控除されるという仕組みになっている。

言い方を変えると、2019年に「ふるさと納税」をした分は、2020年になってから支払う2019年分の住民税が安くなるというわけだ。

ここで、“支払う”という言葉を使ったが、給与所得者の方は、住民税を別途“支払う”わけではない。毎月の給料から天引きされているので、支払う金額が安くなっている、得したという実感はあまり持てないのかもしれない。

ちなみに、個人事業主として確定申告をしている方が「ふるさと納税」をした場合は、所得税も還付ではなく控除だ。所得控除が増えることになり、納めるべき金額がその分少なくなる。

個人事業主の場合、住民税の「ふるさと納税」が控除されているかどうかは、年が明けて5~6月ころ手元に届く「住民税決定通知書」で確認することができる。

給与所得者の方の場合は「住民税決定通知書」ではなく、「給与所得者等に係る特別市(区)民税・県(都・府・道)民税 特別徴収額の決定通知書」というものが、5~6月ころの勤務先から渡される。

「給与所得者等に係る特別市(区)民税・県(都・府・道)民税 特別徴収額の決定通知書」の中の、税額控除の欄、または、寄付金税額控除の欄に「ふるさと納税」の控除額が記載されているはずだ。「ふるさと納税」をした方は、住民税に関する書類が手元に届いたら、控除金額を確認しておきたい。

■ますます高まるふるさと納税への関心

2019年も残すところ、わずかとなった。

12月31日まで「ふるさと納税」は、駆け込み需要が殺到するのではないだろうか。

筆者が住んでいる地域について年末年始の役所の閉庁日を調べてみると、12月29日から1月3日までとなっていた。

「ふるさと納税」で人気となった自治体の担当者は、年末年始は休み返上で対応することになるのだろうか。

寄付金はたくさん集まったけれど、通常業務に支障をきたしている、ということもあるだろう。事務にあたっている人たちの労をねぎらうことにも、「ふるさと納税」での寄付金が使われればよいのにと思う。

地方公務員として働いている人の生の声を聞く術はないが、その地域の住民以外の方にも、サービスを提供しなければならなくなった分、忙しくなっているのだろう。

2019年6月に改正された「ふるさと納税」は、ますます関心が高まっている。
総務省は「ふるさと納税」のポータルサイトに

“ふるさと納税で日本を元気に!”

と掲げている。

日本のあらたな施策である「ふるさと納税」。

品物ではなく、ツアーなど体験型で地域に人を呼ぶというものも増えているようだ。

今後、どのような展開がなされていくのか、注目していきたい。

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飯田 真弓(いいだ・まゆみ)
税理士
元国税調査官。産業カウンセラー。健康経営アドバイザー。日本芸術療法学会正会員。初級国家公務員(税務職)女子1期生で、26年間国税調査官として税務調査に従事。2008年に退職し、12年日本マインドヘルス協会を設立し代表理事を務める。著書に『税務署は見ている。』『B勘あり!』『税務署は3年泳がせる。』(ともに日本経済新聞出版社)、『調査官目線でつかむ セーフ?アウト?税務調査』(清文社)がある。

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(税理士 飯田 真弓)

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